世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、タイの街中を走るトゥクトゥクに掲示された「K-POPアイドルの推し広告」の真相について迫ります。
トゥクトゥクにK-POPアイドルの広告!?その裏には…
「トゥクトゥク」とは、タイの街中を走る、主に観光客が利用する三輪タクシー。そのカラフルな見た目からも、タイを象徴する乗り物となっています。
このトゥクトゥクには広告スペースがついているのですが、近年、韓国のアイドルグループのメンバーの広告が貼られることが増えてきました。実はこの広告、所属事務所などのオフィシャルなプロモーション広告ではなく、ファンが“推し”を応援するために出している、自主的な広告。いわゆる“推し広告”とよばれるものです。
推し広告の掲載場所に変化
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— Marketing Oops! (@MarketingOops) December 3, 2020
近年、世界的な人気を得ているK-POPアイドルグループ。ファンらがお金を出し合い、街中や公共交通機関などで好きなアイドルの広告を出す“推し活”が世界中に広がっており、東南アジアのタイにおいても、例外ではありません。
実は数年前までは、首都バンコクの高架鉄道や地下鉄構内に、推しの誕生日に合わせてファンが広告を出し、それと一緒に写真を撮る姿が多く見られました。しかしいまでは、公共交通機関では、こうした光景があまり見られなくなっています。
JUNGKOOK’s birthday ads being displayed in Thailand’s famous “Tuktuk”! pic.twitter.com/oZR7cTWzej
— JUNGKOOK DAILY ⁹⁷𝄞ʲᵏ🦋♍️ (@Daily_JKUpdate) August 28, 2021
それに替わって、街中でよく見かけるようになったのが、トゥクトゥクに出されたK-POPアイドルの広告です。タイ人メンバーがいる「BLACKPINK」や「GOT7」、そして世界的人気を誇る「BTS」メンバーらの広告をよく見かけます。
若者がトゥクトゥクを選ぶ理由とは?
なぜタイのK-POPファンたちは、高架鉄道や地下鉄の構内の替わりとして、トゥクトゥクに広告を出すようになったのでしょうか。
K-POPのファンで、タイ人のビアさん(31)は、「高架鉄道や地下鉄の運営会社は軍事政権寄りなので、広告を出したくない」といいます。
タイでは、2014年5月に軍事クーデターが起き、陸軍司令官だったプラユット氏が首相の座につきました。一方、多くの若者は軍事政権に納得しておらず、2020年にはコロナ禍の最中にもかかわらず、数万人が集まる大規模な抗議集会が相次ぎました。
こうした事態の中、公共交通機関はデモの規模拡大を防ぐために一斉に運休。そうした動きが「政府寄り」と捉えられ、若者から批判されることとなったのです。
そこで、広告の掲示場所として高架鉄道や地下鉄構内の替わりとなったのが、トゥクトゥクだったのです。
またトゥクトゥクは、コロナの影響で利用する観光客が減少しており、そうした運転手らの生活を支援する目的も含まれています。
前出のビアさんは、「大企業よりも、生活に困っている市民に広告費を出したいと思う若者は多い」と主張します。タイでは近年の経済発展の裏で、貧富の差が広がり続けており、こうした状況に対しても、若者らが不満を募らせています。
K-POPのファングループの存在感は、こうしたトゥクトゥクへの支援以外にも広がっています。デモが相次いだ2020年には、各K-POPグループの非公式ファンクラブが、フェイスブックやツイッターなどでデモ隊の支援を呼び掛けをしました。これによって、同年10月時点で、1,000万円以上もの資金が集まったことも話題となりました。今後もタイでは、K-POPファンらがSNSを通じて、社会的な影響力を強めていきそうです。
Text:Risako Hata