「気になる10代名鑑」の64人目は、Rick Shinmiさん(18)。サイボーグ化された植物『Cybotanic』の開発者で、卓越した技術を持つ17歳以下のクリエイターを支援するプログラム「未踏ジュニア」のスーパークリエイタに認定された。『Cybotanic』の誕生エピソードから、意外な趣味のことまで、語ってもらいました。
■Rick Shinmiを知る10の質問
Q1. プロフィールを教えてください。
「東京都出身の18歳です。サイボーグ化された植物『Cybotanic』(サイボタニック)の開発をして、昨年の12月、『未踏ジュニア スーパークリエイター』という、クリエイター支援プロジェクトに選出してもらいました」
Q2. 開発した『Cybotanic』について教えてください。
「見た目ではわかりませんが、植物の葉の表面に、電気信号が走っています。それを電極で拾って、シンセサイザーを演奏する信号へと変換して、植物に音を奏でさせているんです。
こうやってサイボーグ化された植物と人間で、テクノを共演しようという試みです」
【採択プロジェクト紹介】Cybotanic:サイボーグ化された植物。
「植物が生きている」ことを感じるために、テクノロジーの力で「植物の機能」を拡張するプロジェクトです。植物に流れる生体電位を電極で取得し、データを基に植物を人工筋肉で動かしたり、人間と共演します。https://t.co/OAOyYHOrc3 pic.twitter.com/Vvpizm4syS
— U-17未踏ジュニア (@mitoujr) October 22, 2021
Q3. アイディアのきっかけは?
「数年前に失恋をしたんですが、そのときに、たまたま入った花屋で見たハエトリグサです。見た瞬間、まさに心を奪われて。そのときに、植物と人間が、コミュニケーションすることができないかなって思ったんです。
前々から、植物の社会的立場は低すぎるという思いはあって。動物と違って、動く様子をハッキリ見ることができないから、植物が生きてることを、僕たちは認識しづらいんですよね。植物も生きているという事実を、今までにない方法で表現して伝えたいというのも、着想の起点です」
Q4. どうして音楽と掛け合わせたんですか?
「もともと音楽が好きでした。高校でもメタルバンドをやっているんです。会話以外のコミュニケーションの中で、音楽っていちばん感情をのせやすいと思うんです。言語が通じない人同士でも、音楽を通して感情を共有できる。
これってスゴイことだと思っていて、植物とやりとりできる言語はまだ存在しないけど、音楽なら通じ合えるかもしれないって考えたんです。実際に、植物が音を感じ取ることができるというのは、研究ですでに明らかになっていたので」
Q5. 創作活動の原動力は何ですか?
「小さいころから身近にLEGOがあって、イチから何かを作ることに慣れ親しんで育ってきたことが、ひとつの原動力かなと思います。
それから、もしも今死んでしまったら、自分は周りの人たちからどのように記憶してもらえるのかな……とずっと考えていました。だから、歴史上に自分の存在を証明できることをしたいと思ったんです。歴史に跡を残す方法はたくさんあると思うんですが、僕はものづくりをすることで、やってやろうと考えました」
未踏ジュニア、修了しました!半年前に「サイボーグ化された植物」というテーマでメンターの小室まきさん@MKnkgw に採択されて以来、人生の中でもこれほど楽しかった期間はないんじゃないかと思うぐらい最高のコミュニティの中で最高の時間を過ごすことができました!本当にありがとうございました! pic.twitter.com/1yy5v3HOHC
— Rick Shinmi₍₍⁽⁽🌱₎₎⁾⁾ (@rickshinmi) November 4, 2021
Q6. 影響を受けたものはありますか?
「ニルヴァーナというロックバンドのボーカルである、カート・コバーンが言った『”I’d rather be hated for who I am, than loved for who I am not.”(自分以外になった僕を好かれるくらいなら、嫌われたほうがいい)』という言葉を座右の銘にしていて。あと、彼の遺書に書かれていた『”Its’s better to burn out than fade away.”(徐々に消えていくくらいなら燃え尽きたい)』という言葉も大事にしています。
中学生のとき、これらの言葉に出会ったんですが、その瞬間に燃え尽きてもいいと思えるように生きようと考えるようになりました。『Cybotanic』の開発も、花屋さんでの一瞬の感情から始まったように、自分のやりたいことを躊躇しないというのが、僕の信条です」
Q7. 最近新しく始めた挑戦は?
「人間の意識を機械上にアップロードして、不老不死を実現するという試みに興味を持ち始めて、その実現のために必要な脳科学や機械学習の勉強を始めました。
不老不死の社会が訪れると、今ある政治や社会の仕組みは役に立たなくなると思っているので、不老不死に適した社会がどんな社会なのか……そんなところも、自分の手でデザインできたらな、と思っています」
Q8. 趣味はありますか?
「音楽はジャンル問わず好きです。ギターもベースも弾きますし、聴くのも大好き。メタルバンドでボーカルをやったり、シンセサイザーを自分でつくったりもしています。
特に好きなのはスウェーデンやフィンランドといった、北欧のメタルバンド。今日着ているのは『アーチ・エネミー』という、スウェーデンのデスメタルバンドのTシャツです」
Q9. 社会がこう変わればいい、と思うことは?
「もっと無関心になればいいなと思います。他人と同じことを求められるのは嫌ですし、だからといって、必ずまわりと違っていなきゃいけないのも窮屈。なので、僕は僕として放っておいてほしい。ポジティブな意味で他人に無関心な、『みんな違って、みんなどうでもいい』社会だといいなと思います」
Q10. 同じ時代を生きる10代にメッセージをお願いします。
「実は『Cybotanic』の開発を始める前、社会課題の解決に関する活動をしていたんです。まわりにいた人たちがきっかけで、イベントにも参加していたんですが、続けるうち自分のやりたいことじゃないと気付いて。
『社会のために』と動いていたけど、活動をしているうちに、自分よりも社会を大事にしているような気がしてしまい、心が疲れてしまったんです。社会課題の解決に取り組むことを否定したいわけではなく、自分を見失ってしまったので、辞めてしまいました。当時助けてくださった方々には、申し訳ないと思っています。
Z世代というと、メディアで扱われやすいのは、課題解決のために行動しているという側面が多い。ですが、ただ自分の『好き』を選んで突き進む生き方も素晴らしいと、僕は思います」
■Rick Shinmiの今日のファッション
「中学生のころからずっとこの組み合わせが多いです。洋服選びを迷うのは面倒なので、安定した組み合わせを一個持っているとラク。黒の中のエンジ色がアクセントカラーでお気に入りです。バッグは父から譲り受けた30年モノ。破れたところを直して、ずっと使っています」
■Rick ShinmiのSNS
𝐵𝑖𝑛𝑎𝑟𝑦 𝑏𝑖𝑟𝑡ℎ𝑑𝑎𝑦 pic.twitter.com/v5oG7a4b3R
— Rick Shinmi₍₍⁽⁽🌱₎₎⁾⁾ (@rickshinmi) October 6, 2021
Photo : Eri MIura
Text : Daiki Ido
Edit : Takeshi Koh