
「気になる10代名鑑」1343人目は、酒井結鶴さん(18)。「合同会社みいねる」を設立し、無関心や偏見にさらされる北海道の食農の魅力を発信する活動をしています。これからは農業と教育を掛け合わせ、人々に自分を知るきっかけを届けたいと語る酒井結鶴さんさんに、活動を始めたきっかけや印象的だった出来事を聞いてみました。
酒井結鶴を知る5つの質問

Q1. いま、いちばん力を入れている活動は?
「高校時代に設立した『合同会社みいねる』の共同代表として、高校の同級生の相方と北海道の食農の魅力を伝える活動をしています。
北海道は食料自給率が日本一で、日本の食を支えている一方で、人手不足や後継者不足といった深刻な問題を抱えていて。その解決のために、大学進学を機に拠点を関東に移し、地域の農家さんとつながりながら北海道との農業の違いを調べたり、農作業ボランティアをしたりしています。
道外に出てからびっくりしたのは、『北海道の野菜っておいしいよね』と多くの人に言われることでした。道民のわたしからするとそこまで意識していなかったんですけど、道外の人ほど北海道の食農にいいイメージや関心を持ってくれているんですよね。だったらもっとその関心を深めてもらえるはずだと思い、全国に北海道の野菜だけでなくそれを生み出す農業の魅力を発信しています。
最近は、9月に行われる北海道最大級のイノベーションイベントに出展するためにアイデアを構想中です。北海道の食農をどう広めるか。集まってくれた人たちと話し合いながら、実際にかたちにしていく予定です」
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Q2. 活動を始めたきっかけは?
「高校2年生のころ、農作業ボランティアに参加したことがきっかけです。何でもいいからボランティアをやってみたい!という動機で参加したのですが、さくらんぼの選果や雪と土に埋もれたにんじんの掘り出し、トマトの誘引など、農作業があまりにも大変でびっくりして。
でも同時に、自分が普段食べている食材が、この大変な作業の積み重ねの上にできているんだと思ったら、すごくありがたいなと思ったし、農業が自分ごとになった感覚があったんです。
だからこそ、農業が抱える課題に大きな危機感を覚えました。人手不足で、後継者もいなくて、『きつい・汚い・稼げない』という偏見にもさらされている。50歳を超えた人たちがあの重労働を毎日続けているから、わたしたちの食卓があるんです。このままだと北海道の農業も、日本の豊かな食もなくなってしまうのではないかと感じました。
その危機感が、自分が魅力発信をしなくてはいけないという決意に変わりました。道民のわたしですら北海道農業の課題を自分ごとにできていなかったんだから、まずは知ってもらうこと、農作業の楽しさに触れてもらうことから始めるしかないと思ったんです」
Q3. 活動をしている中で、印象的だった出会いは?
「高校3年生のとき、活動が停滞して精神的にすごく苦しかった時期に、助けてくれた先生との出会いです。実は、活動が本格化するにつれて、結果が出ない焦りや仕事量の多さでキャパオーバーになり周囲に迷惑をかけてしまったことがあって。
わたしは昔から人と比べてしまうタイプで、期待に応えられなかったらどうしようと不安になりやすいんです。悩みを相談することも苦手で、『この子は◯◯ができないんだ』と知られたら今後の関係に響くんじゃないかと考えてしまう。どんどん一人で不安を抱え込んでしまいました。
そんなときに、声をかけてくれたのがとある先生でした。先生、すごくおせっかいなんですよ。わたしが表情をちょっと変えただけで『なにかあった?』と声をかけてくれるんです。先生もめちゃくちゃ忙しいはずなのに、頻繁に時間をとって話を聞いてくれました。できない自分を見せても変わらず接してくれたことが本当に心の拠り所になったし、こうやって活動できているのは先生のおかげだと思っています」

Q4. 活動を通して、実現したいビジョンは?
「みいねるのビジョンは、誰かにとってのきっかけを生み出すことです。本来なら混ざらないなにかとなにかをつなぎ合わせて、新しい出会いや価値を見出す。そういう会社でありたいと思っています。
なんできっかけにこだわるかというと、いまのわたしの原動力になっているものは、すべてなにかしらのきっかけがあったからなんですよね。農業に興味を持ったのも、学校がボランティアの機会を用意してくれたから。いろんな大人と話したり、いろんな経験をしたりする中で、自分の好きなことや苦手なこと、やりたいことが見えてきました。
昔のわたしは、自分のことをなにも知らなくて、好きなこともやりたいこともわからなかったんです。でも行動してみたら、人生がすごく面白くなった。だからもっといろんな人に、自分を知るきっかけを届けたいと思っているんです。いまは五感を通じて北海道の食農を届ける商品開発と、教育分野での事業展開を考えていて。どんな分野でもきっかけを生み出す会社であり続けたいです」
Q5. 将来の展望は?
「子供たちが自己有用感を持って、自分の道を歩めるように伴走するユースワーカーになることが夢です。そのために、いまは大学で心理や教育の学問を深く学んでいます。
昔のわたしは、キラキラしている人の真似をして、自分の個性を消してしまっていました。同じように、憧れの人と比べて『自分はダメだ』と思ってしまう人ってきっとたくさんいると思うんです。でも、さまざまな人と出会う中で『ここが結鶴のいいところだよ』と言ってもらえる経験が増えて、自分でも気づいていなかった強みを知ることができて。そのままの自分で生きていく自信がついたら、人生がぐっと豊かになりました。こんな経験をもっとたくさんの人に届けていきたいんです。
これからは得に農業×教育の分野に挑戦していきたくて、子供たちに向けて食農の魅力を届けつつ、学びや成長の機会を届ける仕組みを模索中です。道外で得た経験やネットワークを北海道に還元して、人と地域をいっしょに育てていく会社に成長させたいです」

酒井結鶴のプロフィール
年齢:18歳
出身地:北海道札幌市西区
所属:桜美林大学 教育探究科学群、合同会社みいねる 共同代表
趣味:人を笑わせること
特技:高速タイピング、美味しいマンゴーサゴを作ること
大切にしている言葉:「見えないものこそ大事にしなければいけない」
酒井結鶴のSNS
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Photo:Nanako Araie
Text:Rinna Koike






