「気になる10代名鑑」の264人目は、中村日向子さん(19) 。東京藝術大学音楽学部に現役合格し、この4月から音楽環境創造科で、劇場や文化支援について研究しています。ミュージカルファン、劇場マニアとして、SNSでも熱心に発信している中村さんに、研究についての思いや、新しく始めた挑戦について、詳しくお話を聞いてみました。
中村日向子を知るための5つの質問
Q1. どんな活動をしていますか?
「東京藝術大学音楽学部で、劇場について研究しています。もともと、ミュージカルをはじめとする舞台鑑賞が大好きなんです。研究活動を始めたきっかけは、高校生のときに授業の一環で行った、『観客にとって、理想の劇場とは』という調査。当時、Twitterなどで『理想の劇場』についてアンケートをとったり、自分自身でも都内近郊の劇場に行きまくったり、見学させていただいたりして、照明や座席の位置、座り心地などのベストを探ったんです。
今年は受験勉強もあってなかなか足を運べない時期もありましたが、1年間で90公演ぐらい、舞台鑑賞をしています」
遠征で驚いたのは街中にあるミュージカルの広告の数の多さ。毎日最低10個は見かけた。バス停、駅、商業施設どこにでもあった。 pic.twitter.com/WCvs0J3NYs
— ひなこな (@hinako_5_) November 9, 2022
Q2. 劇場や舞台に興味を持ったきっかけは?
「最初に劇場に興味を持ったのは、高校1年生のとき、ミュージカル『レ・ミゼラブル』を観たのがきっかけ。そこから沼です。一気に舞台の世界に引き込まれました。
しかも、初めて観たのが帝国劇場だったんです。私は千代田区出身で、帝国劇場や日生劇場といった歴史ある素晴らしい空間が近くにあったんですけど、あらためて訪れてみて、建築のつくりや観客席の配置などに感動しました。『日本の芸術をこれから広めていくぞと』いう、当時の建築家たちの気概やプライドが感じられるような気がして。
一方で、最近になってつくられた劇場は、そういったプライドが欠けているような気もしていて……。時代が進んで技術は進化しているのにもかかわらず、『とりあえず文化支援のためにハコをつくっておくか』みたいな軽さを感じてしまうんです」
Q3. 活動するうえで、大切にしているポイントやこだわりはありますか?
「いろんな立場の方の目線に立って考えること。良い劇場について考えるとき、私自身の立場からすると、『観客にとって良い劇場は何か?』を極めたいと思ってしまいがち。でも、劇場にいるのは観客だけではなく、演出家や役者さん、音響や照明のスタッフさん……劇場をつくり上げる人たち、それぞれに理想の劇場があるはずで。
だから、意見が偏りすぎないようにするために、積極的に劇場にかかわるいろいろな立場の仕事を経験してみることを意識しています。具体的には、コンサートを企画したり、ショーの演出をしてみたり、観客を誘導してみたりなどです。
それに、同じ観客であったとしても性別、身長、障がいを持っている方、いろいろな立場の方がいるので、視点を変えて考えることは常に大切にしています」
美女と野獣🌹 C席最上手のお席。
開演前の舞台のばらは見えないけど、舞台からの距離はかなり近い感じがする。 pic.twitter.com/xI6AU4O4Cl— ひなこな (@hinako_5_) October 27, 2022
Q4. 最近、新しく始めた挑戦はありますか?
「理想の劇場の模型をつくり始めました! 理想を実際にかたちにすることは、頭の中や紙の上で考えているときの、何十倍も大変で……。だけど、すごく楽しい時間です。藝大生って作品づくりをめちゃくちゃしてたり、私の学部だと音楽活動をやっていたりする学生が多いので、まわりから刺激を受けることもあります。
まだまだ先の話ですが、いつか自分の劇場をつくりたいという夢があるので、もっといろんな劇場に行ったり、いろんな人に意見を聞いたりしていきたいです」
Q5. 同世代の人たちに伝えたいことは?
「舞台を観に行くとか劇場に行くと聞くと、どうしても敷居が高く思えてしまうというか、ハードルを感じてしまうことがあると思うんです。だけど、本来芸術って、すべての人に開かれているもので、劇場もすべての人に開かれているべき場所であるべき。
観に行くきっかけはなんでもありだから、ぜひ一度、劇場に行ってみてほしいです! 推しが出ているとか、この劇場に行ってみたいとか……そのくらいでいいと思っていて。オタクじゃなきゃいけないとか、お金持ちじゃなきゃいけないとか、そんなことはありません。
韓国に行って気づいたのは、日本の劇場がいかにクローズドな空間になっているかということ。その敷居を少しでも下げて、誰もが観劇しやすい空間づくりを、これからも研究していきたいと思っています」
中村日向子のプロフィール
年齢:19歳
出身地:東京都千代田区
所属:東京藝術大学音楽学部 音楽環境創造科
趣味:舞台鑑賞
大切にしている言葉:文化というものは水や空気と同じように人間になくてはならないものだ(キリル・セレブレニコフ)
中村日向子のSNS
【劇場に関するアンケート結果】
みなさま、ご回答いただいてありがとうございました。結果を共有させていただきますね。(下に続く) https://t.co/vQb4rrkrko pic.twitter.com/6egtFM108P— ひなこな (@hinako_5_) October 1, 2021
Photo:Eri Miura
Text:Ayuka Moriya