世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、書店や小売業の店舗に対し、無人営業が可能なシステムを開発・提供するスタートアップ企業についてご紹介します。
読書の秋が到来
10月も下旬に入り、過ごしやすい気温の日が続いています。本格的な秋の訪れです。
秋といえば「読書の秋」。穏やかな気候の中、いつも以上に本に親しんでいる方も多いかもしれません。
ところで、現在カバンの中や本棚にある書籍は、どこで購入したものでしょうか。最近はECサイトが発達し、ネットで注文して、翌日には品物が到着するサービスも増えています。そのため、書籍も書店ではなく、ECサイトで購入したという方が多いかもしれません。そもそも紙の書籍ではなく、電子書籍を利用している方もいるでしょう。
街から書店が消えている
ECサイトや電子書籍の利用が広がる中、昨今、街から書店が減少し続けています。
「全国出版協会」の調査によると、2022年度の国内の書店数は20年前の約6割にまで減少。また、国内外の企業情報を提供する信用調査会社「東京商工リサーチ」が今年3月に公表した調査結果でも、この10年間で764社が書店業界から撤退したことが確認されています。
こうした状況には政府も危機感を示しており、経済産業省は、今年3月に「書店振興プロジェクトチーム」を設置。街の書店を支援する取り組みを強化するとしています。
書店減少に起死回生の一手。無人店舗化ソリューションを開発する「Nebraska」
こうした状況に対して、民間でも書店の存続に向けたソリューション開発が進んでいます。その一例が「株式会社Nebraska」が提供する無人店舗化ソリューション『デジテール ストア』です。
このシステムは、LINEを活用して店舗を無人で運営できるようにするもの。店舗内にセルフレジなどの必要な設備を設置したあと、来店客は店舗の公式LINEを「友だち登録」すれば、入店時にQRコードを読み取るだけで自動ドアが開きます。店舗を出る際は操作不要で、退店すると自動でドアにロックがかかる仕組みです。なお、この「LINEとQRコードを使った入店認証」の仕組みは、特許を取得済みの同社の独自技術だそうです。
『デジテール ストア』を導入することで、書店は日中は有人営業、夜間は無人営業を行うことが可能です。本来、休業している時間も無人営業により店舗を稼働させることができるため、24時間365日の運営が実現し、人件費を抑えつつ、売上を最大化できるようになります。
書店だけでなく、小売店全体に広がるソリューション
このシステムは、読書好きな「Nebraska」の共同代表、藤本豊さんと横山卓哉さんが「街から書店をなくしたくない」という思いから開発されたものだそう。2023年には「MUJIN書店/ストア」として実証実験が行われ、効果が証明されたことから、今年10月に「デジテール ストア」と名称を変更し、本格的なサービス提供が開始されています。
お目当ての本を探して本棚を見て回るうちに、思いがけず素敵な一冊に出会えたり、選書やレイアウトから書店の個性を感じられたりと、書店では、電子書籍やECサイトでは味わえない体験ができることも。街の書店を新たなテクノロジーで守っていく「Nebraske」の取り組みに、注目していきたいですね。
また、今後「Nebraska」は書店だけでなく、さまざまな小売店にもこの無人営業システムを提供していく方針です。労働力不足が深刻化する日本において、同社は多様な業界の店舗運営に新たな風を吹き込み、その未来を切り拓いていくかもしれません。
References:
公益社団法人全国出版協会 「出版業界の基礎知識:日本の書店数」
東京商工リサーチ「『書店』倒産、休廃業・解散、新設法人 社数推移(1-12月)
Text:Teruko Ichioka