Steenz Breaking News

島根県の小さな全寮制高校で響き合う声たち。キリスト教愛真高校での1年間を追った映画『聴く隣人のいるところ』【Steenz Breaking News】

島根県の小さな全寮制高校で響き合う声たち。キリスト教愛真高校での1年間を追った映画『聴く隣人のいるところ』【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、2026年6月6日(土)より公開の映画『聴く隣人のいるところ』をご紹介します。

一見不便な学校生活がもたらす豊かさ

『聴く隣人のいるところ』は、島根県にある全校生徒34名の小さな全寮制高校「キリスト教愛真高校」の1年間を取材した作品です。聖書を教育の基盤に、「人は何のために生きるのか」を考えることを学びの中心におく同校。スマホなどの電子機器の持ち込みは禁止、そして洗濯や料理など身の回りのことも自分たちで担う環境下で生徒たちは3年間を過ごします。

(C)ポレポレタイムス社

作品が生まれたきっかけは、愛真高校の卒業生である早川嗣監督が20年ぶりに母校を訪れ「夕会」に参加したこと。

夕会とは、夕食後におこなわれる礼拝を基本とした会で、讃美歌を歌い、聖書を開き、担当の生徒が話をするといった流れでおこなわれています。

(C)ポレポレタイムス社

あらかじめ専用のノートに話したいことを書いておき、自分の心の内を明かす。他の生徒や教員はどんな内容であっても、ただその声に耳を傾け時間が終われば皆日常に戻っていく……。「当時は日常の一部であった夕会。久しぶりに見て、その愛真高校らしさが詰まった営みや人間関係の在り方に、言葉では言い表せないものを感じ、映像で表現することへとつながったのです」と早川さんは振り返ります。

他者の声に耳を傾け、内省を深める日々がもたらすものとは

文化祭の演劇の脚本を決める、生活のルールについて教職員も交え議論を重ねるなど、他者の声を聞き、自分の意見を話し、ときにはぶつかり合う場面が多く登場する本作。

(C)ポレポレタイムス社

互いへの理解が深まり物事が進む結果が理想的ですが、調和を生まない結果となることも。人間関係の摩擦や孤独など、厳しい側面もありのままに映し出されています。

卒業生の中には、愛真高校での経験を言語化することを難しく感じている人も多いと言います。だからこそ早川さんは「母校の綺麗な部分だけではなく、独特で濃い人間関係の様相を記録したかった」のだそうです。

集団で取り組むことで、他者と関わる力が養われる場所

早川さんはいま改めて、母校をどう捉えているのでしょうか。

「SNSやインターネットを否定するわけではないのですが、一時的に距離を置くことで、自分自身の人生に集中できるのではと感じています。それに、身近な他者と比較し劣等感を抱くことはあっても、格段に心が楽だった。小さな学校での共同生活を通じて、個人を能力や結果で評価することなく、自分の役割や居場所を見出せていたからかもしれません」

早川さんは、感情を率直に交わす経験ができたことも、大きな意味を持っていたのではないかと振り返ります。「怒りの感情を出したら相手からも怒りが返ってくるかもしれない、泣いたら弱いと思われるかもしれない--現代社会では、そうした失敗や拒絶を恐れて、感情を抑圧してしまう人も多い。愛真高校での3年間は、夕会や共同生活など、感情を出さずに過ごそうとするほうが難しい環境でした。楽しいことだけではないけれど、それを超えた先にある安心感を体験する場所だったのかもしれませんね」

きっと誰かと語り合いたくなる1本

全国、そして海外からも、さまざまな背景を持つ学生が通う愛真高校。自身の子どもが高校生になるときにも、多様な選択肢のひとつとして母校が残っていれば良いなと願いを込め作品は制作されたそうです。

他者の声にじっくりと耳を傾ける機会が減少している現代ですが、愛真高校では脈々とその営みは継承されています。作品を観た後は、友達や家族などだれかときっと語り合いたくなることでしょう。

映画『聴く隣人のいるところ』概要

6月6日(土)よりポレポレ東中野 ほか全国順次公開
出演:キリスト教愛真高校 2024年度在籍者
監督・撮影・編集:早川嗣 共同プロデューサー:本橋成一 大槻貴宏
整音:石川雄三 宣伝美術:ROTA 宣伝:アギィ 配給協力:ポレポレ東中野 製作・配給:ポレポレタイムス社
2026年/111分/D C P/カラー/ステレオ
公式サイト:www.kikurinjin.com

Text:kagari

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ライター/エシカル・コンシェルジュ

フリーのライター/エシカル・コンシェルジュ。学生時代、100本以上のドキュメンタリー映画を通して、世界各国の社会問題を知る。事務職を経て独立後、ソーシャルグッドに関連する記事を執筆。都会暮らしからはじめるエシカルな暮らしを実践中。 Twitter:@ka_ga_r_i Instagram:@kagari_ethicallifejapan

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