世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、南アフリカで絶滅危惧種に指定されている多肉植物の密売問題についてお伝えします。
あなたの家の植物は、大丈夫?
鑑賞用やインテリアとして広く楽しまれている多肉植物。生命力の強さや、育てやすさ、そして何よりユニークな見た目からも、人気が高まっています。その中には、アフリカや南米の熱帯・亜熱帯地域や砂漠地域原産のものもあり、日本にも多く輸出されています。しかし、実はその多肉植物の中には、正規ではないルートで密売されている商品も混ざっている可能性があるとして、問題になっているのです。
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被害が多く報告されているのが、多肉植物の原産地として有名な南アフリカ。世界の多肉植物のおよそ3分の1が南アフリカに集まっているとも言われていますが、南アフリカやその隣国・ナミビアの広大な乾燥地帯には6,000種類以上の多肉植物が自生しており、その40%は固有種なのだそうです。南アフリカでは、2019年から2024年の間に160万個もの違法に収穫された多肉植物が押収されたとの報告があります。そしてその輸出先は、中国をはじめ、日本、米国、ヨーロッパなどです。
ずる賢い密輸方法とは……
大量の多肉植物を密輸するためには、驚くべき方法が取られていると言います。それは、子ども用のおもちゃ箱に隠すというやり方です。2022年4月に子ども用のおもちゃ箱から発見された多肉植物の数はなんと、23,000個。しかし、犯罪組織は押収されても別の形で輸出するなど工夫しており、2023年には“キノコ”と書かれた段ボール箱に12,000個の多肉植物が発見されています。
現在、南アフリカでは毎週3,000個もの密輸された多肉植物が執行機関によって発見され、押収されているのだそう。そしてその密輸された多肉植物には、絶滅危惧種に指定されているものも多くあると言います。
密輸問題の背景にあるのは、世界の需要です。コロナ禍で観葉植物を育てる人が増えたこともあり、多肉植物のブームは加速し、希少な品種の需要も高まっています。植物のオンラインでの売買も一般的になり、犯罪組織が現地の植物密猟者のチームを雇って、ソーシャルメディアやオンラインサイトで売買している例もあるそうです。
消費者の私たちにできることは?
南アフリカでは絶滅危惧種に指定されたものも含め、自然保護区や私有地から植物が盗まれており、現地の人々は憤りを覚えています。
対策として、植物園と、個人で物販ビジネスを始めることができるECサービス「eBay」が協力して、違法な植物を識別、報告するなど対応しています。また、植物の匂いを嗅ぎ分けられるように、空港などでの検疫探知犬を訓練するといった対策もとられているそうです。
こうした植物は、密輸品であると知らずに購入したとしても、密輸に加担したことになってしまいます。日本にいるわたしたちも、信頼できないオンラインサイトからの安易な購入は控えること、そして消費者が植物の生息地や入手経路を調べ、販売元を信頼できるかどうか判断するといった対策が必要です。
References:
BBC「Rare plants hidden in toys – and other trafficking tactics」
Traffic「Are your houseplants fuelling extinction? South Africa’s rare succulents face silent crisis」
Text:Hao Kanayama