“00年代生まれによる、00年代のための音楽プロジェクト”『from00』。今回は、このプロジェクトから11月13日に楽曲をリリースした、ボーカリスト・ラッパーのSiglinenさん、コンポーザーのFILEINさんがペアで登場してくれました。プロジェクトの思い出や新曲『k0t0nakare』に込めた想いを詳しく聴いてみました。
ボカロ×ラップの新しい試み、二人三脚の「ラップ講習会」で乗り越えた制作の日々
―さっそくですが、普段の音楽活動について教えてください。
FILEIN:2022年からボカロPとして、ボーカロイドを使った楽曲制作、投稿をしています。小学生のときは、「カゲプロ」が全盛期の時期で、ボカロ曲を中心に聞いて育ちました。高校生のときぐらいから、小説を書くなど表現活動を始めたこともあって、そのころから自分でボカロを使って曲を作ってみようというフェーズに、自然に移っていったんです。
Siglinen:「Swing Skit」というバンドで、ボーカルとラッパーをしています。もともとヒップホップが好きで、バトルに出たり、リリックを書いてみたりはしてたんですが、高校卒業までずっとバスケ部に所属してました。ある時、軽音部の友だちから、メンバーが抜けるから入ってくれないかと誘われて。それで、軽音部を兼部することになったんです。そのとき、みんなで音楽をやることが楽しくて、自分の中でバチコン! とハマった感覚がありました。
―では、今回のプロジェクト「from00」に参加したきっかけは?
Siglinen:音楽でご飯を食べれるようになるぐらい、音楽に一生懸命向き合おうと覚悟が決まった時に、ちょうどこのプロジェクトのお声がけをいただいて。「なんでもやらせてください!」という気持ちで、すぐにお返事させていただきました。
FILEIN:ぼくは、去年は少しお仕事の依頼をセーブしていた時期だったことと、内容によっては自信がないな…と思ってしまったこともあって、実は参加を迷っていたんです。でも、前回のfrom00の曲を聴いたり、コンセプトについて説明を聞いたりしていくうちに面白そうだなって。今後の音楽活動に何か活かせるつながりもできるんじゃないかなと思って、引き受けさせていただきました。
―今回、ラップとボカロの異色のペアでしたが、お互いのジャンルに対してどう向き合いましたか?
FILEIN:ラップは聞いたことがなかったので、最初は難しいなと思いましたけど、2月に出した曲にポエトリーリーディング(曲中で歌詞を朗読する)を使っていて、テンポ感や言葉選びの際に、これをうまくラップに活かせたらいいなと思いましたね。
Siglinen:前回のfrom00でも、ボカロPの起用があったので、もしかしたらこのコラボあるかもなと予想はしてたんです。小学生の時に、流行っていたボカロを少しだけ聞いていたこともあって、それほど抵抗感もなく制作に臨めました。
一見、難しそうな組み合わせでしたが、FILEINさんの曲作りの進め方は、堅実で、それなのに新鮮だったし、すごく頼りにしてました。物語や登場人物の設定をしっかりみんなで連想して詰めていってから、音楽に移っていく感じですね。
FILEIN:これが普段の自分のスタイルでもありますし、違うジャンルを扱ってもバラバラにならず良さを出すために、まずは「反戦歌」というテーマへの価値観をすりあわせておくことはさらに大事だなと思ったんです。
Siglinen:こうがさん(担当A&R)もこの話し合いに参加してくれて。丁寧にコンセプトを説明してくださったり、自分たちの考えをいつも肯定してまとめてくださったりして、ありがたかったです。
―お互いのジャンルを尊重して一緒に進めていったんですね。中でも大変だった思い出はありますか?
FILEIN:僕はコンポーザーとして歌詞も担当したのですが、ラップとして韻を踏んだ歌詞を書くということが、なかなか難しかったですね。Siglinenくんに、毎週言葉を分解して韻の踏み方をレクチャーしてもらいながらなんとか進めていきました。韻で固めすぎず、あえて抜きどころを作るテクニックも勉強になりましたね。
Siglinen:FILEINさんは小説を書いているということもあって、言葉選びのセンスも、飲み込むスピードも早くて。もちろんこの時期は大変だったけど、歌詞も含めて一緒に作れた曲になったという感覚ですね。
FILEIN:ありがとうございます。確かに、小説を書く時も言葉のつなぎを取捨選択したり、リズムを調えたりすることはあるのでうまく活かせてたら良いです。それにしても、プロのラッパーはやっぱりすごいなと思いました(笑)。
00年代が持っている「あきらめ」とポテンシャルを表現、何度でも聴いてほしい反戦歌
―それでは、楽曲について教えてください。「反戦歌」をテーマにした今回の曲は、どんな曲になりましたか?
FILEIN:朝に食卓を囲む、00年代の主人公とその家族が、テレビを流し見しているシチュエーションをまず考えました。「この国は悪だ!」とか、「これだから若者は」と好き勝手に怒っている家族を見て、「こんなんだから戦争はなくならないんだよ……」と思いながら、口論になるのはわかっているから何も言わないというストーリーも同時に考えて。
「反抗」というよりは、社会に対してどこか他人事にしていたり、いろんな考え方をひと括りに考えたりする大人たちに、”あきらめている”00年代の世代観を表現できた曲になったと思います。
Siglinen:00年代はネットを通じて自分の手の届かないところからも情報を得られるので、自分から、知らない世界を知りたいと引き寄せられる世代でもあるなって感じていて。
「芸能人が不倫炎上してた、遠い国では戦争起きてた」っていう歌詞のように、身近で起こるジメジメした争いにも、離れた世界のことにも気がつける00年代のぼくたちだからこその曲になったと思っています。
―注目ポイントを教えてください!
Siglinen:ヒップホップに寄せていただきつつも、FILEINさんの作るボカロらしさもあったので、一曲のなかで、いろいろな歌い方をしています。せっかくのコラボだったので、歌いながらFILEINさんと調整して、あえて感情を抑えて平坦に歌う部分をつくって、ヒップホップになりすぎないように気をつけました。いつもはバンドの名前の通り、スウィングを意識したグルービーな歌い方なので、自分の引き出しを増やせた気がします。
FILEIN:「それってお前の感想じゃん?」とか、歌詞にキャッチーなネットミームを混ぜて、世代感も表現しているのでぜひ注目してほしいですね。ただ、この部分は、あなたにはあなたの考えがあって自分は自分の考えがあって、尊重したいよねという思いも込めています。
ほかにもダブルミーニングを込めた言葉を散りばめているので、宝探しのつもりで何回も聞いて見つけてもらえたら嬉しいです!
―最後に、リリースを控えている今、リスナーに届けたいメッセージはありますか?
Siglinen:反戦歌って世の中にたくさんあるけど、「青き、あきらめ」を自分たちなりに考えた、唯一無二の反戦歌になりました。全世界にリリースされたらどこにいても同じものを聞ける時代。この曲から、人それぞれの自分なりの捉え方をしてもらえたら嬉しいですね。
なにか大きく生き方を変えなくても良いから、「青き、あきらめ」の部分が自分の中でどこかに当てはまるか、少しでも考える瞬間をつくってもらえたら、僕の中では、今回のfrom00は成功だなと思います。
FILEIN:1回聴いただけで終わらない、寿命の長い曲にしたいなと思っていました。1年経ったら、きっと考え方も変わっていて、この曲の捉え方も違うものになっているんじゃないかなとも思っています。ふとしたときに、また聞き返してもらって、こういう意味だったのかもな、と新しい発見をしてもらえたら嬉しいです。
―ありがとうございました!
from00のSNS
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大学生4人が、同年代の音楽家とともに
自分たちの反戦歌を作るプロジェクト、from00#2始動。争いの終幕を信じて、僕ら00年代が届ける反戦歌。
この歌を、一緒に歌ってくれませんか。 pic.twitter.com/zQd2ncNApt
— from00 (@_from00) July 27, 2024
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@from00_ 大学生4人が、同年代の音楽家とともに 自分たちの反戦歌を作るプロジェクト、from00始動。 争いの終幕を信じて、僕ら00年代が届ける反戦歌。 この歌を、一緒に歌ってくれませんか。 #大学生 #反戦 #nowar #from00 #04 #03 #05 #fyp ♬ suara asli – Evxyn – ム O X 口
配信情報
10月30日リリース from00,悠稀。,三栖 / 家路
11月6日リリース from00,おと(CARAMEL CANDiD),Ruliea / 我々贅沢品
11月13日リリース from00,Siglinen,FILEIN / k0t0nakare
11月20日リリース from00,万優子,Terutomo Nakashima / Sphenoid’s Noise
11月27日リリース from00,高松力都,はなつばめ / 夢をみてた
12月4日リリース from00,中島りん,よしだ かなう / 証明
12月11日リリース from00 / アルバム「Blue Truth」