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廃水が電気や肥料に。ブルガリアの廃水処理施設が進めるサステナブルな取り組み【Steenz Breaking News】

廃水が電気や肥料に。ブルガリアの廃水処理施設が進めるサステナブルな取り組み【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、ブルガリアの廃水処理施設についてご紹介します。

上下水道施設から二酸化炭素排出量の削減をめざす

気候変動対策の観点から、削減が急務となっている温室効果ガス。さまざまな分野でアクションが生まれていますが、近年、注目されているのが、上下水道施設での取り組み。

でも「なぜ水道で二酸化炭素が発生するの?」と疑問に思う人がいるかもしれません。実は上下水道施設では、廃水処理をする過程で、多くの二酸化炭素が排出されているのです。

ここ日本でも、国内の下水道部門で、二酸化炭素排出量全体の約0.5%が占められているそう。こうした背景もあり、令和3年10月22日に閣議決定された「地球温暖化対策計画」内にも、下水道事業において、2030年度までに21.6 万トンの二酸化炭素排出量削減をめざすことが記されています。

このように、日本でも進められている上下水道施設の二酸化炭素排出量削減ですが、世界でも多様な取り組みがおこなわれているようです。

ネットゼロに取り組む「クブラトヴォ下水処理場」

ブルガリアの首都ソフィアにある「クブラトヴォ下水処理場」は、1984年に稼働を開始した、家庭用廃水や工業用廃水、雨水の処理を行う施設です。総面積60haという大規模な施設で、1日あたり最大50万㎥もの廃水を処理しています。

「クブラトヴォ下水処理場」は、大気中の温室効果ガス排出量を除去量で差し引き、正味(ネット)ゼロにする「ネットゼロ」に取り組むなど、欧州内でも群を抜いてエネルギー効率の高い施設として注目されています。

クブラトヴォ下水処理場でおこなわれているサステナブルな取り組みと実績

まず注目したいのが、廃水処理の過程で発生するバイオガスを活用した、エネルギーの自給自足。廃水をきれいにする際に発生したバイオガスは、2009年に設置されたコジュネレーション(熱電併給)システムによって、熱エネルギーや電気に変換されます。電気に関しては毎年、約24,000Mwhも生み出しており、これは2,300世帯の年間の電力供給に値するそう。また、他の処理施設のバイオガスによる電力生産量は、施設全体の消費電力の50~60%であるのに対して、クブラトヴォ下水処理場では100%以上をカバー。結果として、年間7万トンほどの二酸化炭素排出量の削減につながっています。

そして、もうひとつ注目したいのが、廃水処理の際に出る汚泥。クブラトヴォ下水処理場では、2010年より環境保護などの目的から、汚泥を肥料や土壌改良剤として再利用する取り組みも実施しています。この汚泥の問題は、環境汚染以外にも、埋立処理場を確保しなければならないという側面もあるため、肥料や土壌改良剤としての再利用ができれば、そのメリットは大きいはず。ちなみに日本では、セメント原料やコンクリート、骨材など、建築資材として利用する動きもあるようです。

わたしたち個人も水の使い方についてもう一度考えてみよう

世界各国の下水処理施設で進む、二酸化炭素を含む温室効果ガス排出量の削減。今後もクブラトヴォ下水処理場のように、サステナブルな取り組みをおこなう施設が増えることを願いたいですね。そしてわたしたち個人も、もう一度水の使い方を考えてみましょう。水道の水をこまめに止めるなど、水の使用量を減らすほか、生活排水をなるべくきれいにして流すことも重要です。環境省が発行している生活排水に関する冊子(PDF)なども、気になる方はのぞいてみてください。

Reference:
業務用施設等におけるネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)化・省CO2促進事業|地球温暖化対策事業室
上下水道:環境・エネルギー対策|国土交通省
カーボン・オフセット・ガイドライン Ver.3.0|環境省
コジェネについて|経済産業省
下水汚泥の有効利用|公益社団法人 日本下水道協会

Text:Yuki Tsuruda

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Yuki Tsuruda

ライター

鹿児島県在住のフリーライター。販売職や事務職を経験後、2020年5月からフリーランスのライターへ。執筆ジャンルは、ものづくりやSDGsなど。

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