
「気になる10代名鑑」1269人目は、かえさん(19)。埼玉大学に通いながら、情報や経済、地域などの格差の中にいる子どもたちの居場所づくりをおこなう活動をしています。話が生まれる「食」をきっかけに、若者の選択肢を広げようと奮闘するかえさんに、その理由や活動で大切にしていることについて聞いてみました。
かえを知る5つの質問

Q1. いま、いちばん力を入れている活動は?
「食をきっかけにした居場所を実現するために、飲食店経営にまつわる勉強や、資格取得に励んでいます。特に、いまのわたしには経営の知識が足りないと感じているため、大学でも専攻以外に経済や経営の授業を履修して、インプットを増やしているところです。
同時に、実務を学ぶために、若者の“やってみたい”をかたちにするプラットフォームを提供するNPO『セントリベル』での活動にも力を入れています。
ここでは、夏休みに子どもたちの宿題をサポートする企画などに携わりました。今後は自分の得意分野を活かし、食を通じたワークショップなどの企画提案を通じて、子どもたちが新しい世界に出会える瞬間をひとつでも多くつくりたいと考えています」
Q2. 活動を始めたきっかけは?
「高校生のときに、地元の公民館でおこなわれていた子ども食堂のボランティアに携わったことです。
特に印象に残っているのは、定期的におばあちゃんといっしょに食べに来ていたある女の子のことです。彼女の家庭は複雑な事情を抱えており、日々の食事すらままならない状況でした。しかし、あるとき家の事情でその子が来られなくなってしまって。
高校生のわたしには、彼女の家庭環境に踏み込んだり、大人に働きかけたりする力がなく、ただ居場所が失われていくのを黙って見ていることしかできませんでした。『もっと自分にできることがあったのではないか』というそのときの悔しさがずっとあって。
だからこそ、単にお腹を満たすだけではない、困難な状況にある若者の選択肢を広げ、支え続けるための盤石な居場所をつくりたいと思うようになりました。その気持ちはいまも変わっていません」

Q3. 活動をしている中で、印象的だった出来事は?
「高校生のとき、地域の非営利団体の支援を受けて、カナダへ渡航した経験です。
象徴的だったのは、ホームステイ先の光景です。パキスタン移民でイスラム教徒のホストマザーが、クリスチャンのホストファーザーの部屋を掃除していた際、そこにあった大きな聖書を指して、『これは彼にとって大切なものだから、尊重して扱ってね』とわたしに教えてくれたんです。宗教やバックグラウンドが違っても、当たり前のように互いの大切なものを尊重し合う姿が印象的でしたね。
また、大学1年生で訪れたニューヨークでも、路上生活者の人たちに食事を配る中で、食べ物を介して生まれる温かいコミュニケーションに触れて。
こうした海外での経験すべてが、違いを認め合い、誰もが自分らしくいられる居場所を日本にもつくりたいという、わたしの想いの核になっています」

Q4. 活動をするうえで、大切にしていることは?
「新しい挑戦をするときに、10年後の自分が後悔しないほうを選ぶということです。
実は高校3年生の夏にカナダへ行くとき、学校の先生たちからは猛反対を受けました。『いまは受験のために勉強に集中して、諦めたほうがいい』と言われ、何度も足が止まりそうになって。
ですが、他人に言われて諦めた選択は、一生引きずってしまうと思うのです。たとえ失敗したとしても、自分で選んだことなら納得ができます。あのとき勇気を出して選択したからこそ、いまのわたしがあります。
だから、実際にやってみて、あとから『やらなければよかった』と思った経験は一度もありません」
Q5. 将来の展望は?
「将来は、まず飲食サービス業の経営者として成功したいという野望があります。そこで得たリソースを使って、支援を必要としている若者たちに恩送りをするのが目標です。
非営利団体の運営を経験する中で、継続的な支援には強固な運営体制が必要だと痛感しました。まずはソーシャルビジネスでしっかりと基盤を築き、その力で挑戦の機会すら得られない格差の中にいる人たちへ、新しい経験のきっかけを提供していきたいです。
実現は簡単ではないかもしれませんが、いまが人生でいちばん若いという言葉を胸に、まずは挑戦してみようと思います」

かえのプロフィール
年齢:19歳
出身地:神奈川県綾瀬市
所属:埼玉大学、NPOセントリベル
趣味・特技:ローカルグルメ巡り、一人旅
大切にしている言葉:いまが人生でいちばん若い
Photo:Nanako Araie
Text:Selna Iwasa






