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K-POPをヒントに、政治をポップに。27歳の最年少市議が語る政治家のリアル【政治POPS.#6】

K-POPをヒントに、政治をポップに。27歳の最年少市議が語る政治家のリアル【政治POPS.#6】

― 誰かが、「日本は平和だから、若者が、政治に興味を持たずにすむ」とか⾔っていたらしい。でも、政治は未来の国を良くするためにあるのなら、きっとホントは僕らのもの。なんでもいいから、興味を持とう。政治の話はそれからだ。

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政治をポップに発信していく連載企画「政治POPS.」。フリーライターの中村眞大がナビゲーターとなり、10代の皆さんを楽しくわかりやすい政治の世界へと誘います。今回は、糸満市議会議員の関屋あんりさんにインタビュー! 学生時代に起業し、26歳の若さで政治家になった関屋さんに、地方議員のリアルを聞いちゃいました!

沖縄本島最南端の再年少市議会議員

沖縄県糸満市。那覇から車で20分ほどの、沖縄本島最南端の街。そんな街の市議会で最年少議員として働くのは、27歳の関屋あんりさん。昨年6月に初当選したばかりの新人議員です。

「新人議員」といっても、立候補には年齢制限があります。日本の法律では、衆議院議員や市区町村議は25歳以上、参議院議員と都道府県知事は30歳以上と定められています。

「政治家」に対して僕らが抱くイメージといえば「おじさん」というのが普通だけど、それもそのはず。全国の20代の市議会議員の割合はたったの0.7%。そのうち女性に絞って計算すると、なんと0.16%しかいないんです。つまり、27歳の関屋さんは全国的に見ても超レアな「20代の女性議員」ということ!

大学生で起業、突然誘われた立候補

― どんな少女時代を過ごしましたか?

幼い頃から海外志向が強くて、大学では留学にも行きました。でも、留学先で「ここにはないものが糸満にはあるな」って逆に地元の魅力にも気づいて。そこから、地元に帰って漁師さんたちと話すなかで、糸満の水産業の魅力をまだ十分に発揮できていないなって思ったんです。沖縄の海って遊ぶ海のイメージが強いけど、実は美味しい魚もたくさんいて、「この魚をブランド化して価値を持たせたい」と思ったのがきっかけで起業しました。

― そこから、どうして選挙に出ることになったんですか?

去年の6月に糸満市長選挙が行われることになり、当時の市議さんが市長選に出るために辞職したことで、市議の補欠選挙も同時に行われることになったんです。地元のおっちゃんたちの「糸満で若くて活動力ある人いないか」という話のなかで自分の名前が上がったらしく、「やってみないか」と声をかけられました。市長選に出馬予定のおっちゃんとコンビでの立候補という話を聞いて、「糸満愛は誰にも負けないし、出ます」と出馬を決意しました。

― 選挙とか政治って、若者からすると遠い世界のように感じますが、どんなイメージを持っていましたか? 周りの友達からの反応はどうでしたか?

声をかけられたのが4月で、選挙が6月。準備期間は2か月ぐらいしかありませんでした。もう悩んだりする時間もなくて。政治に対するアレルギーも特になく、まったく知らない世界だからこそ良いとか悪いとか考えずに飛び込めたのかもしれません。友達に「出る」ってなったことを伝えたときは、みんな驚いたんですけど、「いいね」という声の方が多かったですね。周りに出たことある人は誰もいなかったので、「そもそも出られるんだ」みたいな。同級生もみんな興味を持ってくれて、選挙も手伝ってくれました。

インスタとK-POPで覆す選挙の常識

― 僕が最初に関屋さんを知ったのはInstagramでした。めっちゃ楽しそうに選挙やってる同世代の候補者がいるなって。見せ方みたいなところはこだわっていたんですか?

まず「一体感」をつくるために、応援してくれる人たちの名前を決めました。ファンダム的な発想ですよね。ちょうど去年、『チーム友達』が流行っていたこともあって、それをもじって TEAM ANRI という名前で呼ぶ事にしました。もともと高校生のころ、K-POPにハマっていて、「推す楽しさ」を実体験として知っていたんですよね。それを選挙にも応用して、オリジナルのTシャツやタオルを作ったり、楽しめる選挙を心がけました。あとは、毎日ストーリーを投稿して「選挙って面白い」と思ってもらえるように意識しました。立候補者本人もボランティアもみんな初めてで、逆に今までの選挙のやり方や常識を覆すくらいの気持ちでやりました。

― で、無事当選できたということなんですね?

はい、6人中2位で当選できました。でも、そのコンビのおっちゃんは落ちてしまって、自分だけ議会に放り込まれたみたいな状態になりました。

新人議員から見た政治家のリアル

― 実際、議員をやってみてどうですか?

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議員になってまず驚いたのは、紙・紙・紙! こんなに紙を扱う仕事は初めてでした。そこで私は、議会のデジタル化も頑張って進めました。公約については、地元産業を盛り上げることを掲げていたんですが、実現に向けた種まきはできました。次の選挙ではその進捗も踏まえて、より明確な公約を示したいと思っています。次の4年で必ず形にして、市議を引退する覚悟です。

― 最後に、若者に向けてメッセージをお願いします。

1日でもいいから、議会を見に来てほしいです。休憩中や配信に映らないやり取りも含め、議会には「リアル」がたくさんあって、私自身も驚くことばかりでした。あとは、1回、選挙ボランティアをやってみることもおすすめです。18歳から参加できるし、選挙で誰かを応援してみると政治が一気に「自分ごと」になります。もし、「この人は違ったな」って思ったら、別の人のところに行けばいいと思います。とにかく、1回入ってみる、やってみるっていうのが大事です!

「政治POPS.」はまだまだ続きます!お楽しみに~!

お話を聞いた人

関屋あんりさん

1998年生まれ。学生時代に起業し、2024年6月に26歳で糸満市議会議員に無所属で初当選。今年11月に2回目の選挙を控える。

※写真はすべて関屋さん提供

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Masahiro Nakamura

ライター

2002年生まれ。小学校低学年の頃、校門横にあった選挙掲示板のポスターをきっかけに政治に興味を持つ。小学校5年生で友達と架空政党「政治改革党」を結党するも程なくして消滅。中2のとき、突然思い立って生徒会長選挙に立候補、思いがけず当選。高校3年次に校則問題をテーマにしたドキュメンタリー映画『北園現代史』を制作し、大学入学後から本格的に取材・発信活動を始める。趣味は一人旅。編著『わたしたちの世界を変える方法 アクティビズム入門』。

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