「10代のうちにたくさん映画を見て、インプットしておいたほうがいいよ」なんてよく言われるけど、たくさんの作品の中から、どれを選べばいいかわからない!という人たちに向けて、スタートしたこのシリーズ。
今回も、Twitterフォロワー18.5万人を持ち、「人生を豊かにする映画」を発信している映画アクティビストのDIZさんに、現在配信中の作品について、ひとかじり語ってもらいましょう。
9月に入ってもまだまだ暑い日が続いていますが、少しでも秋らしさを感じられるように、「芸術の秋」にちなんだテーマでセレクトしてもらいました!
まるでアートを観ているかのように美しい映画5作
映画アクティビストのDIZです。今回は、世界観や映像が美しく、10代の感性が磨かれるような作品をセレクトしてみました。物語とリンクした衣装やヘアメイク、インテリアなどにも注目して観ると、作品をより自分ごととして深く感じられるもの。細部まで監督のこだわりが散りばめられた、心が揺さぶられる傑作なので、きっと何度も観たくなるはず。
①ラストナイト・イン・ソーホー
『ベイビー・ドライバー』など、音楽とファッションが好きな人にはたまらない映画を創り続けるエドガー・ライト監督の、4年ぶりの新作。60年代のロンドンへの憧れと、ホラー映画への愛を込めた、タイムリープ・サイコホラーです。
夢を叶えるため都会に出て来た主人公が、夢の中で60年代に生きる女性とシンクロし、思いもよらぬ闇に巻き込まれていく……。そんな予測不可能な展開に加え、W主演のトーマシン・マッケンジーとアニャ・テイラー=ジョイが着こなす、時代を超えて輝き続けるファッションから目が離せません。彼女たちの心情を表現した60年代の名曲にも注目すると、より一層作品を楽しめます。
②燃ゆる女の肖像
第72回カンヌ国際映画祭で脚本賞とクィアパルム賞を受賞した、全編が絵画のように美しいラブストーリー。
18世紀のフランスを舞台に、望まぬ結婚を控える貴族の娘と、彼女の肖像画を描くことを任された女性画家。キャンパス越しに見つめ合うふたりは、いつしか燃えるような恋に落ちて……。しかし、絵が完成すれば永遠の別れが待っているという、切なすぎて胸が張り裂けてしまいそうな物語。
ひとり美術館を訪れて、ふと偶然見つけた名画に想いを馳せるような、繊細な映像美で描かれた儚くも美しい愛の物語に触れ、一生忘れられない心を揺さぶるラストをぜひ体感してほしいです。
③フレンチ・ディスパッチ
アートな映画といえば、ウェス・アンダーソン監督作品はハズせない。監督の記念すべき長編10作目『フレンチ・ディスパッチ』は、まるで大好きな雑誌のページを、心を躍らせながらめくっていくような、予想外で新感覚の作品です。
20世紀のフランスの架空の街にある「フレンチ・ディスパッチ」誌の編集部を舞台に、超豪華キャストによる4つの短編で構成されたオムニバス作品で、一度観ただけでは語りきることができないほどの情報量やカメオ出演の発見は、おうちでじっくり鑑賞するのにピッタリ。
どのシーンを切り取っても部屋に飾りたいほど完璧なウェスの世界は、観るだけで感性が磨かれるようで、最高の気分に。
④EMMA エマ
イギリスの女性作家ジェーン・オースティンによる名作小説を、夢のように美しい世界観と衣装で彩り、「クイーンズ・ギャンビット」のアニャ・テイラー=ジョイ主演で新たに実写化した作品。
一生結婚しないと決めている上流階級のお嬢さま・エマは、まわりの恋のキューピットになるのに毎日大忙し。そんなお節介なエマが、自分にふさわしい相手を見つけ、不器用ながらも自分の幸せをつかみ取るまでを描いた物語です。
第93回アカデミー賞で、「衣装デザイン賞」と「メイクアップ&ヘアスタイリング賞」の2部門にノミネートされたのも納得。すべての瞬間が“可愛い”にあふれている、観るだけで心満たされる映像美は必見です。
⑤美女と野獣
『美女と野獣』は誰もが知る世紀のラブストーリーとして有名ですが、フランス版の実写映画は、あまり知られていません。みんなが知っている『美女と野獣』のストーリーよりも、ダークで切なく、予想を裏切る展開も。実はフランス版実写映画のほうが、原作により近いストーリーになっているので、ディズニーの作品が好きな人も、観くらべてみるものオススメ。
まるで“観る美術館”のように計算された色彩や映像美、セットの美術、衣装など、細部に至るまで息をのむほど素晴らしく、ダークで甘美な世界に酔いしれてみてください。
映画はたったの2時間ほどで、現実とはまったく別の世界に連れていってくれる、魔法のような存在。主人公に感情移入しながら、独特の世界観に浸ることで、感性が磨かれて、当たり前だと思っていた毎日の景色も見え方が変わるでしょう。たくさんの映画に触れて、心の動きや感情をじっくり味わうと、毎日がもっと豊かで素晴らしいものになっていくのでは、と思います。
DIZのプロフィール
映画アクティビスト。ひとりでも多くの人に映画の素晴らしさを伝えるために、フリーランスで活動している。体験型の映画イベントを主催したり、配信サービスのSNS企画・編集やコピーライティング、さまざまな作品の評論を寄稿したりと、枠にとらわれずに活動している。
Twitter:@DIZfilms Instagram:@diz2049
Text:DIZ