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「読モバンドと言われるのが嫌だった」SILENT SIREN山内あいなが振り返る、新たな道を切り拓く苦楽

「読モバンドと言われるのが嫌だった」SILENT SIREN山内あいなが振り返る、新たな道を切り拓く苦楽

前回のインタビューでは、音楽活動を始めた10代を振り返り、「ときには休むことで、自分の本当に好きなものが見えてくる」と話してくれた山内あいなさん(33)。

SILENT SIREN山内あいなが活動休止について語る。「休むことは終わりじゃない」
SILENT SIREN山内あいなが活動休止について語る。「休むことは終わりじゃない」
シリーズ「あの人に聞く、“私の10代”」。今回迎えたのは、ガールズロックバンド・SILENT SIRENのベーシストで、絵本作家の顔も持つ山内あいなさん(33)。 ジャンルの異なるファッション誌で読者モデルをしていたメン […]
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今回は、読者モデルとして活躍した10代の思い出、そして前代未聞の「読者モデルが集まったバンド」であったSILENT SIRENが直面した苦悩や葛藤について、赤裸々に明かしてくれた。

山内あいな。1988年7月3日生まれ。株式会社SAYN取締役。SILENT SIRENベース担当。2019年キャラクター絵本出版大賞コンテストに入賞し、絵本作家デビュー。愛称は「あいにゃん」。

髪も服もセルフ。だからこそ「読者モデル」は楽しかった

SILENT SIRENのひとつの大きな特徴として、メンバー全員が“読者モデル”(一般読者の代表として誌面に登場するモデル)出身であることが挙げられる。山内さんも、デビューする以前から、ファッション誌『mina』をはじめ、さまざまな雑誌で“読モ”として活動していた。

「読モになったきっかけは、原宿をぷらぷら買い物してたら、ヘアカタログに出演するモデルを探していた美容師さんに声をかけられたこと。高校3年生のころかな。そこから、雑誌のスナップとか『カバンの中身公開』みたいな企画にも呼んでもらえるようになって」

事務所のマネージメントのもとで活動するモデルとは、立場が異なる読者モデル。扱いの違いなどに不満を漏らす人も中にはいるというが、山内さんは読者モデルだからこその楽しさを見出していた。

「プロのモデルさんだったら、撮影現場で出された服を、なんでもきれいに着こなさなきゃいけない。でも、読者モデルは、基本的に服も髪もぜんぶセルフ。だからこそ、コンプレックスをうまくカバーして、自分のなりたい姿を見せられる。私は、スタイリストさんやヘアメイクさんがついてくれる現場でも、『ぜんぶ自分でやりたい!』っていう感じでした。

そうやって、自分の好きなもので着飾って、自分のスタイルを発信することで、自信が持てるようになったんです。『私はこうです!』って、胸を張って言えるようになれたのは、読モをやったおかげだと思います」

この日の取材にも、髪型・服装ともにセルフでお越しいただきました。

自分たちでは“読モバンド”なんて、言ってなかったし、言いたくなかった

読者モデルの活動と並行して、たくさんのアルバイトを経験していた山内さん。アパレルショップ、お好み焼き屋、お寿司屋、ティッシュ配り……『とにかくなんでもやってみたい』と好奇心旺盛だったそうだが、最後のアルバイト先となった原宿のカフェで、SILENT SIRENのメンバーと出会い、バンドとしてプロを目指すことに。

「結成した当初から、ボーカルのすぅ(吉田菫)が所属していた事務所に面倒を見てもらうことになって。『こんなにヘタなのに、ありがとうございます!』って感じでした」

そう感謝を口にする一方、メジャーデビューするにあたっては、こんな大人な問題に直面することもあったよう。

「本当はみんな、『読モバンド』じゃなくて、『アーティスト』になりたかった。だから、『読モバンド』っていう言葉自体、自分たちでは言ってなかったし、言いたくなかったんです。

でも、技術は全然ヘタだったし、どうやってバンドとして売り出すかっていうときに、太文字になるキーワードが必要で。そこで、事務所と話し合うなかで『読モバンド』っていうのを出していこうとなって。だから、デビューシングルの表紙も、雑誌のカバー風に撮影しました」

当時の自分たちにとって100%納得いく形ではなかったものの、順調に人気バンドへの道を進み始めたSILENT SIREN。『読モバンド』だからこそできた経験と、一方で、だからこその苦悩があった。

東京ガールズコレクションのような大きなファッションショーをはじめ、いろんなファッション系のイベントでライブをさせてもらう機会がありました。それはきっと、メンバーが読モだったからこそできたことだと思うので、恵まれてました。

でも『読モ』を掲げているからこその、批判や偏見も少なからずあって。『読者モデルだけやってればいいのに』、『本当に演奏しているの? 音源じゃない?』とか……。まあ、実際に技術的に至らないところも多くあったとは思うんですけど」

そんな心無い言葉に、当時どう向き合っていた?

「私たち、見た目はガーリーな感じに見えるグループだったけど、みんなガッツがあったんですよ。だから、そういうことを言われたら、『じゃあ練習しまくろう! 深夜練やろう!』って感じで。『絶対見返そう』ってメラメラしてました」

新しい道を切り拓く心得。「半分は他人の意見を聞いて、半分は自分で答えを出す」

何度も壁に直面しながらも、SILENT SIRENの一員として、「読者モデル出身のガールズロックバンド」という新たな道を切り拓いた山内さん。誰もやったことがない道を進むうえで大切だと思うことを、10代に向けて教えてくれた。

「サイサイの曲は全部大好きだし、どれも大切だけど、正直に言えば、自分たちがやりたい曲だけをやっていたかと言われれば、そうではありません。サイサイに求められている『ポップな可愛さ』や『キャッチ―さ』を意識してつくられた曲もたくさんあるので。私たち、もともと暗い曲が好きで集まったメンバーなんですよ(笑)。自分たちの曲でいうと、『チラナイハナ』みたいなのが好みで」

メンバーと事務所の大人側とで、意見が割れることもあったそう。そしていま、こう思っているとのこと。

大人の意見は、半分は聞き入れて、半分は自分で答え出したほうがいいと思います。大人たちも、自分たちの経験を踏まえて、若い子を思って言ってくれている部分は多くあるので、そこは聞き入れる。実際、大人が導いてくれた曲で売れることも少なくなかったので、もちろん間違いではないんです。

でも、それに反抗したい10代の気持ちもわかる。やってみないとわかんないし。私たちも『やっぱり自分たちで選んでやればよかった』って思うこともあったから、半分くらいは、自分を信じる気持ちが大事なんじゃないかな

“読者モデル”の肩書きを背負った時代を思い返しながら、新しい道を開拓する難しさと、その心得を教えてくれた山内さん。次回はラスト。10代から好きなことを貫き続け、夢を叶えた山内さんに、夢と人生への向き合い方について聞いてみる。(第3回に続く)

Photo:Aoi
Text:Ayuka Moriya
Edit:Takeshi Koh

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Ayuka Moriya

エディター

1999年生まれ、秋田県出身。東京外国語大学 国際社会学部在学時よりライター・エディターとして主にインタビュー記事の執筆、ディレクションに携わる。Steenzでは、2021年ローンチ当初より「気になる10代名鑑」のコンテンツ制作を担当。

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