「気になる10代名鑑」の343人目は、橋本玄さん(17)。地元・鎌倉を中心に活動する学生団体『玄海』で代表を務め、高校生防災士として活動しています。日本各地で防災について講演するなど、精力的に活動をする橋本さんに、防災にのめり込んだきっかけや10代ならではの悩みについて、語ってもらいました。
橋本玄を知る5つの質問
Q1. プロフィールを教えてください。
「学校で行われている防災教育に疑問をもち、もっと実践的な防災教育を広めるべく、高校生防災士として活動しています。学校している防災教育というと、代表的なのは避難訓練ですよね。でも、あれってすごく事務的なものになっていて、それじゃよくないかなと思うんです。
それに防災って聞くと、難しいとか重たいっていうイメージを抱く人も多いと思うんです。そこで『防災を楽しく学ぶ』をテーマに、プログラムやイベントの提供を行う学生団体を立ち上げました。現在は、中学生から大学2年生までのメンバー29人で活動しています」
受け身の防災訓練は即刻廃止して主体的に考え行動する防災訓練をしない限り命を守る防災訓練にならないと思う。地震大国日本において、命を守ることが何よりも重要。しかし、シナリオありきで義務化された防災訓練が行われている限り防災力向上には中々繋がらないのではないでは。主体性とは!
— HARUKA 高校生防災士 (@genharuka1019) December 2, 2022
Q2. 活動を始めたきっかけは?
「最初のきっかけとしては、東日本大震災が発生したあと、父が東北支援に行っていて、僕もついて行っていたこと。震災があった当時は5歳だったので、正直覚えていないこともあるんですが、たくさんの大人と出会ったことは覚えています。
その後、中学生のときの探究学習で、地域の防災について調べることがあって。それで、地元・鎌倉は、自然が豊かな一方で、災害のリスクも大きい地域であることを学んだんです。また、被災地でボランティア活動をしていたところ『支援してくれるのは嬉しいけど、自分の街は大丈夫か?』と言われたこともあって。
そういう経験から、災害はいつ起こるかわからないし、日常は危険と隣り合わせなのに、逃げて終わりの既存の避難訓練では、救える命も救えないんじゃないかと考えるようになって、防災士として活動をすることにしたんです」
Q3. 活動を始めるときに、いちばん最初におこなったファーストアクションは?
「中学校で全校生徒が集まる機会があって『この学校の防災訓練を変えたい!』と訴えました。でも、先生たちに事前に相談していなかったので、案の定、怒られてしまいました。
そこから、人に思いを伝えるには、なんらかの肩書きが必要なのかと思って、高校1年生のときに、民間資格である防災士の資格を取ったんです。資格を取ったからといって、特別なことができるわけじゃないけど、見られ方は大きく変わって。いまでは高校生防災士として、学校や高齢者施設、行政からもお声がけいただき、講演させていただいています。最近は、母校の小学校5年生と一緒に、防災について考えました」
Q4. どんなことを大切にして、活動に取り組んでいますか?
「イベントや講演に参加してくれた方を惹きつけること。いかに防災に対して関心を持ってもらえるか、それがすごく大事だと思っていて。そのために、座学ではなく、実際に参加者に動いてもらう時間も取り入れるようにしています。
最近では、防災とアウトドアを掛け合わせて、防災運動会、防災キャンプ、防災アドベンチャーといった取り組みにもチャレンジしています。これは、団体のメンバーの興味があることと防災を掛け合わせている部分もあるんですけど、防災に対して強い思い入れがなかったメンバーも、自分事化して、防災について考えてくれるようになったんです」
Q5. 今後の展望や将来の夢を教えてください。
「もっとインパクトあるかたちで、防災について社会に発信していきたいと考えています。いま学生団体で取り組んでいる、講演活動や防災に関するイベントだけでなく、企業で整備しなければならない防災マニュアルの制作業務の受託もしていきたいと考えていて。もっといろいろな企業や地域に根付いた防災のあり方を考え、発信していきたいと思っています。
本当は消防士になりたかったんです。被災地で救助に向かう隊員の姿に憧れていたので。でもひとりの力だけじゃ、限界があるとも思っていて。『地域を守る』『ひとりでも多くの命を救う』という想いはぶらさず、公的機関じゃないからこそできることに、積極的にチャレンジしていきたいです」
橋本玄のプロフィール
年齢:17歳出身地:神奈川県鎌倉市所属:神奈川県立金沢総合高校、防災普及学生団体玄海、日本防災士会神奈川県支部、創作神楽 玄一座、創作獅子舞 台獅子、台峰緑地保全会趣味:料理をつくること大切にしている言葉:苦しい、疲れた、もうやめたでは人の命は救えない
橋本玄のSNS
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Photo:Eri MiuraText:Ayuka Moriya