
「書評アイドル」として執筆活動しながら、モデルなど幅広く活動している20歳のわたし、小春による書評フォトエッセイ連載企画 “Steenzブックレビュー”。
今回は、「自分がこの世界に存在していいのか分からない人」におすすめの1冊『i』です。今回も、わたしと同じく以前10代名鑑に出演されていた写真家の村山莉里子さんに撮影をいただいて、「感情と風景が交差するところ」をコンセプトに、新しい本との出会いをみなさんに届けられたらと思います。

自分がこの世界に存在していいのかわからない
最近、就職活動をする中で自己分析をした。自分の生い立ちや得手不得手を振り返る中で、わたしの今までの人生は、自分の生きる意味を見つけようとしていた人生だったことに気が付いた。

ずっと自分が存在していいのか分からなくて苦しんでいた。恵まれた環境に感謝しつつも、考えれば考えるほど自分は存在していいものだと思えなくなる。周りには自分よりも苦しんでいる人がいて、なのに自分に秀でているものはない。だからせめて良い子でいるように努めていたし、勉強や見た目といった分かりやすい指標を得ようとしていた。そうやって生きてしまった結果、わたしは未だにこの答えを見つけられていないのだ。わたしの存在意義って一体何だろう?
「この世界にアイはありません」

この物語の主人公の名前は、ワイルド曽田アイ。生まれはシリアだが、裕福な家の養子として日本で育てられた。彼女は、考えすぎてしまう性格で、自分の意見を言うことが苦手。どれだけ両親に愛されていても、どうして優しくしてくれているのか疑って信じることが出来ない。自分が生きていることにさえ罪悪感を抱いている少女だ。

そんなアイが高校の数学の授業で聞いた「この世界にアイはありません」という言葉。この言葉を背負いながら、家族や友人、恋人と関わり合いながら、愛、そして自分の存在を見つけていく物語だ。
ここにいていいって思えますように

主人公は、親友のミナと一緒にいると「この世界にアイはありません」という言葉が聞こえなくなる。それは、ミナがアイのことを深く知った上で肯定してくれる存在だったからだ。アイは、「愛されたからわたしがいるのではない。わたしはずっとあった。」と知り、自分という存在自体を友人や恋人が愛してくれていたのだと思ったのだった。

自分という存在は、生まれたときから確かにあるものだから、そこに意義があるというよりも自分が自分という存在を肯定して受け入れることで満たされるものなのかもしれない。この本を読んでみて、やっと自分の存在意義を見出そうと自分を苦しめることや、自分という存在を否定して悲しくなることは自分にとっては必要ないことなんだって知った。まだ自分を受け入れることは難しいかもしれないけど苦しまなくてよかったんだと理解できただけで救われた気がした。

今回紹介した本

西加奈子/『i』/ポプラ社






