
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、博物館や美術館が提供するスマートフォンアプリについてご紹介します。
博物館・美術館のアプリが進化している
さまざまな展示物が置いてあり、知的好奇心を満たしたり、自分の「好き」を見つけられたりする博物館や美術館。行けば楽しいのはわかっているのですが、忙しかったり、興味のある展示会が遠方でおこなわれていたりすると、足が向かないことも多いもの。
そこで、手軽に使ってほしいのが、博物館や美術館が提供しているアプリです。手元にあるスマホやタブレットなどで、手軽に博物館や美術館の収蔵品の情報を見ることができます。開館時間に関係なくアクセスできるので、1つの物をじっくり眺めたり、他の書籍と突き合わせて調べられたりするのもメリットです。
今回は、そんな博物館・美術館が手がけるアプリをご紹介します。どんなアプリがあるのか、チェックしていきましょう。
歴史の勉強をしながら謎解きできる「ハイパー江戸博」
東京・両国にある「江戸東京博物館」。江戸から現代までの東京の歴史と文化を展示する博物館です。同館は現在、大規模改修中で、2026年春ごろまで全館休館となっています。
そんな中、江戸東京博物館は、歴史学習に謎解きの楽しさを組み合わせた推理アドベンチャー型スマートフォンアプリ「ハイパー江戸博」シリーズを、2022年から展開しています。
このアプリシリーズでは、これまでに「江戸両国編」や「明治銀座編」など、江戸東京の複数の時代と地域をフィーチャーしてきました。そして、2025年5月には新たに「大正ロマン浅草編」(iOSおよびAndroid向け)がリリースされています。
舞台は大正時代の浅草。記憶を失った少女・白石アサ子が、浅草寺や浅草十二階周辺で次々に発生する不思議な事件の数々を解き明かしていくストーリーです。江戸東京博物館の収蔵品100点が物語の手がかりとして登場するという、博物館ならではの構成が魅力となっています。
なお、ストーリーの中でアサ子は、浅草寺の賽銭泥棒、盗まれた映画フィルム騒動など、6つの事件の真相に迫っていきます。事件を1つ解決するごとに、彼女の失われた記憶や家族の秘密が明らかに。浅草の街並みや文化を忠実に再現したグラフィックと共に、謎解きが楽しめるアプリです。
「漆工芸」が楽しめるWEBアプリ。硯箱のデザインも体験可能
日本のみならず、世界各地の文化財を収集・保管してきた「東京国立博物館」。同館で公開されてきたインタラクティブコンテンツ「うるし体験」が、このたびWEBアプリケーション版「うるし体験 for WEB」として公開されました。
うるし(漆)とは、漆の木からとれる樹液のこと。うるしを塗った木材などは耐久性に優れ、しかも美しいため、古くからさまざまな器や箱などに用いられてきました。江戸時代には装飾技術が発展し、色を重ねたり加えたりする「漆工芸」として多様に展開されるようになりました。
このアプリの中では、漆工芸の中でも「蒔絵(まきえ)」に注目。蒔絵は、うるし描いた絵や模様の上に、乾く前に金属粉や色粉を蒔くという、日本独自の繊細な技法です。尾形光琳による「八橋蒔絵螺鈿硯箱」は国宝に指定されており、教科書などで見たことがある方もいるかもしれません。
本アプリでは、蒔絵の技法をバーチャルに体験できるほか、「八橋蒔絵螺鈿硯箱」のモチーフであるかきつばたの花や葉、流れる水を使って、自分だけのデザインを作成できます。完成した箱は画面上で鑑賞するだけでなく、ペーパークラフト用のPDFとしてダウンロードも可能。印刷して組み立てれば、実際に手元に置いて楽しむことができます。ぜひ、自分だけの硯箱を作ってみてくださいね。
世界の博物館・美術館が手のひらに!
「Bloomberg Connects(ブルームバーグ・コネクツ)」は、世界各国の美術館や博物館などの文化施設が参加している、無料のデジタルガイドアプリです。
日本では、2024年から大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪市立科学館、大阪歴史博物館が参加し、文化と芸術の魅力をデジタルで発信しています。
さらに2025年からは、武蔵野美術大学 美術館・図書館も新たに加わりました。大学の美術館と民俗資料室のコレクションはもちろん、過去に開催された展覧会の紹介も閲覧できるようになっています。
また、普段は一般の人が入れない図書館にも、バーチャルで訪れることができ、独特の雰囲気を楽しめます。同大学の図書館棟は、大阪万博会場のデザインプロデューサーを務めた建築家 藤本壮介氏の設計によるもの。藤本氏の解説動画もアプリに収録されており、武蔵野美術大学ならではの魅力が詰まったコンテンツとなっています。
アプリで博物館・美術館を身近に
なかなか足を運べない博物館や美術館も、このアプリを通じて体験すれば、ぐっと身近に感じられるはずです。訪れたい施設の下調べとして、公式サイトに加えてチェックしておくのもおすすめ。この夏の計画に、博物館や美術館巡りを加えてみてはいかがでしょうか。
Text:Itsuki Tanaka