Teen's Snapshots

リアルと非現実のはざまで、表現の可能性を探る。カウンターテナーを学びながら、舞台表現にのめり込む高校生【佐藤一志・16歳】

リアルと非現実のはざまで、表現の可能性を探る。カウンターテナーを学びながら、舞台表現にのめり込む高校生【佐藤一志・16歳】

「気になる10代名鑑」の1161人目は、佐藤一志さん(16)。カウンターテナーとして声楽を学びながら、学校では舞台芸術に幅広く取り組み、日々新しい表現の可能性を探っています。自分の表現を通して「人にいい影響を届けたい」と挑戦を続ける佐藤さんにそのきっかけや将来の展望についてなど、あれこれ聞いてみました。

佐藤一志を知る5つの質問

Q1. いま、力を入れていることは?

中学1年生からカウンターテナーという声楽部で声楽を学び、気づけば約4年間続けています。カウンターテナーとは、変声期を経た男性が高い声域(アルト〜ソプラノ)を歌う特殊な声部で、透明感のある響きが特徴です。

もともと家にクラシックのCDが多く、自然と音楽に触れる機会があったこともあり、専門的に学ぶようになりました。学校では演劇や舞踊などの舞台芸術を学びつつ、文化祭では演劇だけでなくコントやミュージカルにも挑戦するなど、興味を持った舞台表現には積極的に飛び込んでいます

Q2. 活動を始めたきっかけは?

カウンターテナーを始めたのは、ちょうど自分が変声期に入り、声が不安定になったことがきっかけでした。高い音が出にくくなり、『このまま高い声で歌えなくなるのでは』と不安を感じたこと、そしてもともと歌うことが大好きだったことから、専門的に声楽を学んでみようと決めました。

また、中学2年生のときに卒業生を送る会で、約15分ほどのコント仕立ての喜劇を演じた経験があります。これが人生で初めての大きな舞台で、その場で仲間といっしょに何かを作り上げる達成感を得られて。この経験が、演劇にものめり込むようになったきっかけになりました」

Q3.活動する中で、印象的だった出来事は?

「小学6年生のとき、担任の先生がSDGsにとても熱心で、ある日、先生の元教え子で環境活動を続けている人の講演を聴く機会があって。参加するわたしたちに先生は『講演を聴くなら、中村哲さんやマララさんのように、将来世界を変える人間になれ』と軽い調子で約束を求められたんです。

先生は冗談半分だったと思うけれど、もともと誰かの役に立てる人になりたいとなんとなく思っていたわたしは、その言葉をきっかけに、その思いが“叶えられたらいいな”という願望から、 “果たすべき約束”のように変わった気がしています。

いまでもその約束は心の奥に残っていて、人と関わり、悩みに寄り添い、少しでも誰かの力になれる存在でありたいという気持ちの原動力になっています

Q4. 活動するうえで、大切にしていることは?

人と人との関係やコミュニケーションです。舞台や芸術に携わる中で実感したのは、創作は自分と向き合う時間であると同時に、誰かと向き合う営みでもあるということです。だからこそ、人同士のつながりが作品の根幹になると考えています。

多くの人は知らないうちに、性別や立場、年齢、きっかけの有無といった理由で関係を区切ってしまうことが多いけれど、実際に話してみれば、別の面で気が合うこともあります。なのに、そんな心の中の壁が親しくなるチャンスを奪ってしまうのはもったいない。

だからわたしは、自分から関係を狭めることはせず、相手の距離感を感じ取りながら、相手が開いているときには素直に応じるようにしています。

また、自分で深く考えて掘り下げ、議論することも好きです。相手の感情を読み取りながら自分を調節し、壁をつくらない姿勢で関わっていく。そうした態度が、舞台づくりにおいても、人としても大切だと思っています」

Q5. 将来の展望は?

音楽や舞台の分野で『人にいい影響を与えられる存在』になりたいと思っています。それは大きな規模の出来事でも、小さな人間関係の中でも、どちらでも構いません。誰かの心が少しでも軽くなるような表現ができたら十分だ、と感じています。

いまは特に舞台に強く惹かれています。映像表現と違い、同じ空間で時間を共有することで生まれるリアルさがある一方で、何もない空間をどう成立させるかという非現実の面白さもある。リアルと非現実の間で自由に表現できるのが、舞台ならではの魅力です。

10代のいまだからこそ、方向性をひとつに決めず、さまざまな挑戦をしていきたい。縛りをつくらずに、音楽・舞台表現のあらゆる可能性を試しながら、自分にできるかたちで誰かの心に届く表現を追求していきたいと考えています」

佐藤一志のプロフィール

年齢:16歳
出身地:神奈川県鎌倉市
所属:神奈川県立神奈川総合高等学校
趣味:音楽を聴くこと、歌うこと、演じること、考えること
特技:歌、考えること、何かを創ること
大切にしている言葉:楽しいことはとにかく楽しむ

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Photo:Nanako Araie
Text:Honori Kukimoto

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