「気になる10代名鑑」の46人目は、詩絵さん(17)。「男の子も女の子も演じられる役者になる」という目標へ向かって、演技のレッスンを重ねながら、さらに表現の幅を広げるべく、歌とダンスにも磨きをかけています。そんな詩絵さんが普段から大事にしていることや、セクシュアリティについて考えていることを聞いてみました。
■詩絵を知る10の質問
Q1. プロフィールを教えてください。
「17歳の高校2年生で、通信制の高校に通いながら、事務所に所属して、芸能活動しています。学校では歌とダンスを勉強していて、事務所では演技のレッスンを受けています。
将来の夢は、ドラマや映画で活躍する俳優になること。男の子の役と女の子の役、どちらも演じられる役者を目指しています。わたし自身、中性的なセクシュアリティで、男の子のことも、女の子のことも好きになることがあるし、男の子になりたいと思うこともあります。それを演技に生かして、幅広い役ができたらなと思っています」
Q2. 演技の道を志すようになったきっかけは?
「小学6年生のときに参加した、市民ミュージカルがきっかけです。もともと歌うことが大好きで、ただそれだけの理由で応募したのですが、そのオーディションには演技も必要で。とりあえずやってみたら、意外にうまくできたんです(笑)。
中学生で進路に悩んだとき、そのときの経験を思い起こして、本気で目指すことにしました。なので、ドラマや映画、舞台はもちろん、ミュージカルに出ることも目標のひとつです」
Q3. 活動する中で大切にしていることは?
「楽しむことが第一なのですが、人をよく見ることも大切にしていて、習慣にしています。道ゆく人を見たときでも、『この人はどんな場所で生まれ育って、職業は何で、何を考えて生きているんだろう』と、アレコレ考えるんです。レッスン生の仲間とも、歩いているときに見かけた、特徴的な人についてよく話をします。
これを日ごろからやっていると、演技レッスンで役をつくるとき、自分や相手が演じる役の人柄や、それまでの人生を素早く推測することができるんです」
Q4. 最近、新しく始めた挑戦は?
「学校の授業で、ヒップホップダンスを習い始めました! これまでジャズとコンテンポラリーしかやってこなかったので、未だに体の使い方が難しくて……。だけど、リズムを外さずに完璧に踊れたときはめちゃくちゃ嬉しいし、達成感が大きいんです。これからも頑張っていきたいです!」
Q5. 自分らしさはどこにあると思いますか?
「活発で負けず嫌いなところ。演技がうまくいかなかったときは、『次のレッスンまでにたくさん練習して、挽回してやろう』という気持ちになるし、学校では一学年下に、ヒップホップダンスが上手な子がいて、その子に負けたくないっていう気持ちがあるから、頑張れています」
Q6. 普段はどんな友達と過ごすことが多いですか?
「いつもふざけてばかりの、本当にうるさい友達といつも過ごしています(笑)。にぎやかな友達なんですが、実は気を遣ってくれる優しさもあるんです。私は生まれつき右耳が聞こえなくて、日常生活でどうしても困る場面があるんですけど、友達はできるだけ私の左側に回ったり、顔を近づけて話したりしてくれるんですよ」
Q7. 宝物はありますか?
「中学時代の先生からもらった手紙です。中学時代、右耳が聞こえないことや人間関係のストレスが重なり、生きづらさを感じていた時期がありました。そのときは学校や部活に行くので精一杯で、好きだった歌への気持ちも薄れてしまっていて、自分でも、この先何をしたいのかが分からずにいました。
そのとき、毎日話を聞いてくれたのが、中学2年のときの理科の先生でした。今でも連絡をとり続けていて、その先生のおかげで、夢を持って前に進むことができています」
Q8. 生きるうえでのポリシーがあれば教えてください。
「とにかく自分らしくいられるようにすること。そのためには自分自身をさらけ出し、自分が生きやすい環境を作るようにしています。これにも、中学のときの先生がかけてくれた『打ち明けてみれば、意外に助けてくれる人はまわりにいる』っていう言葉が影響していて。
そのおかげで、右からの音が聴こえにくいことも積極的に伝えて、理解してもらえるようになりました。ちゃんと伝えれば、まわりの人に「なんで聞き返すことが多いんだろう?」と疑問に感じさせることもないし、それによって自分がつらい思いをすることも減らすことができる。
小さいころは、本当に喋らない子どもだったんですけど、こう考えるようになって本当に大きく変わりました」
Q9. 社会が「こう変わればいい」と思うことは?
「もう少しセクシュアリティについての理解が深まればいいなと思います。まわりには、私のセクシュアリティを肯定してくれる人がたくさんいるけど、深く知ろうとしてくれる人はまだ少なくて。
『あなたがそう思うならそうしていいじゃん!』と言ってくれるのはもちろん嬉しいけれど、もっと踏み込んだ話もしたい。例えば恋人について質問するとき、『年上? 年下?』だけではなく『男? それとも女?』とも普通に聞けるような社会になると素敵だなって思います!」
Q10. 同じ時代を生きる10代に、メッセージをお願いします。
「興味のあること、やってみたいことは絶対自分から動いて実行してみたほうがいいと思います。後悔する前に飛び込んでしまえば、きっといろんな世界が見えてきます!」
■詩絵の今日のファッション
「その日によって男の子みたいになりたいのか、女の子らしくいたいのか、気分が変わるんです。今日は『かわいい男の子』になりたい気分だったので、ビッグシルエットのトップスにチェックパンツをあわせました」
■詩絵のSNS
Photo : Eri MIura
Text : Daiki Ido
Edit : Takeshi Koh