
「気になる10代名鑑」の1145人目は、愛鈴さん(19)。写真や服、本づくりを通して、境界なく、その表現に愚直に取り組み続けています。なかでも特にフィルム写真に魅せられた愛鈴さんに、その魅力やこれからのビジョンなど、根掘り葉掘り聞いてみました。
愛鈴を知る5つの質問

Q1. いま、力を入れていることは?
「写真をベースに、自分の世界を表現する方法を模索しています。
特にフィルムカメラで撮ることが好きで、光が焼き付く瞬間や、被写体に反射した光をそのままフィルムに伝える過程に魅力を感じています。同じ場所や人を撮っても、光の受け取り方によってまったく違う表情になる。その偶然性や質感の違いが、毎回新しいものを見ているような気分にさせてくれます。
撮影だけでなく、写真をもとに本を作ったり、服のデザインをしてみたりと、さまざまな方法で自分の感覚をかたちにしています。もともとこれらは、心がざわついたときや悩みを抱えたときに、自分を落ち着かせるために始めたことで。写真を撮ることやものをつくることが、自分と向き合う時間にもなっています」
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Q2. 活動を始めたきっかけは?
「家から出ることができなかった時期に、『外に出るための服』を自分の手でつくったことが始まりでした。
自分が着たいと思う服を製作する中で、手を動かして何かをつくることが、心と身体の両方に深く関わっていると実感しました。作業に集中しているときは、不安や焦りが自然とまぎれ、服を着て外に出ることで、その場所に少しずつ馴染めるような感覚がありました。
その後、村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』をモチーフにしたアニメを制作したり、祖父から譲り受けたフィルムカメラで写真を撮り始めたりと、表現の幅が広がっていきました。
ファッションを学ぶ『ここのがっこう』に通うようになってからは、作品を他の人に見てもらう機会も増え、少しずつ自信を持てるようになりました」
Q3.活動する中で、印象的だった出会いは?
「大学受験に落ちた翌日に参加した、ここのがっこうでの写真家・濱田祐史さんのワークショップが大きな転機になりました。
フィルム写真を使ったワークショップで、濱田さんがわたしの撮った写真を見て、ふと『この写真、おもしろいね』と言ってくれたんです。自分の写真を“良い・悪い”という2面性だけで評価しない濱田さんの言葉に救われました。受験の失敗で自信を失っていた時期でもあったので、その一言が心に強く残って。
それ以来、写真は『記録』や『SNSに載せるもの』としてだけではなく、人の感情を動かす表現にもなるものとして捉えるようになりました。光や現象そのものの面白さ、見え方の違いに惹かれるようになり、写真という物質としてのおもしろさに気づけています」

Q4. 活動するうえで、大切にしていることは?
「目の前にある、自分の好きなものを見つめることを大切にしています。
自分の手を動かし、五感を使って世界を感じ取る時間が好きで。たとえば、光の揺らぎや、ふとした瞬間の空気の変化といった、日常の中にある、非日常の気配。そこには、感じられないけれど確かに存在している“別の世界”があるように思っています。
昔から妖怪や魔法など、不思議な世界に惹かれてきて。写真を撮ることは、そうした、見えない世界をこの現実に少しだけ存在させる行為だと感じています。光が被写体に反射し、その人やもののかたちをフィルムに焼き付ける。その瞬間、光が“触れた”という事実だけが残り、その存在が記録される。
フィルムの中に残る、『確かにその人に触れた光』に、いつも救われるような気持ちになります」
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Q5. 将来の展望は?
「いま自分の目の前にあるものより確かなものはないと思っています。
なぜそこに存在しているのか、その背景を知ることが、未来を考える上でも、いまの問題を解くためにも大切だと感じています。
これからも、境界線をあえてつくらずに、ものを生み出していきたいです。写真や服、本など、いろんな表現をぜんぶ引っ張って、新しいかたちにしていく。どちらがいい・悪いと決めつけず、好きなことを素直に続けていくことを大事にしたいと思っています。
そう感じるのは、自分がハーフであることも関係しているかもしれません。国籍や見た目で、自分の居場所がわからなくなることもありましたが、その経験があるからこそ、さまざまな立場や感覚に寄り添える人でありたい。白黒をはっきり分けずに、その間にある色を見つめること、それが自分らしい表現のかたちだと思っています」

愛鈴のプロフィール
年齢:19歳
出身地:長野県
所属:ここのがっこう、gaku
趣味:映画、カメラ探し、漫画、歩くこと
特技:良いフィルムカメラに巡り会える
大切にしている言葉:人生は長く、世界は果てしなく広い。肩の力を抜いていこう
愛鈴のSNS
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Photo:Nanako Araie
Text:Honori Kukimoto






