Fasion&Culture

Cody・Lee(李)ボーカル・高橋響。孤独と戦った高校時代、そのありのままを綴った新曲「1096」を語る

Cody・Lee(李)ボーカル・高橋響。孤独と戦った高校時代、そのありのままを綴った新曲「1096」を語る

いま独自の立ち位置を確立している人は、どんな10代を過ごし、いまの場所の行き着いたのだろう。インタビューシリーズ「あの人に聞く、“私の10代”」。今回のゲストは、昨年5月にメジャーデビューを果たしたロックバンド「Cody・Lee(李)」のボーカル/ギター、高橋響さん。

他愛もない日常を切り取ったリリックと、どこか懐かしさを感じさせるメロディがクセになる楽曲で、多くの音楽ファンを虜にしてきました。2月1日にリリースされたばかりの新曲『1096』のアイディアは、高校時代にまでさかのぼる……。ということで今回は、そんな学生時代のことや、曲が生まれたときのことについて、聞いてみました。

孤独と敵対心の間で揺れていた高校時代

ーさっそくですが、新曲『1096』の原案を書かれたという高校時代、どんな学生生活を送っていたんですか?

「明るい学生生活とは言えなかったですね。休み時間はずっと音楽を聴いてたし、お昼ごはんもひとりで食べてたし。なるべく、クラスメイトに存在がバレないように生活してました。全員が敵だと思って入学したので(笑)」

ーどうして最初から敵視してたんですか?

「通ってたのが進学校だったんです。けど、中学までの仲のいい友達はみんな地元の工業高校に行っちゃって、『あっちに行けばよかったな』とか『みんなに会いたいな』っていう気持ちがずっとあって。

そのせいもあって、高校で出会った人たちに対しては、『勉強ばっかしてるやつら』って斜に構えてしまって、なかなか好きになれなくて……。

それに、だいたいのアイデンティティの形成って、中学の卒業くらいまでに終わると思うんですよ。少なくとも僕はその自覚があって。だから、新しい要素が加わることにすごく抵抗があったんです」

ーというと、中学時代は明るいタイプだったんですか?

「人前に立つのが割と好きなタイプでした。友達と組んだバンドで、フジファブリックの『夜明けのBEAT』を全校生徒の前で披露したり。

父親が音楽スタジオで働いていた影響で、放課後は友達とそのスタジオに集まって曲を練習するのが日課だったんです。音楽の道を志すようになったのも、この時期でしたね」

ーけっこう目立つキャラだったんですね。

「そもそも地元が岩手の田舎で、家の前にタヌキがいるようなところだったので、人が少ないっていうのはあるんですけど(笑)。でも、バンドをやってる子はそんなにいなかったんじゃないかな。まわりの友達が雪遊びをするような感覚で、メンバーとスタジオに通ってました」

ー確かに、そこからの高校生活は、落差がありそう。

「めちゃくちゃありました。でも、まわりのことは絶対認めたくなかったから、話して好きになっちゃうのも嫌だった。敵意を根本にもちつつ、孤独もちゃんと感じているっていう、かなり面倒くさい状態で(笑)」

ー高校での音楽活動は?

「軽音部に入って、個人的にも曲を作ってました。でも受験シーズンに入ってから、放課後に課外授業が増えて、音楽をやる時間がなくなっちゃって。それをきっかけに、音楽に専念するために高校をやめたいって思ったんです。

それを親に相談したら、両親も音楽が好きで、元々バンドをやっていたので『自分で責任取れるなら、やりたいようにやったら』って言ってくれて。それで高校を中退して、音楽の道で生きていくことを決めました」

空虚な生活を満たしてくれた音楽。ライブハウス通いの過去とメンバーとの出会い

ー高校時代はいろんな葛藤があったんですね。

「いま思うと、かなり陰鬱な時期でしたね。でも、音楽に助けられてたと思います。当時は音楽がなかったら何してたんだろうって思うぐらい、ずっと音楽のことを考えてて」

ー特にどんな音楽に救われました?

「それこそ、フジファブリックはよく聴いてました。

あと、岩手の盛岡にライブハウスがあるんですけど。そこには好き嫌い関係なく、ライブを観に行ってたんです。そういう日々が自分にとっては救いだったし、ライブハウスに行くことで満たされる感覚があって」

ーそれから音楽大学に進学されたんですよね。そこでは、陰鬱な気持ちも解消されました?

メンバーの力毅(Gt/Cho)と出会えたのが、自分にとって大きかったです。

大学には、同じ音楽の道を志す人しかいないわけだから、『まわりのやつらより自分のほうが優れてる』と思って、変わらず敵を作り続けてたんですよ。そんな中で唯一、『この人、敵じゃないな』って思えたのが力毅でした」

ーそう思えたのはなぜですか?

「やっぱりギタープレイに光るものがあって、それが人間性を超えて、心にグッときたというか……。正直、彼の性格については、よくわかんない部分がいまだに多くあるんですよ(笑)。でもだからこそ、音楽を通してつながった感覚はすごく強いですね」

ーその感覚は他のメンバーに対してもありましたか?

「僕が唯一、誰とでもフランクに話せていたのが、ライブハウスにいるときだったんです。だから、そこで出会ったリノちゃん(Vo/Ag)とも、わりとすぐに仲良くなって。気付いたらメンバーとして迎え入れてました(笑)」

今までもこれからも、生活と地続きの音楽を届けたい

ー昨年にメジャーデビューを迎えたCody・Lee(李)ですが、2023年はグループとして、どんな1年にしたいですか?

「Cody・Lee(李)が独特だなと思うのは、メンバー各々で目標設定して、それに向かってそれぞれが頑張っている感じがあるんです。というのも、音楽ルーツも、好きなものも、みんな全然違うから。

だから、メンバーそれぞれが目標達成の過程で得たものをグループに還元して、その結果として作品やバンドがパワーアップしたらいいなと思います」

ーCody・Lee(李)の多様な表現も、そこから生まれるのでしょうか。

「そうかもしれないですね。最近は『Cody・Lee(李)の曲の歌詞って固有名詞が多いよね』って言われることが多いんです。それはたぶん、僕がヒップホップをよく聴くことが影響していて。ヒップホップって、地名とかが歌詞にめちゃくちゃ出てくるじゃないですか。

ひとつの楽曲をとっても、メンバーそれぞれのカルチャー的なバックボーンとか想いとか、いろんなエッセンスが加わってできあがってるんだと思います」

ーでは、新曲『1096』にはどのような想いが込められているのでしょうか?

「この曲は、卒業を控えた高校3年生の2月、まさに挫折の渦中にいたときに当時の想いをそのまま描きました。

中退したので、厳密には『卒業』してないんですけど。でもその節目は、自分の人生においてすごく大切なことだったような記憶があります。両親とか、心配をかけた人たちに、卒業するところを見せてあげたかったなって気持ちもあったり……」

ー他の楽曲の歌詞とくらべて、内省的な印象を受けました。これは、高校時代の心境がそのまま反映したものですか?

「いま書こうと思っても書けないような歌詞ですね。

いわゆるキラキラした卒業ソングって感じではないんですが……(笑)このときの自分にしか書けない言葉をなるべく残して、手を加えないようにしてリアレンジしています」

ー昔書いた楽曲をこのタイミングで発表したのはなぜですか?

「今年の5月で25歳になるんですけど、20代から30代への切り替わりという意味で、人生のターニングポイントになるんじゃないかと思って。その節目にちなんで、リリースを決めました。

あと、僕がバンドをやるうえで、『届けたい人に向けて音楽をつくる』っていうことをすごく大事にしていて。いま妹が高校3年生で、卒業を控えてるんですよ。だからこの曲を届けたいなと思って」

ー届けたい人は意外と身近にいるんですね。

「そうですね。ファンの方々にももちろん届けたいんです。でも、身近な人にちゃんと届かなければ、それ以上の場所に広がっていかないと思っていて。あくまで自分の生活と地続きに、バンドとしての表現が存在している気がしていて。これからも、ずっとそういうスタンスでいたいですね」

Cody・Lee(李)2023年初のシングル「1096」

高校時代の3年間=(1096日間)への想いをタイトルに込め、「自分の高校時代は『俺たちの青春、最高!』って感じじゃなかった。でも、このどうしようもない3年間を曲にして記憶しておきたかった」という高橋響さんの想いから、18歳の冬につくられたという楽曲です。

1096Listen to content by Cody・Lee (李).kmu.lnk.to

また、2023年5月からは、メジャーデビュー1周年を記念した全国ワンマンツアー「Cody・Lee(李)Major Debut 1st Anniversary こnにちはせいかつ。TOUR」が開催。5月25日の東京・EX THEATER ROPPONGIを皮切りに、全国11か所を訪れる、過去最大規模のツアーとなります。詳細は以下のHPをチェック。

LIVE / Cody・Lee(李)Cody・Lee(李) Official Websitecodyleeofficial.com

高橋響のSNS

★Instagram

★Twitter

Photo:Goku Noguchi
Text:Yui Kato

SNS Share

Twitter

Facebook

LINE

Yui Kato

エディター

View More