世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、「おしゃれ」としてのドレッドヘアをきっかけに論じられたキーワード、「文化の盗用」についてご紹介します。
仲里依紗さんの個性的なドレッドヘアが話題に
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11月10日開催された「第39回 ベストジーニスト2022」にて、女優・モデルの仲里依紗さんが、最もジーンズが似合う有名人に贈られる「ベストジーニスト賞」を受賞しました。
個性的なファッションと、カラッと明るい人柄で大人気の仲さん。式典にはデニムのセットアップを着て、カラフルなドレッドヘアで登場しました。SNSには「とっても似合ってる!」「個性的で素敵!」などのコメントが数多く寄せられました。
一方で、「ドレッドヘア」をファッションに取り入れることに対しては、否定的な意見が挙がることも。2021年には、ジャスティン・ビーバーさんがドレッドヘアを披露した際に、「文化の盗用なのではないか」という批判の声が数多く寄せられました。
この「文化の盗用」というキーワードは、ファッションや音楽など多様な文化を楽しむうえで、いま一度考えておきたいひとつの視点です。
ドレッドヘアは「ただのおしゃれ」じゃない
「ロックスヘア」とも呼ばれるドレッドヘア。さまざまな文明で用いられ、古くは黒人が奴隷にされていた時代において、編み方によってコミュニティの繋がりを示したり、食物を隠し持ったりするなどの意味も持っていました。
現在でも、残念ながら黒人特有の髪に対する差別や偏見は、日本を含む世界各地に残っています。アメリカ各地では職場や学校における毛髪による差別を禁止する「クラウン法」を制定する必要があったほどです。
歴史と文化の証であり、黒人であることのアイデンティティとしての側面も持っているドレッドヘア。アフリカにルーツを持つアメリカの女優・ゼンデイヤさんは、2015年のアカデミー賞にドレッドヘアで登場し、「ポジティブな光を当てて、有色人種の人たちに、私たちの髪型は素晴らしいのだと思い出してもらうため」とその理由を語りました。
「文化の盗用」って何?
今回指摘された「文化の盗用」とは、特定の文化圏の宗教や文化を、他の文化圏の人がファッションや娯楽の一部として流用することを意味します。
しかし、なぜ「その文化が好きだから取り入れた」が、リスペクトではなく盗用になるのでしょうか。その大きな理由のひとつとして挙げられるのが「盗用された人たちの地位が向上しない」ことだといわれています。
非黒人がマジョリティの文化圏において、「ドレッドヘアはかっこいい」という文脈で親しまれている一方で、依然として「黒人の髪は汚い」という偏見は残っています。このように、真似をしたグループが利益を得て、真似をされたグループに何も還元されないことが、問題のひとつといわれています。
ドレッドヘアの他にも、アメリカの女優・モデルのキム・カーダシアンさんが自身の矯正下着ブランドに「Kimono Solutionwear」と命名したことが社会問題に発展して、改名を余儀なくされたり、アメリカの歌手のケイティ・ペリーさんのチャイナドレスと着物の中間のような衣装で和傘をさしたパフォーマンスが物議を醸すなど、さまざまな事例が議論されてきました。
他の文化圏のカルチャーを自身のスタイルに取り入れる際には、単に「好き」という理由だけで選ぶのではなく、その背景をきちんと理解することがとても大切。そして、そのカルチャーと共に生きてきたひとびとにリスペクトを払えている行動なのかどうか、慎重に判断したうえで、おこなっていく必要があるでしょう。
Text:Kei Hayashi