
「気になる10代名鑑」1355人目は、五井泰地さん(16)。減少しつつある蒲田の町工場の技術を次世代に伝えるために、AIアプリケーションの開発を目指し、活動しています。50軒以上の工場を訪ねた中で忘れられない出会いがあったと語る五井さんに、当時のエピソードや将来の展望について詳しく聞きました。
五井泰地を知る5つの質問

Q1.プロフィールを教えてください。
「ぼくの地元である、蒲田の町工場が持つ技術を次世代に継承していくための活動に力を入れています。蒲田に限らず、日本にはたくさんの部品工場を抱える中小企業がありますが、現在は減少傾向にあり、その技術が失われつつあるのを感じていて。町工場そのものを残すことを答えとするのではなく、職人の技術や経験を、いまの時代に合ったかたちで受け継ぐ方法を模索しています。
具体的には、1年前からAIアプリケーションの開発を構想していて。技術が継承されにくい原因は、長年の経験に頼らざるを得ない側面にあると考えたのがきっかけです。
パイプを加工する工場を訪ねたとき、『ここの加工はガガガってやる』といったような、個人の体験に基づいた説明が多くて。長い時間と経験をかけて受け継がれる技術は尊いのですが、初心者が取り組みにくくなっているのかもしれないと感じました。
それを打破するために、カメラで加工のモーションを撮ってAIにそれを読み込ませ、手順や、適切な角度はどれぐらいかといったような説明を補足できるアプリをつくりたいと考えたんです」
Q2.活動をはじめたきっかけは?
「小学1年生のころ、学校の社会見学で地元の部品工場を訪れたんです。機械が動く様子や、職人さんがものをつくる姿を見て感動して。鉄パイプを加工する工場だったんですけど、それに対して真剣に向き合っている職人さんの眼差しがかっこいいなと思いました。
でも、数年後、たまたま工場のあった場所を通ったときに、シャッターが閉まっていたんです。子どものころに当たり前にあった場所がなくなっていることに寂しさを感じて、蒲田の町工場を何らかのかたちで残すことはできないだろうかと考え始めたことが、この活動のきっかけです」

Q3.活動をしている中で、印象的だった出来事は?
「これまでに100軒以上の工場に連絡を取り、断られることや門前払いもありましたが、約50の工場を訪れ、職人さんのお話を聞いてきました。そのなかでも、ギアの部品を作る工場を訪ねたときのことが印象に残っています。
そこの職人さんは、『あと2、3年ぐらいでうちの工場も無くなってしまうと思う』と、遠い目をしながら話してくれて。ぼくが、町工場に対してアプローチをかけていきたいと考えていると想いを伝えると、自分たちのために動いてくれる若者がいるのが嬉しいと言って、涙を流してくれたんです。
それまでは、ビジネスの手段として考えていた気持ちも正直あったのですが、その涙を見て、すごく反省しました。もっともっと、町工場の課題解決に真摯に取り組みたいと思うようになったんです」
Q4.活動の中で、悩みがあれば教えてください。
「アプリケーションの制作に関していうと、データ収集の部分が悩みかもしれません。ぼくのつくろうとしているAIはたくさんのデモが必要で。それの撮影であったり、読み込ませる時間、そもそもAIを作成するコストが賄えるのかというところが課題ですね。
長年受け継いできた独自の技術を簡単には教えてもらえないというハードルがあることも理解しています。その他にも、若者との交流、企業との連携など、考えられる課題は多くて。高校生の自分には実績も信用もまだ十分ではなく、話を聞いてもらうところから始めていくしかないと思っています。今後は、規模の大きいビジネスコンテストにも挑戦していきたいです」

Q5.将来の展望は?
「活動を通して、若者が第一次産業に興味を持ち、その技術を未来に継承できる世界になってほしいですね。都内で工場を続けていくことには、土地や後継者、経営など多くの難しさがあります。それでも、その人たちが何十年もかけて受け継ぎ、磨いてきた技術までいっしょになくなる必要はないと思っています。
ぼく自身の将来としては、大人になっても、自分を愛する自分でいたいです。いまも自分のことは認められていますが、これから先も挑戦心や努力できる姿勢を誇れる人間でありたいですね。
あとは、大学に進学して、建築や心理学を学んでいきたいという想いがあります。幼いころから建築物が好きで、自分のビルを建てたいという野望があるので(笑)。
また、東京政策選手権というイベントで、心理学にまつわるテーマで最優秀賞を取ったことで、心理を学びたいと思うようになりました。どのプロジェクトにも人間の心理は関わってくるだろうし、人がどう思うのかということに興味がありますね」

五井泰地のプロフィール
年齢:16歳
出身地:東京都大田区
所属:聖学院高等学校
趣味: 街歩き、色々な街に行って新しい出会いなどを求めること
特技:ベースを引くこと、一度スイッチが入ったら止まらない (でも冷めやすい)
大切にしている言葉:時は金なり(ベンジャミン・フランクリン)
Photo:Nanako Araie
Text:Yuzuki Nishikawa






