「気になる10代名鑑」の556人目は、宮川亮さん(19)。早稲田大学で勉学に励む傍ら、ナッジ理論を用いた環境教育を実現するために活動しています。誰もが環境へ配慮した行動を自然とできるような社会を目指す宮川さんに、印象的な出会いや今後の展望について、詳しく聞いてみました。
宮川亮を知る5つの質問
Q1. いま、いちばん力を注いでいる活動は?
「環境問題に対して『ナッジ理論』を用いて、社会を変容させることができるか、というテーマで活動をしています。ナッジというのは『軽くひじでつつく』という意味で、『ナッジ理論』とは、法律やペナルティなどの強制力、あるいは金銭的インセンティブなどの報酬を伴わずに、人間の心理をもって行動変容を促そう、というものです。
というのも、気候変動に対する危機意識を認知している人が増えてきてはいると思うけど、『行動を変えよう』となるまでは到達していないように感じるんです。企業もSDGsへの貢献を掲げるようになりましたが、実際に達成できているのかというと、はっきりとはわかりません。そこで、ナッジを用いてストレスフリーに、毎日の歯磨きのように、習慣化したような環境へ配慮した行動が促せたら社会は大きく変わるのではないか、と思って。
現在は、ナッジのアイディアが掲載された『オープンプラットフォーム』を作成したいと考えて動いています」
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Q2. そのテーマで活動を始めたきっかけは?
「16歳から環境活動に携わってきたのですが、活動している中で『日本は市民運動にあまり寛容ではない』『気候変動に対する危機意識があっても、実際は行動に移しづらい』という問題意識を抱きました。ただ、それまで生きてきて形成された価値観や考え方は、そう簡単に変化しないものですよね。
そんなときに、ナッジ理論と出会いました。ナッジ理論を使えば、意識変容をスキップして行動変容を促すことができると知って、すごく惹かれたんです。特に日本人は、良くも悪くも『流されやすい』特性があると思っていて、ナッジを利用すれば、自然と環境に配慮した活動を習慣化することができるようになるのではないか、と可能性を見出しました。まさに『三つ子の魂百まで』のようにです」
Q3. 印象的だった出会いはありますか?
「『アースデイ東京ユース代表』の上野我唯さんとの出会いが印象に残っています。僕の大学のサステナビリティに関する講義にゲストとして呼ばれていて、そこで出会いました。自分の芯を持っていて、行動力や発想力があるところを尊敬しています。
彼から誘ってもらったイベントや旅では、たくさんの人と出会うこともできて。同年代の、自分なりのアプローチで社会問題に取り組んでいる方や、環境省にいた方ともつながることができたし、僕の活動テーマであるナッジに興味をもってくれる人もたくさんいて。素敵な出会いのきっかけをくれた彼には、感謝しています」
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Q4. 影響を受けたものは?
「『NOW OR NEVER』という言葉に影響を受けました。これは訳がいくつかあるようですが、僕は『機会に飛び込め』という意味だと捉えていて。この言葉に従って生きてきたので、これまでに、子どもの野外キャンプに携われたり、環境活動家がプレゼンするイベント『NEOアワード』で登壇したり、アジアの大学が集う環境会議に選抜されたりしたんだと思います。
もちろん、飛び込んでみて失敗することはありますが、飛び込まずに後悔することは嫌なので、今後もできるだけいろいろなことに挑戦していきたいです」
Q5. 今後の展望は?
「はっきりとは決まっていませんが、起業も視野に入れています。取り組んでいることや上述した背景を抜きに『起業』と言われても、軽い気持ちで言っているように思われるかもしれないので、安易に『起業したい』とは公言しないようにしてるんですけど。ただ、自分のいまのビジョンを発展させて改善し、社会に既存ではないシステムをつくるには、『起業』がいちばん理想に近い形なのかなと思っています。
現段階では、環境に配慮した行動変容を促すナッジのアイディアのオープンプラットフォームをつくって、普及させていけたらなと考えていて、学校をはじめ、児童館やスポセンなど、子どもが利用する施設での導入を目指しています。どんな機能をつけるのか、どうやって利益を出していくのかなどは、大学生活のなかでしっかり考えていけたらと思っています」
宮川亮のプロフィール
年齢:19歳
出身地:東京都大田区
所属:Fridays For Future Yokohama、Climate Clock Japan、全国エシカル連盟、早稲田大学人間科学部人間環境科学科
趣味:旅、野球
特技:初対面の人と仲良くなること
大切にしている言葉:NOW OR NEVER
宮川亮のSNS
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Photo:Eri Miura
Text:Chikiri Kudo