「10代のうちにたくさん映画を見て、インプットしておいたほうがいいよ」なんてよく言われるけど、過去作から新作まで、たくさんある作品の中から、どれを選べばいいかわからない……という10代に向けてスタートしたこのシリーズ。
今回も、19.7万人のTwitterフォロワーを持ち、「人生を豊かにする映画」を発信している映画アクティビストのDIZさんに、現在配信中の作品について、ひとかじり語ってもらいましょう。
今回は、新作が出るたび映画好きを唸らせてきた、話題の映画スタジオ「A24」が手掛けた作品のなかから、隠れた名作を5つご紹介します。あわせて、公開予定作品からも、DIZさんオススメの2作品の先行レビューもお届けします！
唯一無二の世界観にハマる人続出！「A24」の隠れた名作
映画アクティビストのDIZです。みなさんは、映画ファンを虜にする作品を創り続けている「A24」スタジオを知っていますか？ 2012年に設立して以来、アカデミー賞をはじめとする映画賞で必ず話題になり、斬新なテーマや映像表現で、唯一無二の作品を世に送り出し、観るたびに新しい扉を開いてくれて、映画ファンの心をわしづかみにする“運命の映画”が目白押しなんです。
今回は、Prime Videoで観られて、衝撃の出会いを約束してくれる、「A24」製作／配給作品をまとめてご紹介。自分の可能性がもっと広がる映画との運命的な出会いを楽しんでください！
パーティで女の子に話しかけるには
1977年のロンドン郊外を舞台に、内気だけどパンクが大好きで、何者かになりたい少年・エン（アレックス・シャープ）が、ある日、偶然出会ったキュートな宇宙人（エル・ファニング）にひと目惚れ。彼女に地球の素晴らしさを教えるうちに、恋に落ちるふたり。しかしその48時間後には、彼女は遠い惑星に帰らなければならないという切ないタイムリミットが迫る……。ずっと一緒にいるためにパンクな逃避行が始まる、最高にピュアな異次元青春ラブストーリー。
遠い惑星からやってきた、かわいすぎる宇宙人・ザンを演じたエル・ファニングのUKロックファッションや、作品を彩るパンクロックミュージックも最高ですが、斬新で刺激的で切なくて、「大人が決めたルールなんてクソくらえ」と、もがいて走り出すふたりの宇宙レベルの恋は、忘れられないときめきを与えてくれます。
複製された男
トロントの大学で歴史講師を務める主人公・アダム（ジェイク・ギレンホール）は、何気なく観た映画のなかに、自分とまったく同じ顔をした、自分にそっくりの俳優がいることを発見する。彼が実在するのかを確かめるためにコンタクトを取り、1日だけお互いが入れ替わることを提案するが、運命が思わぬ方向へと狂っていく……。
ノーベル賞作家、ジョゼ・サラマーゴの原作小説を『メッセージ』や『ブレードランナー 2049』『DUNE/デューン 砂の惑星』などを手がけたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が映像化した、度肝を抜かれる難解サスペンススリラー。
もし、自分とそっくりの人間に出会ったら、あなたはどうするでしょうか。全編を貫く不穏なムードや、緻密な映像とカオスな物語が完璧に溶け合った独特な世界に引きずり込まれて、戦慄のラストは放心状態になるかもしれません。真実に辿り着くための考察も楽しめて、観た後は必ず誰かと語り合いたくなるような、余韻に深く浸れる作品です。
ウィッチ
『ライトハウス』でその名を世界に知らしめた、「A24」発の鬼才、ロバート・エガース監督のデビュー作。第31回サンダンス映画祭で大絶賛され、監督賞を受賞した、A24ホラー好きには見逃せない注目作品です。“魔女”をテーマに、じわじわと心を恐怖で蝕む演出に、ゾワゾワが止まらない……。そしてラストは鳥肌が止まらない、イヤホン鑑賞必須の驚愕展開も。
1630年のニューイングランドを舞台に、家族に魔女だと疑われ、迫害されてく娘を、アニャ・テイラー＝ジョイが演じます。「植民地時代を舞台にホラーを作りたかった。過去の悪夢を描きたい。」と語る監督だけに、時代背景を徹底的にリサーチし、暗黒時代のホラーを見事に作り上げています。
来年の1月には、心震える壮絶な復讐劇を描く、同じくアニャ・テイラー＝ジョイが出演する新作『ノースマン 導かれし復讐者』の公開が控えているので、今のうちにチェックしておくのがおすすめです。
▶ ウィッチ
フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法
フロリダのディズニー・ワールドのすぐ近くにある安モーテルで、その日暮らしの生活を送る母と娘の日常を6歳の娘の視点で描いた作品。モーテルの管理人を演じたウィレム・デフォーが、第90回アカデミー賞助演男優賞にノミネートされるなど、数々の映画賞でも絶賛された秀作です。
今作は、個人的にもぜひ多くの人に観てほしい！ ラストの描写がかつてないほどすさまじく、ほとんどの映画は、観終わったときに劇中で提示された社会問題など忘れて日常に戻ってしまうけれど、この作品は映画を見終わって現実に戻った後も、ずっと観客に問い続ける、心に残るラストを突きつけてきます。好奇心旺盛でポップでカラフルに世界が輝いて見える6歳の少女の目線から知るアメリカの真実は、きっとあなたの心を打ちのめすはず。「A24」ならではのバランス感覚に優れた、見逃せない作品です。
ロスト・エモーション
人類史上最大の戦争によって、地球の陸地のほとんどが破壊された近未来を舞台に紡がれる、巨匠リドリー・スコットと世界的建築家・安藤忠雄が創り出す、スタイリッシュなSFラブストーリー。生き残った者たちは人類を滅亡させる最大の原因は感情だと考え、人類を存続させるために、遺伝子操作を施した感情のない人間の共同体「イコールズ」を作り出します。彼らが暮らすユートピアは穏やかで完璧に見えるけれど、そこには愛も存在しない……。
感情を“発症”してしまった者は「欠陥者」と診断され、社会から隔離されてしまう。そんな世界で、恋に落ちてしまうクリステン・スチュワートとニコラス・ホルトの、切なくも美しい運命の選択が、さまざまな感情とともに、生きることの素晴らしさを再確認させてくれます。
また、ドレーク・ドレマス監督の「安藤忠雄の建築物を使いたい」というこだわりにより、淡路夢舞台や大阪府立狭山池博物館、長岡造形大学など、日本各地でロケを行った、近未来都市の世界観にも注目。思わずロケ地めぐりをしたくなるほど、スタイリッシュで美しい世界が堪能できます。
【おまけ】これから公開のおすすめA24作品
MEN 同じ顔の男たち
『エクス・マキナ』『アナイアレイション -全滅領域-』のアレックス・ガーランド監督の最新作が、2022年12月9日に公開決定。
夫の突然死を目撃した主人公（ジェシー・バックリー）が、心の休息を求めてひとり旅に出た旅先で、何者かに追われていることに気づき始めます。さらに旅先で親切にしてくれる数々の男性の顔が全員同じで……。次第に不穏な出来事が連鎖しはじめ、得体の知れない恐怖が彼女を襲う。あらすじだけでもゾワゾワするプロットが、まさに「A24」ホラーらしいですね。
私はひと足先に鑑賞しましたが、最初の感想は「マジで吐きそう……」でした。アレックス・ガーランド監督の作品はどれも人智を超えるラストですが、今作も期待を裏切らないトラウマを植え付けられるに違いありません。
Everything Everywhere All At Once
世界中でA24史上最大のヒットを記録している超絶大傑作『Everything Everywhere All at Once』（原題）。ついに日本公開が2023年3月に決まりました！ どれだけ待ち望んでいたか……。待ちきれずにひと足早く鑑賞してしまいましたが、一生に一度しか出会えない、後にも先にも存在し得ない、すごすぎる映画なので、映画館で観るべきです。
マルチバースを描く作品は、最近の映画業界でトレンドなのか、目にする機会が増えましたが、『Everything Everywhere All at Once』が描くマルチバースは、映像のすさまじすぎるクオリティ、物語やキャラクターの設定や構成など、どの作品とも違います。息をする暇もなく、脳みそが溶けそうなほどの衝撃の連続で、観終わった後は、すべてを悟ってしまうかも。人類の可能性、映画の可能性、自分の可能性……そのすべてが開かれる、史上最高の映画体験になるかもしれません。
「A24」の作品は、話題作に限らずどの作品も、唯一無二の魅力と輝きとメッセージが込められた作品ばかり。直感で選んだものでも、知らず知らずのうちに凝り固まっている固定観念をぶち壊してくれること間違いなし！
さらに「A24」は、オリジナルのアパレルやグッズ、ファンクラブも展開していて、「映画を人生に取り入れて人生を豊かにする」を体現している姿勢も大好きです。これからも、映画のみならず、さまざまな面で革命を起こし、最先端を突き進む「A24」から、目が離せません。
DIZのプロフィール
映画アクティビスト。ひとりでも多くの人に映画の素晴らしさを伝えるために、フリーランスで活動している。体験型の映画イベントを主催したり、配信サービスのSNS企画・編集やコピーライティング、さまざまな作品の評論を寄稿したりと、枠にとらわれずに活動している。
Twitter：@DIZfilms Instagram：@diz2049
Text：DIZ
