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「ママタレ」だってある意味「性役割」に沿ったイメージで活動しなければいけない⋯⋯。元アンジュルム・和田彩花が大人になっても考える「自分を主体にした人生」とは?【後編】

「ママタレ」だってある意味「性役割」に沿ったイメージで活動しなければいけない⋯⋯。元アンジュルム・和田彩花が大人になっても考える「自分を主体にした人生」とは?【後編】

前回のインタビューでは、幼少期からアイドルとしてデビューするまでの歩みと、求められる“理想像”と自分の間で揺れ動いた10代について、そして美術との出会いについて話してくれた元アンジュルムの和田彩花さん(31)。後編では、その経験が今の活動にどう結びついているのか、そして今後の展望や10代へ向けてのメッセージもいただきました!(前後編の後編。前編から読む)

アイドルと大学生を行ったり来たりして得られたもの

—そもそも、美術に興味を持ったのはなぜですか?

「15歳のとき、仕事の入り時間を間違えて、空いた時間にたまたま近くにあった美術館に母と行ったんです。

それまで美術って綺麗な絵ばかりがあるのだと思い込んでいたのに、そこにはビジュアル的に美しくない作品ばかりがあって。それが漠然と『なんか面白い』という気持ちになって。それから、どんどん惹かれていきました」

—それから大学で美術を学ぶこと決めたんですね。多忙ななかで大学という選択肢が出てきたのはなぜですか?

「たまたま高校1年生のころから受験をテーマにする番組に出演していて。

芸能活動をしている同世代と大学ツアーに行ったり、勉強の話をしたりしているうちに、撮影現場が“第2の高校”みたいな場所になったんです。だから、自分も当然『大学に行くものなんだ』と思ってましたね。
当時のマネージャーさんも『美術史っていう学問があるよ』って勧めてくれたり、事務所にも何人かアイドルをやりながら大学に通ってる先輩がいたから、わりと自然に選択することができたんです」

—入学されて、アイドルと大学を行き来する生活はどうだった?

「アイドルの現場で感じていたモヤモヤが、大学で、解き明かされていく感覚がありました。
もちろんアイドルではない時間を持っていることで、一般的な感覚も知れたということもありますし、もちろん、美術を学ぶ過程でもその感覚があって。

たとえば、美術の世界ってすごく自由で、女性も活躍できるって教わるんですけど、女性アイドルの世界って、すごくキャリアが短いじゃないですか。そういう真逆のキャリアがあると気づいたり。

あとは政治的な体制や、美術の歴史的な体制に対して反抗的な画家も多いんです。そういう姿を自分と重ねて、自分が社会や事務所っていう組織のなかで、どう振る舞うべきかが見えてきたんです」

—そのうえでの周りの大人への反抗だったんですね。

「反骨精神は美術を学んだことで強化されましたね。だからこそ、アイドルでも会社の言うままにする必要はなくて、自分が思う道を進めるって信じて、反抗していたんですけど。

簡単ではないなって気がついたタイミングが、グループの卒業を考え始めた時期でした」

アイドルは率直に応援しているけれど⋯⋯

—アイドル活動を経たことは、現在の活動にも繋がっていますよね。率直にアイドル時代を振り返ってどう思いますか?

「良いことも悪いことも含めて、ひとつの大きな経験だったなって思います。その後の人生について、どうしていきたいか深く考えられたのは、アイドルをしてたからこそなので。

ただ、わたし自身、活動中からうつ病を持っているんですよね。だから、やっぱり、全てが良かったとは言えないんです。

アイドルだからといって、そこまできつい環境に身を置いて、ストレスに晒される必要もないとわたしは思います。この業界って、休みがなかったり、プレッシャーも大きいから、精神的な疾患にかかってしまう子もすごく多いから。

だからこそ、わたしはわたしが話せる言葉をどんどん発信していきたくて。それによってもう少し環境が改善されたり、業界良い方向に動いたら良いなと思います」

—最近だと「地下アイドル」という文化が浸透していたり、”アイドル”と言うもの自体の数や形も増えているように感じます。それについてはどう思いますか?

「率直に応援しています。ただ契約には気をつけてほしいです。

アイドルって、目指す人にとってはすごく輝かしい夢じゃないですか。だからこそ、現実的な部分がどうしても見えにくくなってしまう。でも実際、大手の事務所でも曖昧な契約内容ってたくさんあるんですよ。

理解しないままサインするんじゃなくて、まずは大人に相談してほしい。いずれは、私がそういう子たちの相談先になりたいですね」

—とくに、10代を初めとする未成年だと、自分だけではわからないこともたくさんあると思います。

「そうですね。まず、根本的な考え方として『未成年をもっと大切にしよう』って、大人みんなが思うべきだと思います。

未成年を写真集で水着にさせるとか、きわどい衣装を着せるとか、性的な意図が含まれるような写真を出すとか。そういうものを大人が作り出してしまう世の中を変えていきたいです」

—逆に、10代が「自分を大切にする」ために、和田さんから言えることはありますか?

「自分の体をどう見せるかって自分が決めるべきこと。何かの手段として自分の性的な部分を売る必要は絶対にないと思います。というか、それを手段にしないといけない世の中はひどすぎるから。

裏を返せば、大人として自分で決めることが当たり前になったあとで、”露出する”って選択をすることもできるんです。

自分の体のあり方を自分で決めて、主体的に自分の人生を歩んでいくことが、いちばん大切だと思います」

今とこれから。人生で向き合っていくもの

—現在のことについても聞かせてください! フェミニズムに関する発信の他に、音楽活動もされていますよね。

「オノ・ヨーコさんをはじめとする前衛芸術にも興味があって。即興音楽だったり、実験的な試みをしたり、アバンギャルドやアンダーグラウンドな表現をルーツに音楽活動もしています。

じつは、アイドル時代から実験音楽もやりたいと思っていて……」

—ある意味正反対のジャンルなのでは?

「自分たちがやっている音楽って『めっちゃポップだな』と思っていたんです。『なんでこんなにメロディがあるんだろう』みたいな(笑)」

—当時の反骨精神も、活動に反映されている?

「そうですね。たとえば私、アイドル時代にCDを大量に売らないといけないのが本当に嫌で。

握手券がついているからみんな買ってくれるんですよ。でも、沢山買わせるのは申し訳ないし、そのCDが全部ゴミになって、環境に負荷をかけると思うと、握手会中ずっとそのことで頭がいっぱいで。

その反動で、今はレコードを限定的な部数だけ作ったり、グッズのTシャツも古着に手刷りで作ってるんです。
アイドル時代に数字に追われていたからこそ、今は別の価値を追いかけようと思っていて。自分の心が豊かになる音楽をやりたいって思っています」

—素敵ですね。では最後に、和田さんの今後の展望を教えてください。

「難しいですね。私は“母親になりたい”という願望がないまま生きてきていて。でも、35歳を過ぎれば妊娠しづらくなる現実も分かっている。

自分が子どもを持つ選択をできるのか、できないのか。その選択にすごく興味があるんです。

元アイドルとして、結婚しても子供がいても、自分の進みたい道を歩いていけるのか。それともママにならなくても、自分のままで生きられるのか。とにかく“自分を主体にした人生”をどう生きられるか⋯⋯。もう30代なのでこのあたりの課題に向き合わないといけないかなって。

もちろん、結婚して幸せになる人もいるし、それを否定はしません。でも、女性がキャリアを続けるのはまだ難しい部分がある気がしていて、キャリアを“どう続けていくか”が大きなテーマだと思っています。

たとえばママタレになれば“ママ”として見られ、ある意味でアイドルと同じように性役割に沿ったイメージのまま活動しなければいけない感覚があるんですよね。

だから自分の人生を通して向き合いたいし、同じ状況の人とつながっていきたいと思っています。」

—10代へのメッセージをお願いします!

「私は、自分が好きなものに没頭することで息苦しさから距離を置いてこれたタイプなんです。だから本当に好きなものを見つけるって、すごく良いことだと思っていて。

いろんなカルチャーや勉強に触れて、その中から“これが好きかもしれない”って思えるものを見つけてほしい。家や学校だけじゃなくて、今はネットという場所もあるから、環境を超えて自分が生きられる世界を探してみると、少し楽になるし、自分が向かう道が見えてくる気がします。若いうちに、好きなものを追いかける楽しさを存分に味わってほしいですね。

あと、10代の頃の自分を振り返ると、運が良かったと思うのは“等身大でいられたこと”なんです。大学に入っても、そのときの気持ちのままでいられた。

「若いから」とか「子どもなんだから」って言われることもきっとあると思うけど、その年齢で感じる気持ちって、本当にかけがえのないもの。周りが何を言っても、今の自分がどう思うかを大切にしてほしいです。」

今回お話を伺ったのは⋯⋯

和田彩花(わだ あやか)さん

1994年8月1日生まれ、群馬県出身。詩と言葉のアーティスト。

2019年ハロー!プロジェクト、アンジュルムを卒業。アイドルグループでの活動経験を通してフェミニズム、ジェンダーの視点からアイドルについて、アイドルの労働問題について発信する。音楽活動ではオルタナポップバンド「和田彩花とオムニバス」、ダブ・アンビエンスのアブストラクトバンド「LOLOET」で作詞、歌、朗読等を担当。実践女子大学大学院博士前期課程美術史学修了しており、美術館や展覧会についての執筆やメディア出演なども行う。

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Yui Kato

エディター

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