「気になる10代名鑑」の818人目は、松尾栞奈さん（15）。ホームレスの人をはじめ、生活に困っている人にお弁当を配布する活動を4年間続け、去年からは学生団体やプロジェクトを立ち上げ、活動の幅を広げています。松尾さんに、活動をはじめたきっかけや、将来の目標について聞いてみました。
松尾栞奈を知る5つの質問
Q1. いま、力を入れて取り組んでいることは？
「小学校5年生のときから、生活に困っている人たちに、自分でつくったお弁当を配る活動をしています。主に路上生活者の人や、ひとり暮らしの高齢者の人たちに配布しています。
それ以外にも、路上生活を抜け出すためのお手伝いもしていて、団体や企業と連携して、福祉とつなげる活動もしています。まだまだ働けるのに、外部とのつながりがほとんどなくなってしまったせいで、目標や意欲がなくなってしまったっていう人も多いんです。
もともと個人で活動していたのですが、去年、ひとり親世帯への食料支援や、重い病気と闘うこどもたちと、お手紙を通して友だちになる『SMILE LETTERプロジェクト』を立ち上げました。外部講師として、小中学生に生命の大切さを伝える『いのちの授業』を依頼をいただけることもあります」
Q2. 活動を始めたきっかけは？
「もともと、小学校2年生くらいのときから、動物が好きだったこともあって、動物の新しい家族を探すための保護活動に参加していました。でも、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、活動がストップしてしまったんです。
そこで、他に何か自分にできることはないかなって考えたときに、コロナ禍のせいで、ひとり暮らしの人やホームレスの人たちが生活に困っているっていうことを知ったんです。
もともと料理が好きだったので、みんなにお弁当をつくって配ったら、喜んでもらえるんじゃないかと思って。それで、母に相談してみたことがきっかけです」
Q3. 活動を続けている中で、印象的だった体験を教えてください。
「『人は人とのつながりで変わることができる』ということを体感できたことです。
活動を始めたころは、お弁当を受け取ってもらうどころか、お話をすることも難しかったんです。何年間も、誰とも会話をしていなくて、心を閉ざしている人も多くて……。そこで、お弁当にお手紙をつけて、メニューを書いたり体調を聞いてみることで、少しづつ心を開いてもらえるようになりました。そこからだんだんと表情が明るくなっていって、生活の不安や自分の過去についても話してくれるようになりました 。
福祉とうまくつなげられて、路上生活を脱却することができたり、社会復帰が実現したりして、『もう一度やり直してみるよ』と言ってもらえたときは、とても嬉しかったです」
Q4. 活動をする中で、つらかったことは？
「厳しい夏や冬の気候のせいで、亡くなってしまった人たちの死と向き合ったことです。お弁当を持っていったときに様子がおかしくて、救急車を呼んだことも何回かあります。
何か力になれることもあったんじゃないかって、悩んでしまって、苦しかった時期もありました。なので、できることを増やすために、一次救命処置講習を受講してみようと考えています」
Q5. 将来の目標は？
「いまの活動はどれもとても大事に思っているので、継続していくことが目標です。将来の夢はまだ定まっていないけれど、とにかく人と関わることが好きなので、誰かの命と関われるような仕事をしたいです。
すべての人が、他の誰かと比べることなく、その人らしく生きることに自信をもてるようになってほしい。その思いが活動の原点です。お家があってもなくても、大切な命だということには変わりはなくて。誰にでも、生きる権利や幸せになる権利があるのだから、困ったときに『助けて』と言えるような、差別のない世界になってほしいし、そのためわたしも動いていたいんです。
活動をしていく中で、いろんなひとと出会って、つながってきました。人とのつながりがあることで、生きる楽しみを感じることができます。わたし自身も、自分らしく自信をもって生きていけるように、これからもたくさんの人と出会って、つながっていきたいです」
松尾 栞奈 のプロフィール
年齢：15歳
出身地：東京都
所属：さいたま市立南浦和中学校、学生団体NEVER GIVE UP代表
趣味：音楽を聴くこと、人と話すこと
特技：お料理、運動
大切にしている言葉：自分らしく
Photo：Nanako Araie
Text：Mao Kawasaki
