
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、国立科学博物館でおこなわれる企画展「どうする、ニンゲン -研究の現場から地球の未来を問う」をご紹介します。
科博と総合地球環境学研究所がコラボ!
年間1万人もの人が訪れる東京・上野の国立科学博物館。2026年7月31日(金)から9月23日(水)までの期間、総合地球環境学研究所(地球研)との共同企画展「どうする、ニンゲン -研究の現場から地球の未来を問う」が開催されます。

2001年に創設された地球研。環境問題を単なる自然現象ではなく、人と自然の関係はどうあるべきか、という「人の生き方」の問題と捉えている点に特徴があります。自然科学はもちろん、人文学や社会学などさまざまな分野の視点から研究がおこなわれています。
普段の科博の展示は、科学的なアプローチを中心としたものが多いのですが、今回の企画展では、人間の社会活動や文化にも焦点を当てています。科学だけでは解決できない地球環境の課題を、人と自然の関係という視点から考える内容となっており、科博の展示としては異色の企画とも言えるでしょう。
気づき、とらえなおし、といつづける。人間の暮らしと地球

1章「気づく」では、わたしたちの暮らしに欠かせない「土地」、「水」、「食」、「住」の観点から、自然とのつながりの根源を見つめ直しています。中でも印象的なのが、バーチャルウォーターの展示です。
バーチャルウォーターは、その食べ物を生産するのにどれだけ水が必要であるかを可視化する概念です。野菜を育てるにも、牛や豚を飼うのにも大量の水が必要ですが、私たちが食事をするときに、その水の存在を意識することはあまりありません。しかし、水がなくては食料は生産できません。

会場には、自分が食べた食事の生産にどれだけの水が必要なのか、計算できるタブレットが置かれています。さらに、ハンバーガー1個の生産に必要な水の量を示すために、1立方メートルの容器が置かれています。こうして見ると、わたしたちの暮らしがいかに水に支えられているか実感ができます。

2章のテーマは「とらえなおす」。人間の生活と自然の関わりは複雑で複層的で、環境問題の解決は簡単ではありません。そこで研究者たちは、問題解決に向けて、人と自然のつながりを「とらえなおす」アプローチを取ってきました。
琵琶湖の保護活動を紹介する展示では、琵琶湖の固有種であるニゴロブナの生息環境を取り戻す様子が紹介されています。フナ寿司に代表されるように、琵琶湖周辺の人々の暮らしに密接であったフナ。しかし、高度経済成長期の水質汚染、それによる琵琶湖と人々の暮らしの分断、さらには農業のあり方の変化によって、琵琶湖と田んぼを行き来していたニゴロブナは大幅に減少してしまいました。

その後、田んぼ周辺の環境改善が進められたことで、ニゴロブナが再び回遊できる生態系が復活。また、琵琶湖と共に暮らしてきた高齢者と、その暮らしを知らない子どもとの交流が生まれたことなどが紹介されています。ニゴロブナの耳石を科学的に調査することで、琵琶湖と田んぼを行き来する生態が実証されており、地域の知恵や暮らしの記憶と、最先端の科学研究が結び付いていることがよく分かる展示となっています。

3章のテーマは「問いつづける」です。 環境問題は、人と自然の関係はどうあるべきかという「人の生き方」の問題であるとしている地球研。科学で問題のありかを発見しても、それで終わりではなく、その先にある解決策まで、人々とともに考え続けることが重視されています。
たとえば、世界で清潔なトイレにアクセスできない人は約15億人いるとされています。その背景には貧困だけでなく、そもそもトイレを設置する習慣がない文化や生活様式もあります。しかし、都市化が進む現代社会では、衛生面などの問題からトイレの整備が必要になる場面も少なくありません。

だからといって「清潔なトイレを設置してあげておしまい」ではありません。地域の文化や暮らしに合わない設備は、使われなくなり、清潔に維持されなくなる可能性があります。その土地に暮らす人々と対話を重ねながら、持続的に利用できる仕組みを作る必要があるのです。
展示では、そうした対話の中から生まれた、地域の環境や文化に合わせて活用できるトイレのモデルが紹介されています。環境問題の解決には科学だけでなく、人々の価値観や暮らしへの理解も欠かせないことが実感できる内容になっています。
研究者と対話できる「問いの森」
この企画展の最大の特徴は中央ホールに「問いの森」という対話スペースがあること。期間中、対話の縁側「かたろう、ニンゲン」として総合地球環境学研究所のさまざまな分野の研究者が滞在します(滞在時間10:00~11:30、14:00~15:30)。

8月8日(土)9日(日)には、環境問題の解決に向けて行動をする人や組織をつなぐ取り組みを紹介する「地球のこと、わたしたちにできること」がおこなわれます。8月24日(月)25日(火)には、ゲームを通して、立場が変わると環境問題の見え方や選び方の変化を提示する「環境問題をめぐる選択と対話」の実施も。スケジュールを合わせて展示を見るといいですね。
私たちは、どうしていくか。圧倒的な問いにさらされる企画展「どうする、ニンゲン -研究の現場から地球の未来を問う」
知的な好奇心を満たすだけでなく、そこから「では、どうしていくか」という問いが投げかけられる展示である「どうする、ニンゲン -研究の現場から地球の未来を問う」。難しいテーマではありますが、問題解決の糸口を探すための問いを探しに行ってはいかがでしょうか。
Text:Itsuki Tanaka






