
「気になる10代名鑑」の1110人目は、aoiさん(19)。東京藝術大学でデザインを学び、社会に訴え、提案するものづくりを模索しています。忙しい母のためのかばんづくりが大きなきっかけとなったと話すaoiさんに、活動で大切にしていることや将来の展望について伺いました。
aoiを知る5つの質問

Q1. いま、いちばん力を入れている活動は?
「東京藝術大学でデザインを学びながら、幅広く創作活動をおこなっています。これまで、自分のWebサイトのデザインや、かばんづくりをやってきました。
小さい頃から物を作ることが好きでしたが、やりたいことと得意なことがマッチしたのがデザインで。いまはまだ、いろんなアプローチを試しながら自分のスタイルを探していて、デザインを“学ぶ”ことに重きを置いています。デザイナーの本を見たりラジオを聴いたりテレビを見たりして、デザインの思考やスタイルを学んでいる途中です」
Q2. どんなことをテーマに活動をおこなっていますか?
「豊かな暮らしと日常の美しさです。
ここで言う『豊かな』は、お金ではなく、人との関わりや、芸術に触れて心を癒す時間のことです。身近にあるものを大切にしたり、生きているだけで幸せと思えたりする暮らしを広めたいと思っています。
綺麗事のようですが、何気ないところにある大切なものの尊さを、多くの人に伝えたくて。通勤ラッシュの電車に乗ったり、仕事で忙しくしている人を見たりすると、余裕がないから、人のこと考えられくなってしまうことがあるんじゃないかと思うときがあります。
わたし自身も大学受験期はそうでした。狭いところに閉じこもって、どうでもいいことですごい腹が立つ。創作活動にも影響が出て、いい作品はできず……これではだめだと思いつつも、受験だからしょうがないと諦めていた時期がありました。そんな経験や気づきが重なって、このテーマを考えるようになっていきました」

Q3. 自身のクリエイティブに影響を与えたものは?
「母の存在です。仕事に追われている母は、会社でも遊びでも、同じかばんを使っていると気づいたとき、自分の生活を大切にできていないんじゃないかなと思って……。
そこで、大学入試の対策でやったことのある紙立体の折りを応用して、かばんをつくったんです。会社に行くときはパソコンも入るような四角形、休みの日はコンパクトに三角形に折りたためるようなかばんです。
実際、実用化は難しいと思うけれど、これを作ることの意味はあると思うんです。母の忙しい毎日に気づけて行動したこと自体が、『かばんを変えるだけで気分が変わるかも?』と、誰かに対しての提案になると思っていて。
もちろん、実用化に向けてデザインすることもあるけれど、使えないから無駄なのではなくて、それで何か訴えることもデザインだと考えています。
入試対策の経験が、こういうふとした気づきに役に立ったという経験は、いつかどこかで何かにつながるんだという実感にも繋がりましたね」
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Q4. 活動の中で、悩みがあれば教えてください。
「社会で共通の問題を見つけることです。
デザインを提案するときは、社会の反響を待たずに、まずは『刺しに』いかないといけないと思っています。自分の持つ問題意識に共感してくれる人や、その需要がある場所を、自ら探しに行くことが求められるのですが、多くの人に『刺さる』問題を見つけるのが困難になっているなと感じます。
たとえば、戦後直後であれば、『戦争は絶対やってはならない』ということを社会全体が共有していて、みんながそれに向けてたくさんの努力してきました。でも、最近は一人ひとりの価値観がそれぞれ違う中、多くの人の心にヒットするデザインを作りにくい。この人に刺さっても、あの人には刺さらないってことが多くて。
昔よりもいっそう、観察力が重要だと思うので、人の行動からその場の雰囲気まで、日々いろいろ観察していきたいです」
Q5. 将来の展望は?
「おもに空間デザインを中心に、心に余裕の持てる社会を生み出したいです。『持っていて気分が上がる』とか『ゆっくり過ごそう』とか、そんなデザインをやってみたいと思っています。
そのために、まずは自分が余裕を持てるようにしたい。アクセサリーを自分で作ったり、人間観察をしたり、いろんな画材でドローイングしてみたり、課題を全力でこなしたりして、自分のスタイルを追求していきたいです。
みんながスマホ見るために下向いて、せかせかしているのを見ると、『何に向かって急いでいるの?』と不思議に思います。
立ち止まって考えられるほどの心の余裕を持つことができれば、感謝も生まれると思うんです。根源的に大切なことは暮らしや日常の身近な中にあると、社会に提起していけるようなデザインをこれからも追求していきたいです」

aoiのプロフィール
年齢:19歳
出身地:神奈川県
所属:東京藝術大学美術学部デザイン科
趣味:あらゆるデザインをみること
大切にしている言葉:謙虚な努力家
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Photo:Nanako Araie
Text:Haru Ninagawa






