「気になる10代名鑑」122人目は、加藤路瑛さん(16)。感覚過敏の課題解決のため、「感覚過敏研究所」の所長を務めながら、着心地を追求した縫い目とタグのないアパレルブランド「KANKAKU FACTORY」をはじめ、感覚過敏で悩む人の問題解決に取り組んでいます。中学生で起業した加藤さんに、そのきっかけから、いまの社会についての思いを聞いてみました。
■加藤路瑛を知る10の質問
Q1. プロフィールを教えてください。
「千葉県出身の16歳です。高校に通いながら、株式会社クリスタルロードの代表取締役として、感覚過敏の方の課題解決をする事業に取り組んでます。
起業したのは中学1年生のとき。化学のカードゲーム『ケミストリークエスト』を考案した米山維斗さんが、小学生で起業したということを知って、『僕も起業してみたい、働いてみたい、社長になってみたい!』と思ったんです。親子起業というかたちで、12歳で登記しました」
Q2. 活動について教えてください。
「感覚過敏の課題解決を様々な方向からアプローチしています。例えば、マスクが痛くてつけられない人のための『意思表示カード』をつくりました。航空会社のスカイマークさんでは、マスクがつけられない人のためのシールを採用いただき、マスク着用が困難な搭乗者の方に配布晴れています。また、プラスチックの扇子で飛沫対策をする『せんすマスク』もつくりました。こちらは成田空港や病院で採用されています」
感覚過敏や病気をなどの理由でマスク着用が難しい搭乗者の方に、スカイマークさんは感覚過敏研究所デザインのシールをお渡しされています。空港カウンターと全航空機に今も用意くださっています。マスク着用にご不安がある方はカウンターでご相談ください。2020年から変わらずに運用くださっています。 https://t.co/zwSMLgAay6
— 感覚過敏研究所 (@kabinlab) May 10, 2022
他にも、タグなしで縫い目が外側という、着心地を追求したアパレルブランド『KANKAKU FACTORY』も立ち上げました。こちらは今年の3月に有楽町マルイでPOP UPを開催しました!」
Q3. 何を大切に活動していますか?
「『誰かにとっての快適は、誰かにとっての不便であり、多様性はそれらの矛盾も包括すること』を常に意識しています。この世の中に存在するほとんどの課題って、解決すると別の課題を持っている人がつらくなる現状があると思うんです。
そんな中でも僕は、矛盾を生まないようなアプローチをしていきたいなと考えています」
Q4. 幸せや生きがいを感じる瞬間は?
「新しい挑戦をしたり、ものをつくったりしたときに、『ありがとう』と伝えてもらえたときです。自分の活動が誰かの役に立っていると思えるときがいちばん嬉しいし、これからも続けていこうと思えます。
あと、飼っている猫と一緒にいる瞬間も、癒されて幸せですね(笑)」
Q5. 趣味はありますか?
「ゲームです。勉強や仕事の合間に、気分転換がてらによくやります。最近は『原神』という、短時間でできるゲームにハマってます」
Q6.生きるうえでのポリシーがあれば教えてください。
「『いまを諦めない』ことです。僕は小さいときから『働きたい』って気持ちが強かったんですけど、『まだ子どもだから』とか『大人になってから』とか、そんな言葉で諦めてしまってました。でも、いろんな理由をつけて後回しにしてたら、いつまで経っても自分のやりたいことを実現できないと気付いたんです。やりたいと思ったらすぐ、後悔しないようにやるっていうのが僕の生き方です」
Q7. 社会が「こう変わればいい」と思うことは?
「もっと、他人に寛容な人が増えたらいいなと思います。人が大切にしている価値観やつらさって、目に見えないけど誰しもが持っているもの。マスクをしていない人を見かけたら『なんでマスクしていないの?』ではなく『何かしらマスクができない理由があるのかな?』と考えるような寛容さを、みんなが持てたらいいなと思います」
Q8. 最近、新しく始めた挑戦はある?
「新規事業として、感覚過敏の方に向けた、衣服の生地開発を始めました。繊維商社の瀧定名古屋株式会社と信州大学繊維学部と一緒に取り組んでいます。
あと、これまでになかった感覚過敏を把握・診断できるツールの開発に挑戦中です。感覚過敏はあくまで病名ではなく症状。体調が悪くなっても、病院で『感覚過敏』と診断されないんです。僕自身も保健室の先生から聞いて初めて感覚過敏について知って、これまでの症状の原因がわかってすっきりしたので、自分でも感覚の過敏さを把握できるツールを開発したいんです」
Q9. 今後の展望を教えてください。
「このまま、感覚過敏の課題解決の道を突き進みます! いま取り組んでることに加えて、大学との研究も本格的に進めていきたいです。感覚過敏をコントロールできる方法を編み出すことがゴールですね」
Q10. 同じ時代を生きる10代にメッセージをお願いします。
「年齢を理由に諦めることなく、挑戦しましょう! 本当にやりたいことがあるなら、後回しにするのはもったいない。やりたいと思った瞬間にぜひ挑戦してみてください」
■加藤路瑛の今日のファッション
「いつも自分のブランドの服を着てます。僕が持ってる服の中で、いちばん着ていて快適なので。これから肌着もつくりたいですし、まだまだ服を通して解決できることはあると感じてます」
■加藤路瑛のSNS
★HP(感覚過敏研究所)
Photo:Eri MiuraText:Tomoka UendoEdit:Takeshi Koh