「気になる10代名鑑」の840人目は、大場未月さん(19)。社会問題に目を向け、通っている大学に新しくサークルを立ち上げようと活動しています。世界と真剣に向き合う人が悲しい思いをしない世の中になってほしいと語る大場さんに、活動への想いや、将来の展望を伺いました。
大場未月を知る5つの質問
Q1. いま、いちばん力を入れている活動は?
「通っている多摩美術大学で、政治や国際情勢を勉強するサークルを立ち上げたいと思っています。
美大には、政治や経済など、社会の情報をリアルタイムにキャッチして、話し合えるサークルがほとんどないんです。美大は表現を通して情報を発信する人も多いはずなのに、なんで政治や社会問題を考える場所がないんだろうって疑問に感じて。
もっと、世界で起きている問題に目を向けて、話せる場があったらいいな、と思って、サークルの立ち上げを決意しました。表現を通して、社会問題とか、世界で起きていることについて発信したいと考えている学生を支えられるような、思考の場を作っていきたいです」
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Q2. 活動を始めたきっかけは?
「中学生のころから漠然と社会問題に興味があったことや、LGBTQの方々の存在を本で詳しく知ったことで、すべての人たちにとって本当に生きやすい世の中かって言われると、やっぱり違うことに気付いたんです。
社会問題に関心をもつ瞬間があるかどうかは、人それぞれだと思っていて。わたしも特に、きっかけになった出来事があったわけではなく、いつの間にか、絵や表現を通して、世界で起きていることや自分の考えを伝えていきたいと考えるようになりました」
Q3. 印象的な出来事はありますか?
「今年の6月に、別の大学でおこなわれた反戦デモを見に行きました。デモを見に行くことすら初めてで、緊張しながらカメラを持って向かったんです。
デモとして行動を起こしている人たちがいる一方で、足早に去っていく人たちや、無関心な人がとても多いことに衝撃を受けました。帰り際に、高校生たちがふざけながら『戦争反対』と真似している姿を目の当たりにして、すごく悲しい気持ちになって。デモは、過激なイメージが少なからずあるからこそ、冷たい壁のようなものが存在していて、非暴力的なデモであっても、そこで声を上げる人がからかわれたり、冷たい目を向けられたりすることが悔しいと感じたんです。
デモに参加することを強制するつもりはなくて。ただ、切実な訴えのもとで行動をしている友達には、傷ついてほしくない。少し耳を傾けてもらえたら、同じ関心を持つかもしれないのに、政治や世界情勢と聞くだけで壁をつくってしまう人が減ったらいいなと願っています」
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Q4. 最近、新しく始めた挑戦はありますか?
「ガザでの戦争が始まったことを受けて結成され、多摩美術大学を拠点に活動している『アートユニット窓』に所属しました。多摩美術大学と慶応義塾大学の学生4人の団体で、読書会や上映会を企画し、政治や世界情勢を主なテーマに活動をおこなっています。
わたしたちは平和な場所にいるけれど、日々の生活や人生の中で感じる違和感を見逃してほしくない、と話されていて。少しでも多くの多摩美の学生に知ってもらいたいという思いで、参加しました。
きっかけは『アートユニット窓』のInstagramにあった写真です。美大生という立場であるからこそ、美術展示という形で、人々の心に入り込み、その人自身に気が付かせ訴えかける展示ができることに感動しました。ガザの戦争に対する切実な思いが伝わってきて、とても惹かれました。
『アートユニット窓』の作品を見た瞬間に、これこそが、わたしがやりたい表現方法や伝え方かもしれない、と感じたんです」
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Q5. 将来の展望は?
「誰もが気兼ねなく参加できて、『アートユニット窓』とも連携がとれるようなサークルを作りたいです。サークルを作って終わりではなく、内輪だけにとどまらない、いろんな人たちが交われるような環境にしたいと考えています。政治・社会問題について発信をする人たちが、悲しい思いをしないような世の中にしたいです。
卒業後は、海外の道も考えていて。具体的には、青年海外協力隊のプロジェクトに参加しながら、絵も描き続けられたらと考えています。社会としっかり関わりながら、生涯絵を描いていくこと、どちらも叶えるのが目標です」
大場未月のプロフィール
年齢:19歳
出身地:北海道札幌市
所属:多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻一年、アートユニット窓
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Photo:Nanako Araie
Text:Serina Hirano