Steenz Breaking News

断崖絶壁や洞窟に家を建てる!ユニークな暮らしをするアフリカの民族を調べてみた【Steenz Breaking News】

断崖絶壁や洞窟に家を建てる!ユニークな暮らしをするアフリカの民族を調べてみた【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、一風変わった住宅に住むアフリカの民族についてお伝えします。

世界のユニークな住まい

世界には、地形や気候の特性を活かしたユニークな家に住む民族が存在します。モンゴルの遊牧民が住むゲルや、東南アジアの水上家屋などは、日本でもよく知られているのではないでしょうか。今回は、アフリカでユニークな場所に住居を持ち、いまも住み続ける民族について紹介します。

何世紀にもわたって断崖絶壁で文化と信仰を守り続けた民族

西アフリカに位置するマリの秘境で、断崖絶壁に暮らす民族がいます。その名も、ドゴン族。「バンディアガラの断崖」と呼ばれる200kmも続く断崖に、昔ながらの粘土作りの家を建てて暮らしています。

もともとこの地域には、紀元前3世紀からトロイ族という別の民族が暮らしていましたが、その後さまざまな民族が住みつき、最終的に14世紀からドゴン族が住むようになったと言われています。

そもそもドゴン族が「断崖絶壁」という特殊な場所を居住区に選んだのは、奴隷商人から逃れるためでした。敵が攻めづらく、眺めが良い上に、洞窟には泉があり水場にも近いなど、好条件が揃っていたのです。現在は断崖周辺に約25万人が住んでおり、宗教も、土着の精霊信仰に加えてイスラム教やキリスト教なども信仰されるなど、多様化しているようです。

ドゴン族は289の村で成立しており、村には首長の家を中心として平家の家や穀倉などが並んでいます。家は動物の糞やキビの藁が配合された粘土づくり。部屋の気温を一定に保つ効果があるのだそうです。何世紀にもわたって修理がおこなわれてきましたが、崩壊してきている場所もあり、現在も残っている洞窟住居は多くありません。

また、これらは洞窟の中や絶壁に建てられているため、人々はロープを使って移動します。

主要産業は農業であり、米や野菜、豆など種類は豊富ですが、彫像といった芸術品を作ることにも長けています。もともと、彫像や木彫りは、男性の割礼の儀式に使われるものでした。ドゴン族の神話を後世まで伝えていくためにも必要なものでしたが、植民地時代にフランスなど欧州の国々によって多くの神聖な品が略奪されたり、もしくはわずかな金銭と交換されたりしたために、いまは大変希少なものとなってしまいました。加えて、ドゴン族を象徴するカラフルな木彫りのマスクなども、キリスト教やイスラム教の布教によって土着の信仰が薄れ、儀式がなくなってきたことで、現在はほとんどが観光産業のために作られています。

長い歴史の中で、何世代にもわたって文化や信仰を受け継いできたドゴン族の住むバンディアガラの断崖。1989年には、世界遺産に登録されています。

アトラス山脈の麓に位置する平和な隠れ家

続いて紹介するのは、モロッコ北部のバリル地域に存在する洞窟住居です。その歴史は4世紀にまでさかのぼり、これまでにもアマジク族やヴォルビリス族、バヌ・ヒラル族といったさまざまな民族が住みつきました。現在もバリル地域には13,000人が住んでいます。

洞窟は新たな住居や食糧の保管のために掘られ、さらに石灰や粘土、干し草などで補強され、現在も約600の洞窟が維持されています。小さな町ではありますが、イスラム教の礼拝堂であるモスクやムスリム学校のほか、売店もあります。

バリル地域では建築から教育に至るまで、イスラム教や、宗主国であるフランスからの影響を受けているものの、豊かな自然と、現代的な暮らしから離れた昔ながらの暮らしを維持しています。ただ、観光客向けの洞窟には電気や水道が設置され、中には電話回線がある宿もできてきたのだそう。

また、バリル地域は伝統的なローブに使用される「ジェラバボタン」の生産地としても有名です。ジェラバボタンは針と糸のみを使って手作りされ、女性の仕事として、先祖代々継承されてきました。

観光客の多いモロッコの都市部とは異なり、平和的な隠れ家とも言えるこれらの洞窟住居には、先祖代々受け継いできた文化と暮らしがいまも息づいているのです。

伝統を守り続ける暮らし

アフリカにはユニークな暮らしをする民族が現在も存在し、その暮らしには、何世紀にもわたる歴史が詰まっています。植民地化や戦争の影響で失われたり、現代の便利な暮らしを求めて開発や都市化を推進したりする人も多い中で、昔ながらの伝統が消滅しないように維持する彼らから学べることは多いでしょう。

References:
FOCUS on Geography「LIVING AND SPIRITUAL WORLDS OF MALI’S DOGON PEOPLE」
UNESCO「Cliff of Bandiagara (Land of the Dogons)」
Cultural Survival「Dogons in Mali: Between Educational Crisis and Loss of Cultural Heritage」
Africanews「Morocco’s unique cave dwellings attract tourist」
City Population「BHALIL」

TextHao Kanayama

SNS Share

Twitter

Facebook

LINE

Hao Kanayama

ライター

16歳、初アフリカ大陸上陸。19歳、アフリカ10か国放浪。20歳、ウガンダ移住。ウガンダの現地の会社とNGOの職員として、ストリートチルドレン、シングルマザー、薬物中毒者、孤児の支援を行う。不条理で不都合な世界だけど、その先にある希望を求めて歩き続ける、アフリカの人々の暮らしをわたしの目線から伝え続けたい。少数民族と木登りとテクノがスキ。

View More