
「気になる10代名鑑」1245人目は、かのんさん(19)。岩手県の郷土料理「すっぷく」の探究をきっかけに、東京・武蔵小金井で、週に一度だけ開くお店の店長として、岩手の味とあたたかな時間を届けています。人との縁に背中を押されながら、自分の好きな料理で居場所をつくり続けるかのんさんに、活動のこだわりや印象的な出来事を聞いてみました。
かのんを知る5つの質問

Q1.いま、いちばん力をいれている活動は?
「『郷土で繋がる・あったまる』をテーマに、岩手の郷土料理『すっぷく』を出す小さなお店を、東京都の武蔵小金井で週に一度だけ開いています。
営業は毎週月曜の18時から22時までの4時間。それでも、お客さんの多くが閉店までゆっくり過ごしてくれるんです。来てくれるのは、岩手にゆかりのある人たちです。高校時代に岩手に県内留学に行った際に出会った人や、イベントで知り合った人、震災復興のボランティアで岩手に関わった人、釜石ラグビーの関係者の方も来てくれます。ごはんを食べるだけじゃなくて、人が集まって話をするたまり場みたいな場所になっていますね。
ワンオペで営業しているのですが、お客さんが片付けやドリンクの補充を手伝ってくれて、なんとか回っています。昨年2025年の11月に始めたばかりですが、一度来た人が友だちを連れてまた来てくれることも増えてきました。料理も、いろいろな人に教えてもらいながら少しずつ増えています。このお店は、お客さんといっしょに育っていく場所なんだと思っています」
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Q2.活動を始めたきっかけは?
「高校時代に県外留学生として、岩手県の高校に進学したことが大きなきっかけでした。もともと釜石市にある祖父の家に遊びに行くたび、地域の人たちが集まってお茶を飲んだり、ひとつの鍋を囲んだりする光景がとても好きで、いつか岩手で暮らしたいと思っていたんです。
留学してみると、最初は学校になかなかなじめなくて。自分の得意な料理で地域の人とつながりたいと考えていたとき、郷土料理のすっぷくを知りました。そして、岩手のおばあちゃんたちから作り方を教わりながら、地域でふるまうようになっていって。料理は、知り合いがいなかった自分に居場所をつくってくれたんです。その経験から、いつか自分のお店を持ちたいと思うようになりました。
料理の専門学校に進学後、沖縄料理屋でアルバイトを始めたんですが、半年ほど経ったころ、店長が『定休日に店をやってみない?』と声をかけてくれました。自分のお店を出すチャンスがこんなに早く来るとは思っていなくて驚きましたが、『かのんちゃんは岩手の話をしているときがいちばん目がキラキラしているよ』と背中を押され、週に一度の小さなお店に店長として立つことを決意しました」

Q3.活動するうえで、大切にしていることは?
「お店で出すすっぷくの味は、高校時代に岩手のおばあちゃんたちから教えてもらったものをそのまま、それだけで、アレンジは加えないことにすごくこだわっています。『季節限定メニューは出さないの?』『アレンジしたら?』と言われることもありますが、外から来たわたしが料理を変えてしまうのは違うと思っていて。あの土地の味をそのまま届けることを大切にしているんです。
お客さんの要望をすべて受け入れるのではなく、やることとやらないことを決めることは、お店の運営や接客でも意識しています。初めてお店を開いた日は、お店が全然回らなくて、泣きそうになりながら必死に営業していました。それからは、ただ一生懸命やるだけではお店は回らないと気づき、ワンオペでお店を回すには、段取りや優先順位づけが必要だと学びました。
泣きそうになりながらもお店経営を続けられたのは、店長が『でもまずは1回できたじゃん』と声をかけてくれて、開店できたこと自体を認めて褒めてくれたからです。その言葉を聞いたとき、もっと頑張ろうと思えましたね」

Q4. 活動する中で、印象的だった出来事は?
「最初は、地域のイベントで『留学生の誰か』に地域の人からお願いがくることが多かったんです。でも活動を続けていくうちに、『かのんちゃん、すっぷく作って!』と言ってもらえるようになりました。自分の名前とすっぷくを覚えてもらえたことが、とても嬉しくて忘れられません。
特に印象に残っているのは、お店を始める前に、すっぷくの作り方を教えてくれた岩手の師匠に報告したときのことです。メニューの相談にものってくれて、最後に『胸を張って震災復興に協力していますと言ってね』と声をかけてくれたんです。
わたしは、震災復興のために活動しているつもりはありませんでした。でもその言葉を聞いて、自分がつくるすっぷくや、この場所が誰かの笑顔につながっているのかもしれないと気がつきました。大好きな岩手の人たちを、少しでも元気にできているんだと実感して、活動をしてきてよかったと思いました」
Q5. 将来の展望は?
「将来は、郷土でつながる、あったまるお店を自分でつくりたいと思っています。イメージしているのは、岩手にある祖父の家のような場所。人が気軽に立ち寄り、心まで温まるような場所をお店という形でつくりたいんです。
そこは、わたしを応援してくれた人たちや、わたしと同じようにやってみたいことがある人たちが集まり、語り合える場所になったらいいなと思っています。年齢や立場に関係なく、一人で食べることに少し寂しさを感じている人や、誰かと時間を共有したい人が自然と集まる。そんな空間をつくることが目標です。
そしていつかは、いっしょにやりたいと言ってくれる仲間と出会い、今度はわたしが誰かの挑戦を応援する側になれたら嬉しいです。これまで地域の人や店長がわたしの背中を押してくれたように、誰かの『やってみたい』を支えられる人でありたい。これからも料理を通して人と人がつながる場所をつくっていきたいと思っています」

かのんのプロフィール
年齢:19歳
出身地:埼玉県久喜市
所属:辻調理師専門学校 東京、すっぷく武蔵小金井、岩手わかすフェス、学びーば
趣味・特技:料理
大切にしている言葉:大丈夫!なんとかなる!
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Photo:Nanako Araie
Text:Rinna Koike






