Steenz Breaking News

言論弾圧が続くミャンマーのジャーナリストやクリエイターを支援。日本の映像作家が「伝える場」を開設【Steenz Breaking News】

言論弾圧が続くミャンマーのジャーナリストやクリエイターを支援。日本の映像作家が「伝える場」を開設【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、軍事クーデターの影響で言論や表現の自由が厳しく制限されているミャンマーのクリエイターたちを支援するプラットフォームついてご紹介します。

ミャンマーの現状を伝える表現の場「ドキュ・アッタン」

ミャンマーでは、2021年2月のクーデター以降、国軍に抗議する市民への弾圧が続いており、これまでに4,154人が死亡し、いまだ1万9,600人以上が拘束されています(2023年10月23日時点)。市民は、軍による厳しい監視下に置かれ、言論や表現の自由も制限されています。そうしたミャンマーの現状を伝えるクリエイター(ジャーナリスト・映像制作者・アーティストなど)を支援するためのオンラインプラットフォームが、「ドキュ・アッタン」です。

ドキュ・アッタンでは、さまざまなクリエイターが、ミャンマーの現状を映像作品にして伝えています。映像は無料で見られますが、視聴者がサイトを通じて寄付することで、クリエイターを支援できる仕組みになっています。

現在、ミャンマーのクリエイターらによる15作品が視聴できます。国軍の弾圧から隣国のタイに逃れる家族を追った短編ドキュメンタリー『逃避行』や、軍に拘束された女性が残虐な尋問や性的虐待から生き延びようと奮闘する様子をアニメで描いた『ザ・レッド』など、深く考えさせられる作品ばかりです。

継続的に活動するための支援を

このプロジェクトの発起人は、ミャンマー当局に拘束された経験をもつ、ドキュメンタリー映像作家の久保田徹さん(27)ら。久保田さんは、こうした作品を制作するクリエイターたちを支援しようと思った理由について、「ミャンマーではジャーナリストらが次々と拘束され、活動が制限されている。そうした彼らが継続的に活動できる場所を提供したかった」と話します。

久保田さんは2022年7月、デモの現場にいたところを、軍によって拘束されました。観光ビザで入国して抗議デモを撮影したとして、入国管理法違反などの罪で有罪判決を受け、計10年の刑期が言い渡されていました。その後、恩赦により解放され、同年11月、日本に帰国することができました。拘束期間中に収監されていた現地の刑務所には、デモの現場にたまたま居合わせた人など、特別な理由がなく拘束された人も多かったそうです。

久保田さんによると、外国人と現地の人が収監される建物は別れており、外国人には暴力行為がほとんどなかった一方、現地の人々には、拷問などの残虐行為が行われていました。久保田さんが解放される際、同じ刑務所にいた受刑者に「若い人はミャンマーのことをやり続けろよ」と言われたといい、ミャンマーの現状を世界に伝えていく決意を固めたそうです。

「自分のできる範囲で他者に目を向ける」

久保田さんは、「ミャンマーで何が起きているのか、人々の自由が奪われていることを知ってほしい」といいます。さらに、「いまは世界各地で争いが起こり、どこも大変な状況で、すべての問題を支援することはできないでしょう。しかし、自分のできる範囲で、何か他者に目を向けていくことが大事なのではないでしょうか」とコメントしてくれました。

ドキュ・アッタンに作品を寄せるクリエイターの中には、軍の弾圧から逃れるため、隣国との国境地帯に潜伏しながら、作品を作り続けている人もいます。アッタンにはミャンマー語で「声・意見」という意味があり、「一緒に声を上げる」というメッセージも込められているそうです。

今後もサイトに掲載する作品を増やしていく予定です。ドキュ・アッタンの映像作品に触れてみる事で、ひとりひとりになにができるか、考えてみるきっかけになるかもしれません。

Docu Athan ドキュ・アッタン | ミャンマーを応援する映像サイト
「Docu Athan ドキュ・アッタン」は、ミャンマー人のクリエイター(ジャーナリスト/映像制作者/アーティスト)を応…
https://www.docuathan.com/

Text:Risako Hata

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Risako Hata

ライター

タイ在住のジャーナリスト。共同通信系メディアにて5年のタイ駐在を経て独立。現在は、アジアの経済や人道問題、SDGsに関連する記事を執筆。

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