interfm(TOKYO:89.7MHz)で放送中のラジオ番組「CLUB CEO」(毎週日曜日6:30〜7:00)。ビジネスの第一線で活躍する経営者をゲストに迎え、その事業内容に迫りつつ、新しい価値観をもつZ世代たちと対話をしながら、これからの社会や経営について一緒に考え学んでいくラジオプログラムです。
この番組に登場するZ世代は、以前、「気になる10代名鑑」に登場してくれた10代の方々。Steenzでは、放送を聞き逃してしまった人たちへのテキストコンテンツと、放送にはのらなかった独自のスピンオフコンテンツを展開していきます。
今回のゲストは、スマートスキャン株式会社代表取締役社長、濱野斗百礼さん
五十嵐:「CLUB CEO」、今日のゲストは医療業界に革命的なサービスをもたらしたスマートスキャン株式会社代表取締役社長、濱野斗百礼さんを迎えます。Z世代からは東京学芸大学2年生ののりかさんと、N高等学校3年生の中村凜さんにご参加いただきます。
すべての人の健康を願って。高度医療をもっと手軽に
五十嵐:まずは今日のゲスト、濱野社長のプロフィールをご紹介したいと思います。濱野さんは1969年3月生まれで、現在53歳です。学生時代はどのように過ごされたんですか?
濱野:学生起業をして、ツアーの会社と一緒に、女子高とか女子大学の前でチラシを配ってお客さん集めて、商売したりしていました。その活動を通して、いろんな大人たちとコミュニケーションすることによって、世の中を少しずつわかっていった時期ですね。
五十嵐:そんな学生時代を経て、大学卒業後、デジタルガレージの立ち上げに参画されたんですね。
濱野:学生のときに、日本にインターネット持ってきた伊藤穰一(Joi)が知り合いだったんです。何も考えないで、彼に誘われてデジタルガレージに入りました。「これからは検索エンジンの時代だ」ということで、「インフォシーク」を持ってきて、その営業を始めたのがスタートですね。
五十嵐:そこからキャリアを積み上げて、最終的には楽天の経営に入っていくんですか。
濱野:2014年に「楽天マーケティングジャパン」という、楽天がいろいろなメディアやサービスを持っている中で、それらの広告を販売するまとめ役の組織ができあがったんです。それとともに、インフォシークを中心としたメディアの事業と、リンクシェアというアフィリエイトの会社を買収して、その組織の日本の社長をやっていたので、一時期は部下が600人ぐらいいました。
五十嵐:そこからスマートキャン株式会社を設立されるんですね。会社について、簡単にご紹介をいただけますか?
濱野:はい。MRIとかCTって、なかなか気軽に受けることができないですよね。スマートスキャン株式会社では、みなさんに健康になってもらいたいという想いで、そのような高度医療機器を使った画像診断を、すべての人たちに受けてもらえるような仕組みをつくっています。
のりか:病気を治すんじゃなくて、予防するほうに着目しているのがすごく素敵だと思います。
五十嵐:私もスマートスキャンさんで受診したことあるんですが、今までの脳ドックとは全然違いました。時間と費用があまりかからないし、撮った画像が瞬間的に自分のスマホに届いて、「ああ、こんなふうになっているんだ」って、自分で見ることができるんです。今までは、事後診察になると、結局撮った画像は病院に置いていって、自分の手元に残ることはなかったので、画期的だなと。
濱野:そうですね。日本での脳ドックの平均価格が4万3,000円なので、そこまでかけて頭を撮る人って、あんまりいなかったんですよ。ただ、脳血管疾患というのは、死因の第3位と言われているので、本当はしっかり頭も見なきゃいけないんです。
五十嵐:実際にスマートスキャンで脳ドックを1回受けるのに、税込みで1万9,250円。それ以外にも、CTで肺や心血管、体脂肪が分かる検査も手軽な値段で受けられるんですよね。
濱野:そうです。CT肺・心血管ドックはいま、税別1万2,000円でやっています。CTを撮ったとき、お腹の体脂肪検査も、プラス2,000円で受けられるというかたちですね。これらすべて、見える化を大事にしています。
特に胸部のCTに関していうと、健康診断や人間ドックで撮る胸部レントゲンと、胸部CTで体の断面を100個ぐらい切って撮ったときの見え方は、全然違う。CTだといろんなものが見えてくるので、病気の早期発見につながります。
五十嵐:企業理念を見ると「病気にならない世界を作る。“Create a World Free of Disease.”」とありますが。
濱野:会社を立ち上げたときは「高度医療機器を使った画像診断をすべての人たちに」が企業理念だったんです。それから4年と半年が経って、MRIやCT画像を通して自分のことを理解することが、健康につながっていくなと思って。
例えば、MRIやCTで撮った頭の画像に白いもやや点が出ていたら、治そうと思いますよね。行動変容を起こしやすいんですよ。何かが見えてしまったら、やっぱ治したい。ただ、その段階ではまだ未病なので、食べ物とか、睡眠とか、運動とか、生活改善することで健康になっていく。やっぱり画像は強いんですよ。
これによって病気になる人が減ってくれれば、病院にかからなければいけない人に対して、ちゃんと医療費が払われる世界というのが維持ができるし、そういう世の中になってくれたらいいなとは思いますね。
人の命を救うため・・・未経験の医療分野へ挑戦できた理由
五十嵐:世界初という言葉もホームページに記載されていました。
濱野:そうですね。実は日本は、MRIを世界でいちばん多く保有している国なんです。でも稼働率が悪い。だから、そこに目をつけて、スマート脳ドックをやれる仕組みをつくりました。クラウドに撮影した画像を上げて、先生が診るという仕組みをつくっているのですが、世界中の先生がブラウザで診断できるようになっているんです。
病院だと、たくさん画像を撮ったら、先生をたくさん雇わなきゃいけないのでけっこうコストになってしまうけど、それをクラウドに上げて、変動費に変えることによって仕組み化しています。
五十嵐:そもそもなぜこの事業をやろうと思われたんですか?
濱野:今から10年前の話なんですが、関越自動車道で運転中のドライバーさんが倒れてしまって、多くの方々が亡くなったという痛ましい事故があったんです。当時、MRIを持っている先生がたまたま楽天に来て、「運転従事者、トラックとかバスとかタクシーの運転手さんの健康診断って、首から下しかやっていないから危ない。脳ドックが必要だ」と言ったんです。
そんな話があって、1万円で脳ドック受けられるという枠を、楽天会員に20枠だけいただいて、テストマーケティングをしてみたんです。それがものすごいニーズがあって。件数でいうと、2日間で500人ぐらいの応募がありました。
そこで、脳血管疾患について調べていったら、死因の第3位ですし、介護率も非常に高いし、必要だろう、と。どうせ起業するのなら、ここに目をつけようと思ったんです。
五十嵐:やっぱりベンチャー起業家、社会事業家というのは、無から有を生み出す、このときの苦悩というのは、聞けば聞くほど尽きないだろうなと思いますが。
濱野:まあ本当に苦しいですね。今でも本当に、予約が止まる夢を見ますから。でも、その先には喜んでくれる人たちがいます。もう既に、7万5,000件も撮っていますが、1%強ぐらいの人の命を救っているという実績があるんです。自分の友達も含めて、人の命を救うことができたので、本当によかったなという感じですね。
五十嵐:東京学芸大学2年生ののりかさん、ここまでいろいろ濱野さんからお話を伺いましたが、どうでしょう?
のりか:医療系の事業なので、理系で頭良くないとできないイメージがあります。濱野さんは大学の頃から医療系の勉強をされていたんですか?
濱野:まったくしていないですね。本当にしていないので、やれちゃったんだと思います。医療の世界を知っていたら「それは無理だろう」とか「ご法度だろう」みたいなところがあるかもしれないけど、知らないからできちゃう。だから逆に言うと、学生のほうが、知らないからやれてしまうというのはあるのかなと。大人になってからやると、すごい怒られるんだけど、若いころにやっているうちは、怒られないから。
中村:医療について知らないとなったときに、実現するまでの道筋が想像しにくかったりしそうですけど。
濱野:それは逆になかったんです。前にいた楽天で、散々いろんなものをつくってきているので、やろうと決めたら最後までできる力が身についているというか。実現までに必要なものに対しても、例えばカスタマーサポートが必要だといえば、そういったチームをつくれたりするんですよ。
中村:では、楽天のときの経験が生きたんですね。
濱野:そうですね。ハンズオンですべて自分でやっていたので。逆に、いま足りないものは何かというと、人に任せられないことですね 。自分でこだわり過ぎてしまうので。でもやっぱり誰かに任せてやっていくというのも必要だろうと思います。
経営者から見たZ世代が活かすべき優位性とは?
中村:僕も今、イベントをつくるのを高校生たちと一緒にやっているんですけど、高校生で「イベントやったことがあります」という人が周りにいないし、僕がどんどん開拓していって、それから人に任せていかなきゃいけないんです。でもそこでこだわり過ぎてしまうと、任せられなくなってしまったりとか、任せた相手に対していろいろ言ってしまったりというのがあるので、すごく共感できましたね。
濱野:人に任せずに、自分がやり過ぎちゃうと、今度はメンバーが考えなくなるんですよね。「じゃあ、社長が全部考えて」というふうになってしまう。そうすると、会社は大きくならないです。ただ、やりすぎはよくないかもしれないけれども、やらないと人がついてこないというのもありますよね。
五十嵐:のりかさんは、教育について学んでいますよね。
のりか:はい。教育学部に通っています。私は教員になるための勉強じゃなく、生涯学習を学んでいて、学校教育じゃなくて社会教育から教育にアプローチしたいなと思って入ったんですけど。
五十嵐:社会教育という重要なキーワードが出ましたが、濱野社長のような方は、社外教育を盛んに学んでこられたんじゃないかなという気もするんですが。
濱野:人とのコミュニケーションする機会が、小さいころから非常に多かったというのはあります。父親も母親も学校の先生なんですが、実家がたばこ屋兼駄菓子屋だったんですよ。祖父が店をやっていて。そこに近所のおじさんやおばさんたちがよく来ていたので、その会話に入って一緒にコミュニケーションしてました。だから、人と話すのは全然苦じゃなかったというのもあったと思うんです。
濱野:Z世代のふたりは、今10代じゃないですか。これから30年、40年、50年先とか、何か未来のことって考えています?
中村:常に考えているというか、不安でしかないところはあります。イーロン・マスクも言っていたじゃないですか。「人口が減っていて、もう日本なくなっちゃうんじゃない?」みたいな。生きるために頑張って働いている人も、けっこう身近にいっぱいいたりするので。ギリギリでしか生きていけなくなっちゃうのかなという不安はあります。
のりか:私は地方創生についても学んでいるんですけど、やっぱり人口の少ない限界集落が多いなと思ってます。核家族とかひとり親世帯とか、そういうのも増えて、子どもの居場所はないけど、親は親で、子どもを預けられないし、でも働かないとお金もないし……みたいな感じで、諸々の社会問題は、やっぱり人口が少ないせいだなと思います。
五十嵐:中村さんものりかさんも、人口も減って、日本はこの先どうなるのと不安に感じているんですね。でもおふたりは、これからその現実に直面して向き合わなきゃいけないですよね。
中村:社会をもう一回、ゼロからつくり直すかたちになればいいなと思いますよね。Z世代がある程度社会に出て、実績をつくって、40歳、50歳とかになったときに、その力で新たにできないかなと思ったりします。
濱野:おじいちゃん、おばあちゃんとか、僕ら世代も、別にそんな悪いものじゃなくて、自分たちが今まで築いてきた知恵だったりとか知識だったりとかを、Z世代の人たちに少しでも提供できたらいいなと思いますよね。
五十嵐:逆に若い人たちからの気付きもありますよね、我々も。のりかさん自身は少子高齢化に対してどうしたらいいと思いますか?
のりか:私は移民の受け入れかなと思いますね。たぶん世代によって感じ方が違って、私たちの代はこれから就職をするので、海外から頭いい人が流れてきたら「雇用枠が奪われそう」って言うかもしれないし、高齢の方は「治安が悪化しそう」とおっしゃりそうだし。
だから「もっと移民を増やして経済を動かさないと駄目だよ」って言ったとしても、なかなか合意ができなそうで、難しそうだなとは思いますけど。私が政治家になって変えていけたらなというふうに思ったりもします。
濱野:ぜひ、なってほしいですね。
次のゲストCEOは、世界で12万人以上の従業員を抱える富士通株式会社ジャパンリージョンCEOの堤浩幸さんをゲストにお迎えしています。radikoでは、タイムフリーで聞くことができます
CLUB CEOアフタートーク
Steenzだけの限定コンテンツとして、「CLUB CEO」の放送では聞けない、収録後のアフタートークを公開しています。放送とはひと味違う、Z世代のパーソナルな悩みや、活動に対するリアルな課題感を、ゲスト経営者にぶつけています。放送には乗せられない、ココだけの話が飛び出すかも!?
番組概要
番組名:CLUB CEO
放送局:interfm(TOKYO:89.7MHz)
放送日:毎週日曜日 AM6:30〜7:00
ナビゲーター:五十嵐彰(株式会社CMerTV代表取締役社長)
番組ホームページ:https://www.interfm.co.jp/clubceo