これまでの2回のインタビューで、圧倒的な量の「えっちな絵」を描いていた10代の思い出と、自身の作風を貫く理由を語ってくれた、イラストレーター・たなかみさきさん(29)。
第3回では、大人になったいまだからこそ伝えたい、10代へのメッセージをうかがった。
勉強は苦手。でも、数値化されない頭の良さもある
今年で30歳の誕生日を迎えるたなかさん。「いま、10代に戻ったとしたら、何をしたいですか?」と聞くと、「10代のころを思い出すと、気分が悪くなってくるんですけど……(笑)」と言いながら、こう続けた。
「10代に戻ったら、言動も何もかも、端から端まで修正をかけていきますね。軌道修正したいことばかり。特に当時の自分に伝えたいのは……『もうちょっと素直に、自分のままでいいんだよ』っていうこと。無理してクラスのギャルグループに入ろうとした時期もあったので、そんな、身の丈に合わないカッコつけ方をしなくてもいいんだよって」
View this post on Instagram
他にも、こんなことを伝えたいという。
「当時、勉強ができないのもコンプレックスでした。記憶力がなくて、普通に0点とか取ってたんです。正直、いまも全然割り算とかできなくて……。でも頭の良さ、悪さって、いろんなジャンルがあるっていうのを大人になってから知りました。だって、テストで0点をとっていた私がいま、深夜ラジオでリスナーのお悩みを聞いてますから。人生ってわからないものです。
学生時代って、勉強も運動も、評価が数値化されるものばかりだけど、大人になると数値化できないものが多い。私は数値化されないことが向いていたと思います」
失敗は悪いことではないけど、失敗したほうがいいなんて思わない
「年齢は気にせず、若い人とも趣味があえば一緒に遊ぶ」というたなかさん。いまの10代に対して、どんなことを思ってる?
「ネットが普及して何でも調べやすくなってるから、失敗しづらくなってるのかな、とは思うんですけど、それは失敗だらけの10代を送ってきた私からしたら、単純に羨ましいです。
『私みたいな恥ずかしい思いを、お前らもしてくれよ』みたいな(笑)。『なんでそんな素敵な10代を送ってるんだ!』っていうジェラシーがありますね」
「若いうちは失敗をしたほうがいい」「すぐ検索せず、まずやってみたほうがいい」……そんな、よく大人が口にする言葉には、違和感があるそう。
「失敗は、なるべくしないほうがいいんじゃないかな。もちろん、失敗で気づくことも多いし、失敗が悪いことばかりではないですけど、失敗するとトラウマでどんどん弱っていっちゃう気がするから。一方で、細かい失敗がないと、大きな挫折があったときにすごく大変そうだし、どちらもリスクはありますよね。
検索は……したほうがいいと思いますよ。すぐ検索するなって言う人もいるけど、その人たちも検索してるはずだし。検索をしてから自分で考えることだってできる。『ネットも他人が作ったモノ』と思えば、便利に活用できるんじゃないでしょうか」
10代を生き抜くために必要なこと
今回のインタビューで10代を振り返り、「ちゃんとここまで生きてきてよかった。大人になってから、人生がすごく楽しいと思う」と話すたなかさん。最後に、こんなメッセージを残してくれた。
View this post on Instagram
「自分や社会と向き合って、納得いかないときは、立ち止まって考える。周囲と違う考えや趣味を持っていたとしても、その違いに気づかないふりをせずに、そんな自分がいることを常に頭の中に置いておく。そうやって、本当の自分を大切にし続けてほしいなと思います。
時間はかかるかもしれないけど、『自分』というものが確立されると、集団にすり寄って馴染む必要もなくなりますし、結果的に他人とも良い関係が築けるようになります」
そのうえで、他人からの評価とも、上手に付き合うべきとのこと。
「SNSの時代で、良くも悪くも人からの評価がたくさん届いちゃいますよね。私は、せっかくいただいた言葉は、なるべく見るようにしています。でも、そのまま受け止めず、分解して取り入れていくことも意識してます。言葉は乱暴だけど、いいこと言ってるな、っていうこともあるし。
でもやっぱり大事なのは、自分の基準ですね。私が『すごくいい』と思って出したイラストが、SNSであまり『いいね』がつかないことも、けっこうあるんですよ(笑)。『自分の絵を自分で良いと思える』って、すごい幸せなことだなって思うんです」
3回にわたって、過去の恥ずかしい経験から自身のイラストのルーツ、そしていまの10代に対して思うことまで、赤裸々に語ってくれた。これからも、たなかさんのオシャレでちょっとえっちなイラストを見るたび、その裏にある芯の強さを思い出して、ますます好きになりそうだ。
Photo : Aoi
Text : Ayuka Moriya
Edit : Takeshi Koh