「気になる10代名鑑」の410人目は、天さん(19)。岩手県から上京し、女子美術大学でアートプロデュースについて学んでいます。文章を使った表現を軸に、演劇、イラスト、映像、さまざまな表現方法にチャレンジする天さんに、創作活動についての想いやこだわりについて、根掘り葉掘り聞いてみました。
天を知る5つの質問
Q1. いま、力を入れて取り組んでいることは何ですか?
「文章を使った表現に力を入れて取り組んでいます。文章を書く以外にも、大学で出会った友人を集めて劇団を旗揚げして、わたしは部長を務める傍ら、脚本を書いています。まだ実績はないけど、今年からステージでのパフォーマンスや短編映画制作、ドラマ制作など、幅広い分野での表現にチャレンジしていく予定です。
もともと小説や戯曲を読むことが好きで、中学生のときから創作小説などを書いたり、所属していた演劇部で脚本を書いたりしていました。地元からほど近い岩手県盛岡市は、全国でいちばん演劇が盛んな地域で、中高時代から演劇が身近な存在だったんです」
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Q2. 活動を始めたきっかけは?
「小学生のときに見た能楽のポスターがきっかけで、美術に興味を持ちました。ポスターに写っていた般若の表情に惹かれて、図書館に通って、小説にもどっぷりハマりました。音楽も好きで、海外のロックや国内のロックを中心にいろいろ聴いています。
文章や物語を書き始めたのは、中学1年生のとき。シナリオライターに憧れたのがきっかけで、最初はライトノベル調の文章を書いていたんです。その後、タイトルに惹かれて手に取った村上龍さんの『限りなく青に近いブルー』に感銘を受け、より生々しい表現を追求するようになりました。そこから小説家を志し、中高で所属していた演劇部で、脚本を書かせてもらっていました。
進路を考えるときは、専門学校に行くという選択肢もあったけど、自身の表現や表現にまつわる知識を深めるために、そして美大でしか出会えないような仲間との出会いに期待して、美大を受験しました。結果的に、いますぐ大学を辞めても後悔しないぐらい、すでに多くの知識や出会いに恵まれています」
Q3. 活動をするうえで大切にしていることはありますか?
「『母のように脆く強くて美しい』をテーマに、表現活動をしています。家族のことが大好きなのですが、愛情と比例するほど、強烈なコンプレックスを家族に対して抱いていて……。特に母親には、例えようのない感情を感じています。そういう感情を文章で表現することで、過去の呪縛から解放されていくような、救われる感覚を覚えるんです。
書きたいと思い立ったら、とりあえず紙に文字として書き起こしてみるのがわたしの創作スタイルなので、書き進めながらストーリーを考えています。自分の気持ちを自覚するのが苦手なので、文章やできあがった作品を通して思いや考えを初めて認識している気がします」
Q4. 自身のクリエイティブに影響を与えた「作品」や「人」などがあれば、教えてください。
「小説家、映画監督、ミュージシャンはじめ、影響を受けたアーティストは山ほどいるので挙げきれません。その中でも、村上龍さんの『ピアッシング』という作品は、文章を書くきっかけをくれたもので、特に影響を受けています。
作品の中に『自分で自分の痛みを選ぶことができるのは、少し怖いけどすばらしい』という大好きなセリフがあって。それまで、痛みというのは与えられるものであり、抗えない運命のようなものだと考えていたけど、この一文と出会って、痛みは選び取ることができるもので、痛みを選ぶことができる生き物は人間だけだ、ということに気づきました。だからこそわたしは、自分に心地よい痛みというもの与える手段として、文章を書くことを選び、表現活動の中でも特に強い思い入れを持って取り組んでいます」
Q5. 最近、新しく始めた挑戦はありますか?
「劇団で短編映画を製作するために、動画編集を勉強し始めました。もともと写真や映像を撮ることに興味はあったのですが、編集の技術が追いつかず、苦労しています。頭の中にイメージはあるのに、まったく違うものになってしまうんです。機械はあまり得意ではないけど、創作活動の幅を広げるためにもできるようになりたいです。
最終的にはどんなかたちであっても、表現者でありたいと思っています。欲を言えば小説家になりたいですが、自分のまわりにはいろいろな表現方法があるので、枠にとらわれることなく、さまざまな表現を模索していきたいです。いつかは憧れのアーティストと並んだときに胸を張って会話できるように、まずは経験や知識を積んで、少しずつ成長していきたいです」
天のプロフィール
年齢:19歳
出身地:岩手県久慈市
所属:女子美術大学、劇団てのひら
趣味:読書、LUNA SEAやBUCK-TICKのライブに行くこと、デモテープ収集
大切にしている言葉:地獄は退屈しない
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Photo:Eri Miura
Text:Ayuka Moriya