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社会課題の解決に挑戦する、韓国発のスタートアップ企業を特集!【Steenz Breaking News】

社会課題の解決に挑戦する、韓国発のスタートアップ企業を特集!【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、5月20日と27日に公開した記事に引き続き、日本最大級のスタートアップ展示会『Startup JAPAN 2025』で出会った注目企業についてご紹介します。

『Startup JAPAN 2025』には韓国企業も出展

毎年春や秋に開催されている大規模なスタートアップ企業の展示会『Startup JAPAN』。今年は5月8日と9日に東京・江東区の東京ビッグサイトで開催され、大勢のビジネス関係者などでにぎわいました。

これからの社会に必要なサービスを手がける、魅力的な企業が多数出展した同イベントには、実は日本だけでなく、台湾や韓国などの海外からもさまざまな企業が出展しています。今回は特に、「スタートアップ企業が次々と生まれる仕組みの構築」に注力する国として、昨今多くのスタートアップ企業関係者から注目を集めている韓国に焦点を当て、どのような企業が来場していたのかをお伝えしたいと思います。

イベントで出会った韓国発スタートアップ企業とは

『Startup JAPAN 2025』では、プログラムの一環として、5月8日午後に「Dream Pitch 韓国スタートアップ 特集【日本語Pitch】」と題したピッチ(※)イベントがおこなわれました。このピッチイベントには、全6社が登壇。韓国社会の課題解決を目指す、多様な製品・サービスが紹介されました。本稿では、日本の課題解決にもつながりそうだと感じた3社をピックアップ。ピッチの内容を詳しくご紹介します。

※ピッチ:自社のアイデアや製品を売り込むための短時間でのプレゼンテーションのこと。

“紙とペン”もオンライン教育に活用できる未来をつくる「DABIDA」

まず取り上げたいのが、EdTech(Education × Technologyを組み合わせた造語。教育分野に革新をもたらすビジネスやサービス、スタートアップ企業などの総称)サービスの「DABIDA」です。

「DABIDA」は、紙に手書きした内容を、物理的に遠い場所にいる人とリアルタイムに共有し、かつAIとも繋いで教育に役立てるというサービス。独自開発の「GENIPEN」というペンでノートに文字を書くと、ペンが記載内容をリアルタイムにデジタル化し、それをオンライン上に保存、教育を提供するプラットフォームなどに表示します。AIによる正誤判別やオンライン講義と併用することも可能です。例えば、問題演習をした後にすぐさまAIで答え合わせをし、間違った問題をリモートで塾講師や学校の先生などから教えてもらう、といった使い方もできます。

なお、「DABIDA」のAIによる正誤判別は、回答だけでなく、回答プロセスも分析するとのこと。そのため、間違った問題があったとき、どの部分で回答に詰まってしまったのかも含めて、復習することもできるようです。

このサービスは現在、特許等も出願しており、インドネシアなどで導入事例が広がっているそう。日本には未進出ですが、2028年頃までには日本でも小学校から高校、企業研修などの場で使ってもらえるよう、投資などを進めていきたいと担当者は話していました。

ウェブトゥーンの他言語翻訳を自動化する Brain Ventures

続いてご紹介するのは、「ウェブトゥーン(縦スクロールで読む形式の漫画のこと)」が活況な韓国ならではのサービスです。

登壇したのは、韓国でAIによる自然言語処理分野のサービス開発・提供をおこなうスタートアップ企業 Brain Ventures。同社は現在、ウェブトゥーンのAI自動翻訳サービス「METAPHOR(메타포)」を手がけています。

昨今、ウェブトゥーンは世界で大きな盛り上がりを見せつつあります。ある調査によれば、その市場規模は2021年に約5,800億円だったものが、2028年には3兆円を超えるとのこと。ただ、世界に市場が拡大している一方で、多言語対応には大きな課題が残されています。「絵や物語で表現されている内容を、文化的背景も含めて、セリフやそのほかの文章として正しく翻訳する」という、漫画特有の翻訳の難しさが、ウェブトゥーンの世界展開のスピードを遅らせているというのです。

そこで、Brain Venturesは、漫画翻訳の複数の工程で複数のAIを活用し、統合したAI自動翻訳サービス「METAPHOR(메타포)」を開発。このサービスでは、文字として書き起こされている箇所だけでなく、キャラクターの表情や背景描写なども画像認識技術で抽出した上で他言語への翻訳をおこなっているといいます。翻訳後の文章を漫画の吹き出しや背景に自然な形で自動配置するため、1つのコンテンツの翻訳にかかる時間を大幅に削減可能です。

日本もここ数年、さまざまな漫画アプリやプラットフォームで、日本発の縦読みマンガを見かける機会が増えています。また、従来の漫画も含めれば、世界に発信できるコンテンツは多数ありますから、いずれ「METAPHOR(메타포)」を使って世界にコンテンツを届ける作家や出版社も出てくるかもしれません。

農業用自律走行追従ロボット「botbox」

日本では少子高齢化が進み、各分野で人手不足が起きていますが、韓国でも同様の課題が生じているようです。農業用自律走行追従ロボット「botbox」は、韓国の農村で進む高齢化と人手不足の解決を目指して開発されたソリューション。農作業では収穫した農作物などを運ぶ重労働も発生しますが、そうした作業をサポート可能なロボットが「botbox」です。

農地は障害物が多く、ロボットにとってはとても複雑な環境です。カメラやレーザー光を使って障害物を避けようとしても限界があり、従来のやり方では農業に適した自律走行ロボットを作ることはできませんでした。また、「農業で活用する」という目的を叶えるためには、機材購入にかける予算が限られている農家でも購入可能な金額でサービス提供する必要があります。

そこで、botboxは発想を転換。農地を自由自在に動き回る完全自律走行型のロボットにするのではなく、「リモコンを追いかけ、人と共に自動走行するロボット」とすることで、機械にとっては複雑な環境である農地でも活用なサービスを安価で構築することに成功しました。

韓国では、botboxの導入によって農家の作業効率が30%以上向上することが期待されているそうです。日本では今後、botboxのレンタル事業も展開予定とのこと。人手・後継者不足に悩まされている国内の農業でも活用される日は近いかもしれません。

スタートアップ企業を知り、未来の社会に思いをはせる

今日まで3回にわたってお届けしてきた、『Startup Japan 2025』の取材レポート。日本や韓国の多彩なスタートアップ企業を知る中で、課題解決の方法にはさまざまなものがあり、工夫や発想次第で未来はどのような形にも切り拓けるのだと感じました。

スタートアップ企業について調べていくと、新しい技術への理解も深まります。雑誌やWebニュース等でもスタートアップ企業特集が組まれていることも多いため、みなさんも機会があればぜひ一度、そうしたものを見ながら、スタートアップ企業が作ろうとしている未来の社会について思いをはせてみてはいかがでしょうか。

 

Reference:
韓国のエコシステムの強み(1)スタートアップへ手厚い行政支援

フィリピンにおけるコンテンツ産業市場調査(フィリピン・マニラ発) | 海外発トレンドレポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ

 

Text:Teruko Ichioka

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Teruko Ichioka

ライター・編集

フリーライター。好奇心の強さは誰にも負けない平成生まれ。得意領域もスタートアップ、ビジネス、アイドルと振れ幅が広い。

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