誰かが、「日本は平和だから、若者が、政治に興味を持たずにすむ」とか⾔っていたらしい。でも、政治は未来の国を良くするためにあるのなら、きっとホントは僕らのもの。なんでもいいから、興味を持とう。政治の話はそれからだ。
政治をポップに発信していく連載企画「政治POPS.」。フリーライターの中村眞大がナビゲーターとなり、10代の皆さんを楽しくわかりやすい政治の世界へと誘います。
今回は、ベールに包まれた議員秘書のお仕事を徹底調査! 秘書って、映画やドラマではよく見るけど、実際はどうなの?
そんな疑問を、現在参議院自民党で副幹事長を務める参議院議員・山田太郎さんの事務所で働く現役の議員秘書・小寺直子さんにぶつけてみました!
写真フォルダの中身は議員だらけ

議員秘書はなんでも屋さんだ。スケジュールの調整、会計、写真撮影、法案づくりのサポート、支援者とのやり取りなど。議員のもとに届く様々な声を最初に受け止めるのも秘書の仕事だし、なかには運転手まで兼ねているケースもあるという。
―ズバリ、どんな仕事ですか?
「議員ごとに働き方や雰囲気は全然違ってて、ひとつの議員事務所が中小企業みたいなイメージですかね。 うちは全国比例区選出で地元の事務所がない分、秘書は4人とかなり少なめなんですけど、他の事務所では、30人以上スタッフがいるところもあります。実は秘書と言っても、税金で雇われている公設秘書と、主に議員本人が代表を務める政治団体に集まる資金から給与が支払われている私設秘書の2パターンがあって、私は公設秘書のほうです」
―運転手やカメラマンも兼ねていると聞きました。

「うちは運転を議員本人がすることが多いので、専属の運転手はいません。ただ、会議や視察、街頭活動、政府などへ提案や意見表明を行う「申し入れ」など、記録や発信のために写真を撮る機会は多いですね。だからスマホの写真フォルダが山田さんだらけになってしまって。iPhoneって時々、『〇〇の思い出』みたいな感じで自動でおすすめの写真を出してくるじゃないですか。大体山田さんの写真で埋め尽くされています(笑)」
― 1日のルーティンはありますか?
「国会が開いているかどうかでスケジュールが全然違うので、決まったルーティンはありません。会議や来客、資料作成、議員の発信準備、政策の調整など、その日の予定に合わせて動いています。平日の夜は何時に帰れるかわからないことも多いので、友人との予定は土日に入れることが多いですね」

小寺さんのとある一日(国会開会中)
『釣り部』や『スキー部』!? 議員秘書の意外な放課後
― 他の議員の秘書とは仲良いですか?
「秘書同士のつながりはあります。参議院自民党には秘書会という組織があって、そのなかに釣り部、スキー部、ゴルフ部などの部活動もあるんです。実は私も、アメリカで人気のピックルボールというスポーツの部活を立ち上げました。この後も練習に行く予定です!」
― 部活! 楽しそうですね! ところで、国会議員は全部で713人いますが、山田さん以外の顔と名前も全員覚えているんですか?
「自民党所属の議員は覚えていますが、さすがに全員は難しいです(笑)ただ、国会内や党内で関わる機会の多い議員は、できるだけ覚えるようにしています。それでも、議員本人がふらっと事務所にいらっしゃることもあるので、一瞬『あっ、どなただっけ……』と内心焦ることはあります(笑)。そういう意味でも、秘書は人の顔と名前を覚える力も大事だなと思いますね」

小寺さんも出演するYouTube撮影用のデスク
議員と本気で議論するのも秘書の仕事
― ドラマだと「おじいちゃんの代からお仕えしている」みたいな秘書も出てきますよね。落語家や相撲部屋のように、ひとりの議員に一生付いていくイメージなんですか?
「あはは、今はそういうケースばかりではないと思いますよ。もちろん、長く同じ議員を支えている秘書の方もいらっしゃいます。ただ、秘書の仕事は議員との相性がとても大きいので、途中で別の議員の事務所に移る方もいます。また、議員が選挙で落選してしまったときに、別の議員のところへ移籍することもあります」
― 議員さんとの距離感は、ぶっちゃけどんな感じなんですか?
「うちの場合、距離はかなり近いと思います。もちろんリスペクトは大前提ですが、考えが違う時は率直に意見を伝えることもありますし、政策や発信の方向性について、議員と秘書でかなり真剣に議論することもあります。秘書というと、議員の指示を受けて動くイメージが強いかもしれませんが、実際にはそれだけではないんですよ」

小寺さんと山田さん
― へぇー、それは意外でした。
「議員は本当に多くの現場を見ていますが、秘書もまた、事務所に届く相談や、支援者・当事者の方々の声に日々触れています。だからこそ、秘書だから気づけるようなこともあると思っています。たとえば選挙の後、次の任期でどの政策を重点的に取り組むか話し合う会議では、秘書全員で15時間以上議論しました。その中で、私が提案した内容が実際に取り入れられたこともあります」

参議院議員会館(東京・永田町)にある山田太郎事務所の小寺さんのデスク
― 秘書の仕事から社会を変えることもできるんですね!
「議員がすべての相談を直接受けるのは難しいので、最初の窓口は、私たち秘書になることも多いんですよ。困っている方や当事者の方のお話を伺い、それを議員につなげ、政策としてどう実現できるかを一緒に考えていくことがあります。私自身も、こども政策に関わるなかで、こどもや若者の声を政策に反映していくことの大切さを強く感じてきました。そうした問題意識を持ちながら、「こども基本法」をはじめとする政策づくりの過程に関わることができたのは、とても大きな経験でした」
学歴・年齢は関係なし! 議員秘書になるには『突撃』あるのみ!?

菅内閣総理大臣(当時)と
― 秘書の仕事に興味が出てきました。秘書になるにはどうすれば良いですか
「お給料は衆議院や参議院から出ていますが、採用するかどうかを決めるのは議員本人です。ですので、一般企業の就活のように決まったルートがあるわけではありません。学歴や年齢だけで決まる仕事ではなく、『この議員のもとで働きたい』『この政策に関わりたい』という思いがきっかけになることも多いと思います。あとは、飛び込んでいただくか、なんとか関係をつくっていただくか⋯」
―良いボスを見つけるコツはありますか?
「飛び込む前に、その議員の人柄や事務所の雰囲気はよく見た方がいいと思います。秘書の世界は、議員によって働き方も雰囲気も本当に違います。だからこそ、いきなり就職を決めるというより、まずは選挙ボランティアや勉強会などで関わってみて、自分に合うかどうかを見てみるのがおすすめです」

小寺さんおすすめ! 議員秘書が業界を学ぶための本
― どんなタイプの人が向いてると思いますか?
「議員のスピード感についていける体力や、急な予定変更にも対応できる柔軟性がある人。あとは、積極性、気配り、そして表に出ない仕事にもやりがいを感じられるかどうかもポイントです。議員は、自分が取り組んだことが実績として名前とともに世の中に出るけど、秘書は、どれだけ大事な制度づくりや政策の実現に関わっても、自分の名前が表に出ることはほとんどありません。それでも、誰かの役に立つこと、社会を少しでも良くすることに喜びを感じられる人には、とても向いている仕事だと思います」
― 最後に、若者に向けてメッセージをお願いします!

海外視察に同行する小寺さん
「政治って、遠いものだなと思うかもしれないけど、実は生活と切っても切り離せないもので、意外と簡単に関われます。議員秘書の仕事は、社会を変える力もあるし、国民と政治を身近にする接点でもあるので、非常にやりがいのある楽しい仕事だと思います」
お話を聞いた人

小寺 直子(こでら なおこ)さん
1990年12月25日、岐阜県生まれ。アニマルウェルフェア(動物福祉)の普及などを行う非営利団体に勤務しながら、政策提言や啓発活動にも携わる。そのなかで「より政策づくりの現場に近い場所で働きたい」と考えるようになり、山田太郎事務所の秘書に応募。面接を経て、2020年1月より議員秘書として勤務している。






