世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、次世代データベースなどの事業を通じて、平和の実現をめざすスタートアップについて、ご紹介します。
8月6日に行われた広島市への原爆投下
今日、8月6日は「原爆の日」です。
1945年8月6日午前8時15分、広島市の上空に原子爆弾が投下されました。高度約600メートルの上空で核爆発を起こした原爆は、大量の中性子線を放出。強烈な爆風と熱線、放射線被ばくの影響により、同年12月までに、推定14万人が亡くなりました。
ただし、爆心地に近かったところでは、一家全員が跡形もなく亡くなってしまったというケースも多かったことから、本当は何人が亡くなったのか、実際のところはわかっていません。死者数14万人という推計値には、1万人の幅で誤差があるともいわれています。
史上最悪の被害をもたらした原爆。第二次世界大戦が終わった後、このような惨劇を二度と引き起こしてはならないと、世界で多くの人が固く心に誓ったはずですが、戦後80年が経ったいまもなお、世界各地で戦争・紛争が相次いでいます。特に直近では、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエル・パレスチナ間の紛争の報道に、心を痛めているという人も多いのではないでしょうか。
事業を通じて平和の実現に挑むスタートアップ
そうした紛争や戦争のない平和な社会を望むとき、多くの人はその手段として政治やボランティア活動を思い浮かべますが、事業開発と提供を通じて、世界平和の実現に一歩近づけようと奮闘する企業も存在します。
地理教員向けの動画学習サイトや、データ構造をいかようにも変形可能な“丈夫でやわらかい”データベース『APLLO』など、複数のサービスを展開する株式会社Eukarya(ユーカリヤ)もそのひとつ。同社が提供している、『Re:Earth(リアース)』というサービスは、特に注目を集めています。
株式会社Eukaryaのプレスリリースによると、このサービスは、3Dの地図表現やデータビジュアライゼーション(データ群を分析し、図や表などにビジュアル化すること)、またはデジタルアーカイブを、プログラミングなしで誰でも簡単に作成・公開できるというもの。
オープンソースのため、データは自由に利用や改変、再配布ができるうえに、他サービスとの連携で、自在に機能を拡張できます。また、データベースを他のデータと連携しやすいという特徴もあり、その利便性の高さから、政府のスマートシティ政策の技術基盤にも採用されたそうです。
サービス誕生のきっかけは、被爆者証言のビジュアルアーカイブをつくるプロジェクト
同社が発信したnoteによると、『Re:Earth』開発のきっかけは、CEOの田村賢哉さんが、京大学大学院・渡邉英徳研究室で、被爆者証言のビジュアルアーカイブをつくる「ヒロシマ・アーカイブ」のプロジェクトに参加したこと。
被爆者の証言を、なるべくそのままの形で次世代へと残せないか。解釈や文脈、雰囲気といった主観的な情報を、適切なかたちで保存できるデータベースはつくれないものか。そう考えた結果出てきたのが、データを構造化して保存し、その構造を気軽に変えられる「やわらかいアーカイブ」という発想であり、同社の『APLLO』や『Re:Earth』といったサービスのアイディアだったと、記事には記されています。
そんな『Re:Earth』はいま、スマートシティの文脈で盛り上がりを見せ、企業や自治体に活用されています。その一方で、「デジタルアーカイブを誰でも簡単に残せるサービス」として構想したことから、田村賢哉さんは、平和活動をおこなう人たちに活用してもらうイメージももっている。
事業を通じて、戦争をするよりも「平和が儲かる」という社会をつくることで、平和の実現をめざす。スタートアップの大きなビジョンが、世界を変えていくのかもしれません。
Reference:
SDGs活動の可視化にも!誰でもデジタルアーカイブが公開できるサービス「Re:Earth」提供開始!
記憶の質感まで保管する。「やわらかなアーカイブ」がメタバースにもたらす豊かさとは CEO 田村賢哉|Eukarya観察日記
Text:Teruko Ichioka
※本記事は取材に基づくものではなく、