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コンゴでいま、何が起きている? 反政府勢力による紛争被害とその背景を解説【Steenz Breaking News】

コンゴでいま、何が起きている? 反政府勢力による紛争被害とその背景を解説【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、コンゴ民主共和国で発生している紛争とその背景についてご紹介します。

鉱物資源に恵まれたコンゴ民主共和国

アフリカ中部に位置する、コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)。

コンゴは、世界有数の鉱物産出国です。携帯電話やノートパソコンで使われている「リチウムイオン二次電池」の原料となるコバルトや、石油、銅、スズなど、さまざまな鉱物資源を世界各国に輸出しています。

コンゴでいま、何が起きている?

そんなコンゴでいま、周辺諸国や国際連合安全保障理事会が緊急会合を開くほど深刻な紛争が起きているのをご存知でしょうか。

「M23(3月23日運動)」という名前の反政府武装勢力が、最近になって攻勢を強め、コンゴ国内の国境地域を掌握してしまったのです。1月26日、政府軍と国連平和維持軍との数日間の戦闘の末、M23が人口100万人を超えるコンゴ東部の都市・ゴマを支配下に置いたと宣言。国際連合によると、ゴマをめぐる戦闘によって、1月31日までにすでに700人以上が死亡したということです。また、路上には遺体が放置されている状況で、特にゴマが位置するために戦闘が激化している北キブ州と南キブ州では、少なくとも70万人が国内避難民となっており、今後その数はさらに増えると考えられます。コンゴの隣国であり、筆者が住んでいるウガンダにもこれから、大勢の難民が安全な土地を求めて避難しにくるかもしれません。

さらに、紛争による混乱の中で、武装する人々による性暴力被害も発生。南キブ州では女性52名が、コンゴ軍によるレイプ被害に遭ったと報告がありました。

紛争発生の要因はどこにあるのか

今回の紛争は、なぜ発生したのでしょうか。30年ほど前から、コンゴの隣国・ルワンダで起こっている民族対立に端を発するものだとも言われていますが、激化の最大の要因は、コンゴが豊富に保有する鉱物資源にあると考えられています。

M23が攻勢を強めているコンゴ東部は、スマートフォンにも使われるレアメタルが採掘される地域です。この鉱物資源には、中国やアメリカ、日本をはじめとする世界各国が熱い視線を注いでいます。

そうした状況に着目したM23。隣国のルワンダから長年支援を受けてきたと言われているのですが、その背景には、鉱物資源を支配し、ルワンダ経由で売却することで、M23とルワンダで資金を獲得したい思惑があるようです。

ルワンダは、コンゴ国内に大きな被害や人権侵害をもたらしているM23を支援していることで、いま世界的に非難されています。しかし、ルワンダは紛争への関与を否定しており、状況の好転にはまだ時間がかかりそうです。

コンゴでは数十年も前から紛争の発生が常態化

実はコンゴでは、30年以上も前から紛争が断続的に発生していました。その原因も、やはり鉱物資源や不安定な政治情勢によるものです。

1990年代後半以降に発生した紛争では、540万人もの人命が失われたと推定されています。

なお、コンゴ国内には120から140もの武装勢力が存在しています。今回の紛争で各地に攻撃を仕掛けているM23は、そうした数多くの武装勢力の中でも特に勢力を伸ばしている組織です。

なぜ、紛争が終わらないのか

2012年にも、M23がゴマを占領したことがあります。その際には隣国や政府軍の介入によって撤退しましたが、その後も活動を続け、各地に多大な人道的危機を引き起こしてきました。

M23が支配している地域には多くの民間人が暮らしており、実質、民間人が人質にとられているような構造ができあがっています。そのため、コンゴ政府としても、安易に政府軍や国連平和維持軍が介入すると民間人に被害が及ぶ可能性が高く、今後も平和構築は困難となることが予想されます。

世界各国が関与してきた紛争

現在コンゴで起きている危機的な状況は、最近発生したわけではありません。世界中の国々が長年にわたって関与してきたからこそ引き起こされたものです。アフリカから遠く離れた日本で得られる情報は決して多くはないかもしれませんが、わたしたちが日々の暮らしを営んでいるいまもなお、コンゴでは世界各国が関与してきた紛争が起きている。そのことに思いをはせながら、紛争地域で暮らす人たちに一刻も早く平和な時間が訪れてほしいと願わずにはいられません。

References:
USHMM「Democratic Republic of the Congo, 1996–Present」
ALJAZEERA「A guide to the decades-long conflict in DR Congo」
United Nations「UN agencies warn of worsening humanitarian and human rights crisis in eastern DR Congo」
外務省「ルワンダ反政府勢力の武力闘争放棄宣言について」
外務省「コンゴ民主共和国東部情勢(M23によるコンゴ民主共和国政府への戦闘行為終了にかかる宣言)について(外務報道官談話)」
外務省「コンゴ民主共和国」
UNHCR「Senior UN officials condemn recent rapes of young girls in eastern Democratic Republic of the Congo」
JOGMEC金属資源情報「13コバルト(Co)」

TextHao Kanayama

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Hao Kanayama

ライター

16歳、初アフリカ大陸上陸。19歳、アフリカ10か国放浪。20歳、ウガンダ移住。ウガンダの現地の会社とNGOの職員として、ストリートチルドレン、シングルマザー、薬物中毒者、孤児の支援を行う。不条理で不都合な世界だけど、その先にある希望を求めて歩き続ける、アフリカの人々の暮らしをわたしの目線から伝え続けたい。少数民族と木登りとテクノがスキ。

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