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30代の元教員が起業!民間人材の活用で教育現場の変革をめざすスタートアップに世界中が熱視線【Steenz Breaking News】

30代の元教員が起業!民間人材の活用で教育現場の変革をめざすスタートアップに世界中が熱視線【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、民間人材の活用で、教育現場と社会をつなぎ、多様な教育の実現と教員の負担軽減をめざすスタートアップ企業についてご紹介します。

残業時間は過労死ライン超え。教員の大きすぎる業務負担

昨今、教育の現場に求められる機能や、児童・生徒におこなう教育の内容は、非常に多様化しています。また、国としても、教育の質を重視する方針を掲げていて、児童・生徒ひとりあたりに必要な教員数の基準を、これまで以上に厳しく設定するようになりました。

その結果、教員の業務負担が大幅に増加しています。日本教職員組合が2023年11月30日に公表した「学校現場の働き方改革に関する意識調査」によれば、小中学校・高校の教員が平日1日に費やす労働時間は、平均して11時間24分。休日も平均2時間55分の労働時間があることが判明しました。

さらに、残業時間は1か月あたり平均96時間を超えていることが明らかに。過労死の懸念がある残業時間数は、月80時間とされています。今回公表された数値はそのラインを大幅に超えており、教員の処遇改善は喫緊の課題といえるでしょう。

文部科学省も本格的に動き始めた、教育現場の働き方改革

こうした状況に対して、文部科学省の中央教育審議会(以下、中教審)は、教員の勤務環境改善に関する審議のまとめ資料を5月13日に公表しました。

資料の中では、教員の処遇改善について、具体的な方針が示されています。教育委員会が教員の労働時間を適切に管理しながら、過労死ラインを超えて残業する教員数をゼロにすることや、新卒教員の負担軽減、小学校の中学年における教科担任制の推進といった内容です。

文部科学省も、このような過酷な労働環境をなんとか改善しようと、さまざまなアイディアを検討していることがうかがえます。

外部人材と教育現場を結びつける新たなプラットフォーム『複業先生®』

そのような教育現場の現状に対して、課題解決に挑むスタートアップ企業があります。多数の教員を輩出してきた東京学芸大学教育学部を卒業し、自身も公立小学校で教員の経験がある金谷智さんが起業した「株式会社LX DESIGN」です。

「LX DESIGN」が開発・提供するのは、教育現場向けの外部人材活用サービス『複業先生®』。自分の知識や経験を活かして教育現場に携わりたい人材と、外部人材を活用した教育をおこないたい教育現場をつなぐプラットフォームです。着想のきっかけは、両親が教職に就いていたことから、自身も教育現場に携わることを夢見るようになったことにあります。

両親がともに教師として働く家庭に生まれ、親戚も教職に就く人が多かった環境で育った金谷さん。自然と教職という仕事に憧れを抱くようになったといいます。小学校高学年になるころから、「先生になりたい」という夢を周囲に語っていた金谷さん。しかし、否定的な意見をもらうことも多く、モヤモヤした気持ちを抱いていたそう。

高校時代には、両親の仕事があまりにも大変そうだと感じ、自ら教育委員会に電話をかけ、「なぜこんなに忙しいのか」と尋ねてみたこともあったそうです。しかし、事態は改善には向かわず、誰かのせいで両親が多忙を極めているわけではないのだと実感。そのまま自身も東京学芸大学に進学し、教員の道を歩み始めました。

教育現場に変革を起こすために…28歳で起業

金谷さんは、教職に「一生を捧げたい」と思えるほど大きなやりがいを感じていました。しかしその一方で、実際に教育現場のさまざまな非合理を目にする中で、より良い教育を追求するためには、どうにかして学校に変革を起こさなければならないと危機感を募らせるようになりました。

どの教師も一生懸命働いているにもかかわらず、すべての業務が必ずしも最適化されていない状況を、テクノロジーの力で変えていきたい——。そう考えた金谷さんは、思い切って職場を退職。起業前にシリコンバレーを訪れ、スタートアップ企業が歴史ある産業を構造的に変革していた姿を目にし、自身も教育業界にスピード感を持って変化を起こしたいと感じたそうです。そして28歳のとき、「LX DESIGN」を立ち上げました。

いま、多くの企業や教育現場から注目を集めている「LX DESIGN」。3月18日に発表した資金調達では、世界規模でベンチャー企業を支援するグローバル・ブレインなど、多数の企業が出資したことが明らかになりました。

『複業先生®』には現在、20か国から2000名の民間人材が登録をしており、300校以上の学校がサービスを利用しているといいます。全国各地で広がりを見せている「LX DESIGN」のサービス。教育現場の変革を見据えながら、一歩一歩着実に歩みを進め、道を切り拓いています。

References:
独立行政法人労働政策研究・研修機構「実質的な残業時間が平均で過労死ラインを超過/日教組調査」

TextTeruko Ichioka

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Teruko Ichioka

ライター・編集

フリーライター。好奇心の強さは誰にも負けない平成生まれ。得意領域もスタートアップ、ビジネス、アイドルと振れ幅が広い。

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