
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、アフリカのコバルト鉱山の近くに住む女性に起きている健康被害について紹介します。
わたしたち生活に欠かせない鉱物、コバルト
コバルトは、現代のテクノロジーに欠かせない鉱物のひとつ。スマートフォンやパソコンなど、身近なデバイスのほとんどに使われています。
「Cobalt Market Report 2024」によると、コンゴ民主共和国は世界の76%のコバルト供給量を誇っており、わたしたちが使っているデバイスにも高確率でコンゴ民主共和国のコバルトが使用されていると考えられます。しかし、このコバルトをめぐってさまざまな問題が起きているのです。

児童労働や過酷な労働環境といった人権問題、さらには「紛争鉱物」という言葉もあるように、鉱物は武装勢力の資金源にもなっていることがあります。今回取り上げるのは、鉱山の近隣住民への健康被害です。
鉱山近隣に住む女性を悩ませる健康被害
人権団体「Rights Accountability in Development(Raid)」と、コンゴで天然資源分野における人権と環境保護に取り組むNGOの「Afrewatch」が発表した調査によると、コンゴ民主共和国のコバルト鉱山の周辺に住む女性は流産、感染、先天性欠損症、不規則な月経、泌尿生殖器感染症、膣真菌症などに悩まされているといいます。また、これらの女性患者の性器感染症と皮膚病変の割合は爆発的に増加しているそうです。
男性より女性への健康被害が多いのは、性別による分業が原因としてあるようです。例えば、採掘は男性労働者が多いですが、女性は石の選別や洗浄、粉砕、廃棄物処理、輸送などに関わっています。加えて、家事なども女性の役割とされることがほとんどで、結果として女性は男性より鉱山近くの水銀などが混ざった川や井戸の水を使用する機会が多いのだそうです。

採掘によって水が汚染されると、周辺の農業や漁業にも影響を及ぼします。しかし、世界中の人がコンゴ民主共和国のコバルトに依存している一方で、現地の多くの人はコバルトによる健康被害に対し、医療費を払う余裕もないのが現状です。
異常な「消費」していない?
また、コバルトというとよく関連づけられるのはスマートフォンですが、実は過去10年間でコバルト鉱山の生産が増加した別の理由があります。それは、電気自動車です。
「『地球にやさしい』製品はどうやってつくられる?SDGsシフトの裏側にあるコンゴ民主共和国の変貌 」でも過去に紹介した通り、電気自動車1台あたり、数キログラム〜10キログラム前後のコバルトが使われるケースもあります。
今後もコバルトの需要が高まっていくと予想される中で、わたしたちにできることはなんでしょうか。
いますぐにできることは、一人ひとりがスマートフォンやパソコンをできるだけ長く使うことです。新商品が発売される度に買い替えるのではなく、いま使っているデバイスを長く使ったり修理したりすることで、巡り巡ってコバルトの需要を減らすことに貢献できると考えられます。

どうしても買い替えが必要なときは中古品を買ったり、古いデバイスを家電量販店や携帯キャリアでリサイクルに出したりという工夫もできます。
世界には、サプライチェーンの透明性を強みにしている携帯会社もありますます。たとえばオランダの「Fairphone」は材料調達から製造、利用、修理までエシカルで持続可能なプロセスを踏んでいると公表しています。長寿命で修理が可能で、故障した際にはパーツだけの交換ができるようデザインされているのだそうです。
この投稿をInstagramで見る
現代の多くの人にとって不可欠な鉱物、コバルト。鉱山近隣で起きている問題と、わたしたちの消費行動が無関係ではないことも事実です。しかし、消費者であるからこそ一人ひとりの行動で変えられることもあります。みなさんも、今後の消費を見直してみてはいかがでしょうか。
References:
Cobalt Market Report 2024
Text:Hao Kanayama






