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気温対策&緑地増加のカギとなるのは古代の水道?ギリシャ・アテネで進むプロジェクト【Steenz Breaking News】

気温対策&緑地増加のカギとなるのは古代の水道?ギリシャ・アテネで進むプロジェクト【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、古代ローマ時代の水道を活用した猛暑対策についてご紹介します。

古代ローマの水道を利用して猛暑対策や緑地増加をめざす

ギリシャの首都として知られるアテネは、約3,400年の歴史があり、全世界を見渡しても、古い都市のひとつとして挙げられます。市内の地中には未だに多くの遺跡が眠っており、都市開発や地下鉄の建設時などに、遺跡が出土することもめずらしくありません。

そんなアテネでは、6月から8月にかけて、記録的な猛暑が続き、さまざまな被害が出ています。例えば、近郊の山では、猛暑と乾燥の影響によって山火事が多発し、近隣に住む人々が避難する事態となりました。それに限らず、熱波による熱中症の増加や、深刻化する水不足も危惧されています。

このような現状を受けて、アテネでは、都市の冷却と節水が急務となっており、対策として、さまざまなプロジェクトが進められています。そのうちのひとつが、古代ローマに建設された水道を活用した「Cultural HIDRANT」プロジェクトです。

Cultural HIDRANT プロジェクトとは?

「Cultural HIDRANT」プロジェクトとは、アテネ北部のチャランドリにある「ハドリアヌス水道橋」を活用し、都市緑化や都市再生、コミュニティの活性化などをめざす計画であり、2020年からスタートしました。ハドリアヌス水道橋は、紀元前140年頃に完成した、パルタニ山からハドリアヌスの貯水池、約23kmをつなぐ水道です。その大部分は地下にあり、地域に点在する井戸とつながっています。

現在、ハドリアヌス水道橋は、一部を修復する工事が進められています。これが完了すれば、新たな非飲料水のパイプラインが使えるようになるため、年間8万㎥の節水につながるそう。それに加えて、灌漑用水としても利用できるようになり、余った地下水は水路が流れる地域の緑化に貢献。気温も下がることから、ヒートアイランド現象の緩和も期待されています。

ちなみに市民は、水道橋の横に設置されたパイプラインへ接続する、あるいは市の給水車を利用することによって、地下水を使うことができるそうです。

最終目的は、持続可能な水文化の創造

このプロジェクトがめざしているのは、節水や都市の緑地増加、気温対策だけではありません。このプロジェクトは、ふたつの市民グループと、13の学校コミュニティも参加しているため、取り組みを通して人々に水の使い方を考えてもらい、飲料水のムダ使い防止を促すという意図もあります。

アテネ上下水道公社の戦略・イノベーション担当ディレクターであるジョルゴス・サチニス氏は、プロジェクトの最終目的を「文化の創造」だと話しています。ハドリアヌス水道橋のような、使われていなかった遺産を活用して、さらに緑地増加も進めていく。なおかつ、都市全体で水の無駄遣いを減らして、サステナビリティを啓蒙していく。このように、いくつもの目的を達成することにより、アテネに持続可能な水文化が根付いていくと考えているのです。

古いものを見直してサステナビリティを推進!日本でも見習いたい取り組み

古来からある遺産を活用して、持続可能な水文化の創造に取り組む「Cultural HIDRANT」プロジェクト。遺産の状態や保存の問題などにもよりますが、ただ「歴史的に価値あるもの」として残しておくのではなく、可能な範囲で活用するという考え方は、参考にしたいですね。

今後は、アテネ・チャランドリ以外の地区や、他のヨーロッパの都市にも拡大予定とのこと。プロジェクトの輪がどこまで広がり、各地域でどのように取り組まれていくのか、引き続き注目していきましょう。

Reference:
東京都海外調査報告書本文|東京都議会
Harnessing Hadrian’s heritage: Athens taps into ancient Roman aqueduct to turn down heat|European Commission
Cultural HIDRANT|urbact . eu
The Hadrian Aqueduct of Athens | An marvel of ancient Roman engineering springs back to life|Greek News Agenda

Text:Yuki Tsuruda

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Yuki Tsuruda

ライター

鹿児島県在住のフリーライター。販売職や事務職を経験後、2020年5月からフリーランスのライターへ。執筆ジャンルは、ものづくりやSDGsなど。

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