「10代のうちにたくさん映画を見て、インプットしておいたほうがいいよ」なんてよく言われるけど、過去作から新作まで、たくさんある作品の中から、どれを選べばいいかわからない……という10代に向けてスタートしたこのシリーズ。
21.2万人のTwitterフォロワーを持ち、「人生を豊かにする映画」を発信している映画アクティビストのDIZさんに、配信で見られる作品について、ひとかじり語ってもらいます。
今回は、この夏の大注目作品『バービー』の公開を記念して、バービーの恋人・ケン役で出演している俳優、ライアン・ゴスリングを大特集します! 主演を務めた『ラ・ラ・ランド』での演技も名高い彼ですが、それ以外にも数多くの作品に出演しており、その唯一無二の魅力で、観るひとを虜にさせてきました。そんな彼のキャリアを、時系列順に追っていきましょう。
もっとバービーが待ち遠しくなる!ケン役・ライアン・ゴスリングの魅力溢れる5作品
映画アクティビストのDIZです。ついに待ちに待った、今年最大の期待作『バービー』が、8月11日より公開になります! かわいい世界観やファッションはもちろん大注目ですが、ライアン・ゴズリングの演技にも、大変な注目が集まっていて、大手メディアに「ライアンはオスカーにノミネートされるだろう」と予測されるほど。そこで今回は、「この(ケン)役を演じるために生まれた」と語るライアンの魅力を、歴代の作品と共に大解剖! 『バービー』を観る前に、チェックしておくことをオススメします。
きみに読む物語
名優ライアン・ゴズリングのキャリアのスタートは、ディズニー・チャンネルの「ミッキーマウス・クラブ」で子役でした。いまでこそ、誰もが共演したいと願うほどのハリウッドスターですが、実は長い間、俳優として伸び悩んでいたのです。
そんなライアンの人気に火をつけた作品が、恋愛映画の不朽の名作『きみに読む物語』。「この作品を観て泣かない人はいないのでは?」と思えるくらい、映画史上最高に純粋で、美しい運命の恋が丁寧に紡がれます。
ライアン演じるノアは、安い給料で日々働いている真面目な青年。ある夏の日、都会から休暇を過ごすためにやってきたお嬢さまに出会い、ひと目惚れして猛アタックします。ふたりは瞬く間に恋に落ちますが、身分の違いや戦争が彼らを引き裂きます。しかし、誰もがその恋を忘れた7年後、彼らは思わぬ再会を果たし、ふたたび運命の輪が回り始めます。
タイトルの伏線が回収されたとき、きっとあなたの涙腺は崩壊するでしょう。見る人を誰でも虜にしてしまうスターになるきっかけとなった、心に訴える情熱的な演技は必見。余談ですが、わたし自身も作品をきっかけにライアンに恋をして、彼にいつか会えるように……と、映画の仕事を志すようになりました。
ラブ・アゲイン
ライアン・ゴズリングといえば、日本でも一気に知名度が上がった『ラ・ラ・ランド』をパッと思い浮かべるひとも多いでしょう。その『ラ・ラ・ランド』で相手役を演じたエマ・ストーンとの初共演が本作となります。爆笑しながら、心があたたかくなる素敵なラブコメです。
ライアンが演じるのは、女なら誰でも落とせると自負しているナンパ師のジェイコブ。いつもの手口でナンパしようとふらついていると、バーで運命の人に出会ってしまいます。本気で誰かを好きになることなんて一度もなかった彼は激しく動揺し、しかも、いつもの手口はまったく効かない……。そのお相手こそ、エマ・ストーン演じるハンナという女性。遊び人だと有名な彼に対して一切なびかないハンナに、真剣に愛を伝え続けるジェイコブ。彼の運命の恋の行方は……?
本作でモテ男を演じたライアンは、その役柄のとおり、めちゃくちゃかっこいいビジュアルです。色気がダダ漏れ状態で、うぶな青年を演じた『きみに読む物語』と同一人物とは考えられないでしょう。本作は、『バービー』のケンに通ずるところがあるかもしれません。ライアンはロマンチックな作品も、コメディもシリアスな作品も、どんな作品でも演じられる、唯一無二の俳優ということがわかる一作です。
▶︎Netflix
ブルーバレンタイン
多くの映画好きにトラウマを与えた、リアルすぎる恋愛映画。ふたりの男女の出会いから結婚、そして関係の破綻までをリアルに描いた作品で、ライアン・ゴズリングはいつものかっこよさを封印し、役づくりのために髪の毛を抜いて、くたびれた中年の夫を演じました。
結婚7年目を迎え、娘と共に3人で暮らす夫妻。お互いに不満を募らせながらも、平穏な家庭生活を何とか守ろうとするふたりですが、ついには破綻寸前に……。しかし彼らにも、かつては夢中で愛し合った時期がありました。そんな彼らの過去と現在を交錯させ、時系列をバラバラにして描く、夢や希望にあふれていた愛の変遷を描くラブストーリー。
恋をした人なら誰でも身に覚えるある苦い思い出が蘇ってきて、現実は映画のようにロマンチックなことばかりではない……という衝撃を与えてくれます。まさに、「永遠に変わらない愛なんて、ないの」というキャッチコピーのとおりです。ライアンは映画らしい夢のようなロマンス作品に出演することが多かったので、そのギャップにも、心がグサグサと抉られます。幸せな気持ちだけに浸れる作品ではありませんが、ライアンが輝かしい青年から疲れ切った中年までを演じているからこそ、すさまじい説得力がある作品です。
ドライヴ
ライアンが、それまでのロマンチックさとユーモアさを封印し、孤独で寡黙、そしてバイオレンスな一面を持った予測不可能な狂気をはらんだ強烈な役を演じ切った話題作。この作品で、ライアンは俳優としての新たな可能性を見せてくれました。
天才的なドライブテクニックを武器に、スタントマンと逃がし屋のふたつの顔を持つドライバー。壮絶な過去から、誰とも関わることを望まず孤独に生きる男が、唯一心を開ける女性に出会い、彼女への愛のために命がけの危険な抗争へと突き進んでいくクライム・サスペンス。オープニングから緊迫感あふれる展開で、一瞬たりとも目が離せません。
ライアンの新たな魅力を引き出したニコラス・ウィンディング・レフン監督に思わず感謝したくなるほど、これまでの役柄とはまったく違う印象で、実力派俳優というポジションを確立させた作品だと思っています。極限までシンプルに削ぎ落とされたストーリーだからこそ、その存在感が際立ちます。わたしはこの映画が好きすぎて、劇中に出てくるサソリジャケットをゲットしたほど。過激な描写が多く、観る人を選ぶ作品ではありますが、映画史上最もバイオレンスなキスシーンと、痺れるほどクールなライアンに出会いたい人は、絶対に見逃せない作品です。
ファースト・マン
この映画に出会ってから、もし叶えたい夢や目標を諦めそうになっても、月を見上げれば乗り越えられるようになりました。人類で初めて月面に足跡を残した宇宙飛行士ニール・アームストロングの半生を描いた『ファースト・マン』は、ライアンが『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督と再コラボした作品です。一見すると、『ラ・ラ・ランド』とはかけ離れたテーマに思えますが、伝えたい熱いメッセージは同じ。『ラ・ラ・ランド』が好きという人には、ぜひ見逃さないでほしい映画です。
この作品で特筆したいのは、なんといってもほとんどの時間をライアンの顔がスクリーンを埋め尽くすということ。ライアンファンにとって、これほどまでに至福な時間は他にないでしょう。「顔のドアップだけで、映画が成り立つの……?」と思うかもしれません。しかし、ライアンの類まれなる演技力があるからこそ完成した、奇跡の作品です。
彼が演じた、実在する宇宙飛行士のニール・アームストロング氏は、実際にも寡黙な方だったようで、ほとんどセリフはなく、感情も表からでは見えにくい。それでも人類にとっての偉業を成し遂げた彼の人間性を、目の表情だけで観客に伝えるのです。静寂の中で、燃えたぎるその情熱と決意を伝えるその表現力には、度肝を抜かれます。
ラブストーリーからサスペンス、アクションからコメディまで、演じられない役はないライアン・ゴズリングの虜になる、珠玉の5作品を紹介しました。『バービー』では歌やダンスも披露しており、予告だけでもまだまだわたしたちが知らない才能を秘めている予感がします。今回演じるケンは、父親でもあるライアンの愛する娘たちから演技のアイディアが生まれたとのこと。『バービー』もきっと、彼のキャリアを代表する作品となることでしょう。
DIZのプロフィール
映画アクティビスト。ひとりでも多くの人に映画の素晴らしさを伝えるために、フリーランスで活動している。体験型の映画イベントを主催したり、配信サービスのSNS企画・編集やコピーライティング、さまざまな作品の評論を寄稿したりと、枠にとらわれずに活動している。
Twitter:@DIZfilms Instagram:@diz2049
Text:DIZ