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「なぜ?」という疑問が蔑ろにされない社会になるために。政治や社会課題への学びと発信を続けていく【白坂リサ・19歳】

「なぜ?」という疑問が蔑ろにされない社会になるために。政治や社会課題への学びと発信を続けていく【白坂リサ・19歳】

「気になる10代名鑑」の777人目は、白坂リサさん(19)。仙台での高校時代に、選挙に関するポスターを学校で掲示したことをきっかけに幅広い議論を起こし、上京した現在も政治や社会課題に関するさまざまな発信をしています。多くの壁にぶつかりながらも、“議論ができる社会”の実現に向けて活動を続ける白坂さんに、現在取り組んでいることや将来の展望について、伺いました。

白坂リサを知る5つの質問

Q1. いま、力を入れている活動は?

1968年創刊の総合誌『情況』で記事の執筆をしたり、学生運動が盛んだった60年代の、全共闘世代の方たちに、当時の話や考え、価値観を知るために、さまざまな場所へ行って取材をしたりしています。

また大学院で、社会運動について研究をしている方に誘っていただき、同世代と社会課題について議論するイベントを開催しました。現役の記者の方や元官僚の方を講師として招いて、ディスカッションをしたり、質問をしたりしたんです。

昨年の12月からは大学で、立て看板を作成して、SNSの中では無責任に消えてしまいがちな社会への言葉を、現実世界で文字として残すという試みを始めました」

Q2. 活動を始めたきっかけは?

2022年1月、共通テストの会場だった東京大学で、当時高校2年生の青年が起こした『東大刺傷事件』です。犯行動機として報道されていた『東大理Ⅲに入れないなら自分の存在価値はない』という言葉を聞いたとき、その言葉が自分のすぐ目の前を掠めたような感覚があって……。

わたしが通っていた高校も、学歴至上主義的な考え方が強くあって、犯人の言葉を否定できないと思いました。そして、そのような価値観を生み出した教育制度や学習指導要領の内容に、疑問を感じたんです。

学校というのは、生徒にとっていちばん身近なコミュニティであり、社会であるからこそ、もっと考え方の幅が広げられるべきなんじゃないかな、と。そんな疑いから、活動を始めました」

Q3. 活動にあたってのファーストアクションは?

選挙の仕組みを解説したポスターを作成して、校内に掲示しました。

いまの日本の政治制度は、論理が何重にも重なっているので、理解するのがやっとで、意見を持つのが難しくなっているなと感じていて。そのことで、政治や社会課題から関心を遠ざかっているのではないかと思って、同世代がわかりやすい解説をすれば、もっと関心を寄せてもらえるのではないかと考えて、ポスターを作成したんです。

でも、それが校則で禁止されている政治的活動にあたると指摘されて、剥がすように求められたんです。あくまでも解説であって、特定の政党を支持したものではなかったけど、周囲の生徒も先生もあまり協力的ではなくて、最終的には剥がすことになりました。

そのことをSNSで問題提起したところ、自分でも想像していなかったくらい、大きな反響がありました」

Q4. 活動をする中で、壁に感じたことは?

わたしが未成年の女子だからなのでしょう。特に高校生だったときは、どんな発言をしても、たくさんのアンチによるコメントに晒されました。

同じ高校の人や近隣の高校の生徒からいろいろな誹謗中傷を受けたり、下品な言葉を投げかけられたり。高校生活の最後のほうは、ほぼいじめのようで、高校に足が向かなくなりました。『あの子には何を言っても、どんな言葉を投げかけてもいい』と思われたのかもしれません。

また、自分の考えや疑問を発信するとき、SNSが中心になってしまうと、コミュニティができてしまって、分断が生まれる。それは大きな課題です。SNSの世界は現実社会とは違うし、SNSの中の言葉を世論だと思って、現実を見失ってはいけないと思っています。現実の世の中は、SNSの世界よりも受動的で静かだからこそ、しっかり伝わるように、丁寧な発信をしなければいけないと思っています」

「なぜ?」という疑問が蔑ろにされない社会になるために。政治や社会課題への学びと発信を続けていく【白坂リサ・19歳】
「なぜ?」という疑問が蔑ろにされない社会になるために。政治や社会課題への学びと発信を続けていく【白坂リサ・19歳】
「気になる10代名鑑」の777人目は、白坂リサさん(19)。仙台での高校時代に、選挙に関するポスターを学校で掲示したことをきっかけに幅広い議論を起こし、上京した現在も政治や社会課題に関するさまざまな発信をしています。多く […]
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Q5. 将来の展望は?

『なぜ?』が蔑ろにされない社会、言葉が信頼できる社会、そして、それぞれが自由に楽しみながら、社会を変えるための運動できるような余裕ある社会を実現させたいです。そして、次の時代を牽引できるような、新しい価値観と社会への声を、これからも発信していきたいと思っています。

具体的には、政治や社会課題について、真剣に、ときには肩の力を抜いて議論するような、ラジオ番組のパーソナリティになりたいな、なんて思っています。大滝詠一さんや杉真理さんといった、80年代のシティポップが好きなので、令和の時代の厳しさとはちょっと離れたような、ある種の軽快さをもつ曲をかけて、ラジオで発信できれば嬉しいですね」

白坂リサのプロフィール

年齢:19歳
出身地:宮城県仙台市
所属:慶應義塾大学総合政策学部、総合誌『情況』第六期編集委員
趣味・特技:折り紙

白坂リサのSNS

★Twitter★

Photo:Eri Miura
Text:Manami Tanaka

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Manami Tanaka

2003年生まれ。千葉県出身。立教大学文学部日本文学専修に在学中。「エモい」という言葉に違和感を持ったことをきっかけに、古きを懐かしみ、新しきに出会うためのZINE「Kaico」の制作を始める。大学では大正期の少女雑誌を研究中。2024年より、ライターとして「気になる10代名鑑」のコンテンツ制作を担当。

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