
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、先週に引き続き、『東京ゲームショウ2026(以下、TGS2026)』で出会った注目の取り組みについてご紹介します。
TGS2026を取材。昨年新設の「オールアクセシビリティコーナー」に注目!
毎年秋に開催されているTGS。ゲームビジネスの関係者やゲームファンらが大勢集うこのイベントが、今年も9月17日から21日にかけて千葉・幕張メッセで開催されました(21日の現地開催は台風の影響で中止)。筆者は18日に現地を取材。会場で発見した注目の取り組みを、先週からこの「Steenz Breaking News」でご紹介しています。
前回の記事「小児がんのリハビリでゲームを活用。『東京ゲームショウ2026』で出会った注目の取り組みに迫る」で取り上げたのは、「オールアクセシビリティコーナー(※)」で見つけた、日本電子専門学校と岡山大学病院が手がける「小児がん患者のリハビリ用VRゲームコンテンツ開発プロジェクト」でした。
ゲームを活用可能な領域の幅広さを感じられた先週に引き続き、今回もオールアクセシビリティコーナに注目。同コーナーに出展していた株式会社アラヤの取り組みをご紹介したいと思います。
※障害の有無や年齢などにかかわらずゲームを楽しめるようにするソフトウェアやツール、サービスを紹介するコーナーのこと。TGSでは2025年からオールアクセシビリティコーナーを設け、各社の取り組みを展示している。
脳波でゲームをプレイ。アラヤの取り組みとは
新作ゲームやゲームビジネスのきっかけを探す多くの人の熱気に包まれた、幕張メッセのホール11。その出入口からほど近いところに、アラヤの展示はありました。
ブースに近づいてみると、複数の人が熱心に話を聞いたり、ゲームを体験したりしています。そうした中でひときわ目を引いたのが、ゲームを体験している人の頭部に何らかの装置がつけられていることでした。

一体どのようなゲームなのか、担当者に話を聞いてみると、アラヤのブースでは、脳波を活用したゲームやプロジェクトを展示していることが判明。ゲームを体験中の人の頭につけられた装置は、脳波を計測するものであることが分かりました。
脳波にはいくつかの種類がありますが、今回展示されたゲームで使っているのは、リラックスをしているときに出やすいα波や、手を動かすときに生じる「運動想起」という脳波の変化だそう。これらの脳波に加えて、目線や身体の動作なども活かすことで、手でコントローラーを操作せずとも誰でもゲームをプレイできる状態を作っているといいます。
例えば、今回展示されていた「MindRunner」というアクションゲーム。走るキャラクターを左右に動かしながらコインを集めていくゲームですが、キャラクターの操作は、コントローラーのスティックではなく脳波でおこないます。頭の中で「右に動く」「左に動く」とイメージし、その際の脳波を捉えることで、キャラクターを左右に動かしていくのです。
リラックスするとグッズが出てくるカプセルトイ『無心カプセル』を体験
アラヤのブースには、「MindRunner」のほかにもいくつかのゲームが展示されていました。筆者はその中でも『無心カプセル』を体験させてもらいました。
これは、脳のα波を捉える技術と画像認識技術を用いて作られたカプセルトイです。プレイヤーがおこなうのは、両手を合わせて祈るポーズと、なるべくリラックスした状態でいることだけ。ベルトで額まわりに装着した脳波計がα波を十分に捉えると、カプセルが出てくるという仕組みです。

担当者に脳波計を装着してもらい、顔の前で手を組んで心を落ち着けること約1分。システムが筆者はリラックス状態にあると判断してくれたようで、無事に機械からカプセルが出てきました。
多くの方がご存知のように、カプセルトイは通常、コインを入れた後に手でハンドルを回す必要があります。しかし、『無心カプセル』では手で何かを操作する必要は一切ありません。自分の気持ちを落ち着けることが、遊びのきっかけになる。これまでにない新たな体験に、非常にワクワクしたひとときとなりました。
AIスタートアップのアラヤが脳波活用のゲーム環境に挑むわけ
斬新なゲーム体験を生み出していたアラヤ。しかし、実は同社は、ゲームづくりを生業としているわけではありません。アラヤの本業はAI開発。ビジネス関係者の間では、企業の課題を解決するAIをオーダーメイドで開発・提供しているスタートアップ企業として知られています。
そのような同社が、なぜ脳波を活用したゲームをTGS2026で展示していたのか。その理由は、会社の創業者であり代表の金井良太さんが脳の研究や脳画像の解析を専門とし、内閣府によるイノベーション創出を目的とした「ムーンショット型研究開発制度」でプロジェクトマネージャーを務めていることにありました。
アラヤの代表取締役を務める金井さんは、スタートアップを起業した経営者でありながら、一方で京都大学生物物理学科を卒業後にオランダ・ユトレヒト大学で博士課程を取得した研究者という一面もあります。金井さんは認知神経科学を専門に、カリフォルニア工科大学やイギリスのユニバーシティ・カレッジ・ロンドンなどで研究してきました。
世界を股にかけて研究を続けてきた金井さん。現在は、ムーンショット目標1「2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」でプロジェクトマネジメントを手がけています。このプロジェクトでは、2050年までを目標として、技術を使って脳があらゆるものに接続し、人が身体や脳、空間、時間の制約から解放された社会の実現を目指しており、その研究内容の一部をオールアクセシビリティの文脈で展開していたのです。
まるでSFのような、未来の全く新しい社会の実現に向けて進められている研究が、わたしたちの遊び方をも大きく変えるのかもしれない。そんなことを考えながら、これからの社会のあり方と人々の暮らしにまで思いを馳せた取材となりました。
次回は、国立環境研究所が手がける「環境研究×RPG」の取り組みをご紹介
次回は、国立研究開発法人 国立環境研究所のRPGゲーム開発プロジェクトを取り上げる予定です。環境に関する研究とゲーム開発がどのように結びつくのか、担当者に伺った話を詳しくご紹介します。ぜひ楽しみにお待ちください!
Text:Teruko Ichioka






