
タイムリーな話題から、カルチャー、さらには社会問題まで、さまざまなテーマについて、リアルな10代の声を聞くシリーズ「10代リアルVOICE」。
今回のテーマは、ミュージカルや演劇について。映画やアニメと違って、生で観る舞台の魅力は、役者さんの声や表情、そして会場の空気感にあるといわれています。観たことがある人はどんな作品が印象に残っているのか、観たことがない人はどんなイメージを持っているのか、10代のみんなに聞きました!
1. 松本 敬さん「舞台も文楽も空気を共有する体験」

生物部に所属した中学生のころから、高尾山に住むムササビ研究に身を捧げてきた19歳の松本さん
「母が劇団四季の会員ということもあり、昔からよく観劇しています。
最近は、ミュージカル『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を観ました。豪華な舞台装置に加えて、プロジェクションマッピングが駆使されていて、特にタイムスリップのシーンでは、これまでにないほどの疾走感と没入感を味わうことができました。
好きな作品は『ライオンキング』で、ミュージカル版のサウンドトラックCDも持っています。東京と大阪で2回観ましたが、大阪公演では台詞が大阪弁になっている部分もあり、笑いが起きて会場全体に一体感が生まれるところが大好きです。
また、小学生の頃に大阪で観た文楽には強く衝撃を受けました。語り手(太夫)、三味線弾き、人形遣いの三者が息をぴったり合わせ、人形がまるで生きているかのように動く様子に圧倒されました。太夫のすぐ前の席に座っていたのですが、その場に漂う張りつめた緊張感に、観ているこちらまで息を呑んだことをいまでも覚えています」
2. 北川颯姫さん「魔法の世界に入り込んだような感覚を味わえる『ハリー・ポッターと呪いの子』」

学校行事の照明担当をきっかけに、照明演出にのめりこみ、多くの舞台を観に行く無類の舞台好きな18歳の北川さん。
「演劇はとてもいいです!
素敵な作品はいくつもありますが、会場の空気感という点でおすすめなのは『ハリー・ポッターと呪いの子』の舞台です。本当に魔法の世界に入り込んだような感覚を味わえます。『ハリー・ポッターと呪いの子』専用に作られた劇場で上演されているので、最寄り駅から劇場の入り口、建物内の壁や休憩スペースに至るまで、まるごとハリー・ポッターの世界観に浸れるのも大きな魅力のひとつです。
チケットは正直安くはありませんが、その分、音響・照明・舞台美術のすべてがとてもクオリティが高く、たとえストーリーについていけなくなっても、演出だけで十分すぎるほど楽しめると思います。ぜひ、一度観に行ってみてほしいです」
3. 中原さん「ミュージカルの歌の力を感じさせる『グレイテスト・ショーマン』」

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のボランティアとして、アフガニスタンで活動するなど、数多くのボランティアに取り組んでいる17歳の中原さん。
「生でミュージカルを見たことがないですが、映画『グレイテスト・ショーマン』がすごく印象に残っている作品です。
アメリカの実業家であり、サーカスの興行主として知られているP.T.バーナムの一生を描いた、ミュージカルらしい起承転結のある作品構成になっています。貧しい時代から成功してお金持ちになるけれど、それが本当の幸せではなく、地位や名誉に固執して失敗してしまう。そんなありふれたストーリーなんですが、作中で出てくる “From Now On” や “This Is Me” の迫力や、 “Never Enough” の独唱のすごさが際立っているところが、ミュージカルの歌の力を感じさせます。
いちばん見てほしいのは、作品本編よりもYouTubeに上がっている歌のメイキングストーリーです。実際に歌っているキャストたちが、全員でその歌を確認するシーンが公開されていて、歌が人の心を動かす瞬間がリアルに映し出されています。自分はその場にいたわけじゃないのに、心が躍動する感覚を今でも覚えています。自分の中では本当に大切な作品です」
4. 井上ららさん「『Cats』や『Wicked』を観てみたい」

同世代の複雑な心境を音楽にのせて表現するシンガーソングライター、19歳の井上ららさん。
「見たことはありませんが、いまはCatsとかWickedを見てみたいです!
映画にされるほどすごくいいと聞いたので、なぜそこまでいいのかが気になります」
5. 浅井柊香さん「観客と感情を共有できる舞台『レ・ミゼラブル』に憧れて」

フィリピンで目にした貧困問題の現状に衝撃を受け、グローバルユース国連大使として2024年11月まで活動し貧困の正しい知識を伝えていきたいと活動する16歳の浅井さん。
「ミュージカルにはとても興味があり、映像では味わえない生の迫力があると思うんです。
特に観てみたいのは『レ・ミゼラブル』。物語や音楽の壮大さはもちろん、役者さんが舞台上で全身で感情を表現する姿を間近で感じられるんだろうなって。実際の舞台ならその感情がさらに強く伝わるのではないかと想像します。観客も同じ空間で物語を共有できるところに、舞台だけのリアルなつながりがある気がしています」
6. 最早風鈴さん「配信では味わえない生の空気感がある」

高校時代の同人活動やpixivへのイラスト投稿を経て、現在は小説のコミカライズや企業の制作協力に取り組んでいる19歳の最早さん。
「年に1〜2回、2.5次元舞台を観劇しているオタクです。
先日も、前から3列目という神席で観劇しました。配信とは違って、役者さんの生の声やイケメンな表情、そしてカメラには映らない細かい動きや会場全体の空気感を味わうことができて、本当に最高の思い出になりました。
観劇はたしかに高額ですが、そのお金を払うだけの価値は間違いなくあると思っています」
7. 大津里穂さん「音楽を通じて人とつながる喜びを知った」

アフリカ・ルワンダでの留学経験をきっかけに、途上国への楽器寄贈や平和教育の普及、政策提言まで幅広く活動を続けている16歳の大津さん。
「小学生の頃、The Young AmericansやHEART Globalといった音楽公演・教育活動を行うNPOのワークショップに参加したことから、音楽を通じて人とつながることの楽しさを知りました。
その後も、ミュージカルの舞台で活動している友達の影響を受けたり、ミュージカル映画や音楽に夢中になったりして、自然と音楽や舞台に惹かれていきました。特に、ブロードウェイミュージカル『RENT』の “A Thousand Miles” をピアノで弾いた経験は、自分にとって大切な思い出です。
中学生以降は、オーケストラ科として地域の芸術学校に所属し、演劇科や合唱科の同世代の舞台を観る機会にも恵まれました。さまざまな表現のかたちに触れるなかで、芸術が持つ力を強く感じました。最近では、芸術を通して戦争の記憶を継承する『平和劇』にも関心を持っています」
8. JOETAROさん「演劇に挑戦中。12月に初舞台!」

グラフィティアーティストの傍ら、モデル、DJなど幅広く活動している、19歳のJOETAROさん
「演劇にはとても興味があります。
最近は、演劇や舞踊を学んでいる友達と一緒に少し劇をやったりしています。12月には高円寺で“喘粘齢”という劇団のイベントに3日間出演する予定なので、ぜひ観に来てほしいです」
10代の声からも、音楽・演出・観客との一体感といった、映像では味わえない生の空気感が魅力なのだと伝わってきました。。10代リアルVOICEでは、これからもティーンたちが感じたいまを切り取り、リアルな視点を届けていきます。
Photo:Nanako Araie
Text:Serina Hirano














