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西アフリカ・モーリタニアで行われる離婚パーティー。なぜ離婚をお祝いするの?【Steenz Breaking News】

西アフリカ・モーリタニアで行われる離婚パーティー。なぜ離婚をお祝いするの?【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今回は、西アフリカ・モーリタニアでおこなわれている「離婚パーティー」について、ご紹介します。

自由を歓迎する離婚パーティー

日本に多くのタコを輸出していることでも知られている、西アフリカの国、モーリタニア。国土の90%がサハラ砂漠である同国では、離婚した女性の新たな門出を祝う「離婚パーティー」がさかんに開かれています。

モーリタニアの国民は、ほぼすべてが、保守的な思想が強いイスラム教徒です。そんな中、なぜ離婚に寛容で、女性の独立をパーティーを開くまでして祝うのでしょうか。

「離婚パーティー」は何世紀ものあいだ、伝統として開かれていたようです。

例えば、元夫と別居を始め、3か月経ったという女性は、新品のドレスを調達し、ヘナタトゥーで全身を豪華に飾ります。そして、友人や親を招待してパーティーを開きます。音楽に合わせて踊り、伝統的な離婚の宣言をおこないます、また最近では、パーティーの様子をソーシャルメディアで上げることで、独身になったことを公表するという動きもあります。さらに、同居中に使用した家具などを「離婚市場」で売り払って現金にする、たくましい女性も少なくありません。

なぜ離婚に寛容なの?その背景

モーリタニアで離婚が頻繁に起きることの理由のひとつに、児童婚が関係していると考えられます。

世界銀行の調査によると、モーリタニアの18〜22歳の女性のうち、約35%が18歳未満で児童婚を経験しています。そのうちの半数以上は15歳未満という、非常に若い年齢で結婚しており、中には12歳未満で結婚した人も、データとして残っています。

国土の多くが砂漠に囲まれており、経済もさかんでなく、貧困からの脱却として結婚が選択されることから、児童婚が跡を絶ちませんが、早すぎる結婚には離婚もつきものです。

結婚した数は魅力の数

しかし、モーリタニアはイスラム教が国教です。イスラム教では「離婚は神が最も嫌うものである」とされています。イスラム法を勉強し、自身もムスリムである筆者の友人によると、厳格なムスリムにとって離婚は最後の選択肢であり、地域差もありますが、離婚を宣言する権利も原則的に夫にしかないなど、女性に不利な場合がほとんどです。

では、モーリタニアでは他の国と何が異なるのでしょうか。

もともとモーリタニアの社会は少数の部族で構成されており、結婚は「血統を守るための手段」として行われてきたため、たとえ離婚をした場合も、その後の再婚などの選択肢を広げるために宣言するようになったといわれています。

そうした背景もあり、モーリタニアにおいて女性は、離婚によって悪影響を受けることはなく、最終的に、そうした離婚宣言が発展し、やがて独身を祝う「離婚パーティー」になったと考えられます。

実際に、モーリタニアでは若い女性より、結婚や家庭を守ることを経験していて、家事ができる、人生経験が豊富な女性の方が好まれる傾向も見られます。たくさん結婚した人は「魅力がつまっていて成熟した人」と見なされるからこそ、「結婚の数は魅力の数」ともいえるのです。

また、モーリタニアの女性の自治権と独立性は、仕事の場においても確立されているようです。意思決定が必要となる重要な職に就く女性も多く、たとえば2024年9月のモーリタニアにおける女性議員の割合は23.3%を占め、日本の10.8%を大きく上回っています。

モーリタニアの「離婚パーティー」は、宗教と部族の歴史が混在するモーリタニアならではのユニークな伝統であるとともに、女性の独立を祝うだけでなく、社会における女性の地位向上にも貢献しているともいえるのかもしれません。

References:
GECF「Mauritania – Islamic Republic of Mauritania」
World Bank「BASIC PROFILE OF CHILD MARRIAGE IN MAURITANIA」
Inter-Parliamentary Union「Monthly ranking of women in national parliaments」

Text:Hao Kanayama

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Hao Kanayama

ライター

16歳、初アフリカ大陸上陸。19歳、アフリカ10か国放浪。20歳、ウガンダ移住。ウガンダの現地の会社とNGOの職員として、ストリートチルドレン、シングルマザー、薬物中毒者、孤児の支援を行う。不条理で不都合な世界だけど、その先にある希望を求めて歩き続ける、アフリカの人々の暮らしをわたしの目線から伝え続けたい。少数民族と木登りとテクノがスキ。

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