「気になる10代名鑑」40人目は、俳優とモデルを目指す傍ら、アクリル画や音楽などの制作活動も行っている武藤大空さん(19)。目を背けがちな『死』や『挫折』をテーマに作品をづくりを行っているそう。そんな彼の苦しい過去や、ストリートカルチャーとの出会いまで、活動の原点を伺いました。
■武藤大空を知る10の質問
Q1. プロフィールを教えてください。
「武藤大空です。専門学校でグラフィックデザインを学んでいましたが、今は休学中です。俳優とモデルを目指しながら、アクリル画を描いたりDAW(音楽を制作するソフトウェア)を使った音楽制作をしていて、自己表現について日々模索しています」
Q2. 創作活動を始めたきっかけは?
「5年前、まわりの目を極端に気にしてしまう『社会不安障害』になったんです。当時付き合っていた彼女との別れも重なって、本気で死を考えたことも。けっこう塞ぎ込んだ日々を送っていたですけど、心のどこかで、創作とか俳優とか、自己表現をしてみたいって気持ちがずっとあったんです。
じゃあ、死ぬくらいだったら、その前にやりたいこと全部やろうって吹っ切れて、自分で活動を始めました。表現と向き合い始めてからは、少しづつ症状も落ち着いています」
Q3.活動するうえで、どんなことを大切にしていますか?
「弱い部分をさらけ出すこと。海外アーティストとかラッパーは、成功を自慢したり、ポジティブなことをよく表現したりしているけど、自分は『死』とか『挫折』とかネガティブなことをそのまま表現しています。
『死』と向き合ったからこそできる表現が、自分の強みだと思うんですよね。昔の自分みたいに落ち込んでいる人を、作品で勇気づけられたらいいなと思ってます」
Q4. 10代だからこそ感じた壁や、それをどうやって乗り越えたかを教えてください。
「今ってSNSが発達しているので、活躍している同世代の子が目につきやすい。そういう目立っている人たちと比べて、『自分にはセンスがないのかも……』って落ち込むこともありました。
そういうときは、家から出ずに、SNSとも距離を置いて、とにかく自分と向き合ってましたね。そうしたら、自分にしかできないこととか、強みがだんだん見えてきたんです。結果、他人と同じフィールドで戦っても意味ないなって気づくことができました」
Q5. 最近新しく始めた挑戦はありますか?
「ドレッドヘアにしました(笑)。ラッパーから影響を受けてます。自信を持って活動する姿勢とか、自分に足りない部分を持っているラッパーには、憧れがあるんです。
これから、音楽制作も本格的にやっていきたいので、その意思表明でもあります。でもドレッドって乾かすのがめちゃくちゃ大変で、いつも1時間くらいかかってますね(笑)」
Q6. 普段、どんな友達と過ごすことが多いですか?
「最近できた友達は、音楽やアートをやっているクリエイティブな人が多いです。一緒に音楽制作をしたり、音楽をシェアしたり、スケボーをやったり。感性が合う友達が増えてきて、楽しいです」
Q7. 尊敬している人はいますか?
「フランスの双子のダンサー『Les Twins』です。昔からダンスを見るのが好きで、彼らのダンスをよくみています。ダンサー全員に共通することだけど、自分の体を使ってする表現って、めっちゃかっこいい。『Les Twins』と出会ったことが、人前で何かを表現したいって思うきっかけのひとつになりました」
Q8. ダンス、ラップ、スケボー…ストリートカルチャーから影響を受けるようになったきっかけは?
「すごく厳しい高校に通っていたんです。それこそ監獄って呼ばれるくらい
(笑)。手がかかる生徒だったので、先生からはよく怒られてました。でも先生に『学校を辞めてほしい』って言われたときは、さすがにショックだった。それ以来、学校とか大人とか、力を持ってるものに対する反骨精神が生まれたんですよね。
そんなときにHIPHOPに出会いました。反骨心剥き出しで、自分の成功を自慢するようなリリックには、相当喰らいましたね。そこから、ストリートカルチャー全般に興味を持つようになりました」
Q9.今後の展望を教えてください。
「絵やグラフィックだけじゃなくて、音楽制作もやっている、マルチなところが自分の強みだと思うんです。だから、楽曲づくりやアートワークも含め、全部を自分で手がけるアルバムを作りたいです。あとは、俳優とモデルとして成功するためにも、映画とかの作品にたくさん触れて、勉強もしていきたいです」
Q10. 同じ時代を生きる10代にメッセージをお願いします。
「10代のうちって、ちょっとしたことで気持ちがネガティブに振れたりしますよね。そういう気持ちが生まれたら、ノートに書き出すことをおすすめします。書いたらスッキリするし、それを、たとえばリリックづくりとか、なにか表現に生かせることもあると思うんですよね。
自分の弱さを隠さずに、しっかり向き合って、弱いことを認めることができれば、気持ちが楽になると思います」
■武藤大空の今日のファッション
「エスニックっぽいトップスとデニムは、地元のリサイクルショップで買いました。意外と掘り出し物が多くて、ちょこちょこ見に行きます。服はジャンルにとらわれず、いいと思ったものを直感で選ぶことが多いです」
■武藤大空のSNS
Photo:Kana Tarumi
Text:Yui Kato