
「気になる10代名鑑」の1222人目は、尾花嘉月さん(18)。政策本位の投票を促す選挙サービスと、戦争遺跡を未来に遺すWebサイトを立ち上げた高校生です。石破元総理に提言した政策アイデアがいまの活動につながっているという尾花さんに、その出来事やふたつの活動にかける思いについて聞いてみました。
尾花嘉月を知る5つの質問

Q1.いま、力を入れていることは?
「『投票のミカタ』と『戦跡マップ』という2つのプロジェクトの運営に力を入れています。
投票のミカタは、有権者に政策本位の投票をしてもらうために立ち上げたサービスで。過去3回分の選挙の選挙公報を比較することができるものです。先日の第51回衆議院議員総選挙で初めて地元・千葉県版を実装してみたところで、いまは全国版の制作・解説を目指しています。
これまでの選挙では、政治家の容姿や年齢などの注目されやすい要素がすごく重視されてきました。その結果、どの政策が支持されたのかが見えづらくなり、政治家にとっても有権者にとっても健全とは言えない状態になっているように感じていて。だから政策そのものを見える化することで、有権者の意思決定を支えていけたらなと。また、外交・安全保障分野をテーマにした学生団体D-SECも立ち上げました。
もうひとつの戦跡マップは、日本全国に残る戦争遺跡をマップに集約したウェブサイトです。旧軍の施設跡や防空壕、通信所跡など、あまり知られていないですが、実は身近にたくさん存在しているんです。
高校生のときから地元の戦争遺跡のことを研究していた私は、近代の戦争遺跡はなぜかあまり注目されず、保存の判断基準が曖昧なまま失われてしまうケースも多いことを知って。少しでも多くの人に知ってもらおうと、Webサイトを立ち上げ、現在では約400件を収録するまでになりました。
戦争体験を直接聞くことが難しくなってきているいま、身近に残るかたちあるものから戦争や平和について考えるきっかけを提供できたら嬉しいですね」
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Q2.活動を始めたきっかけは?
「高校2年生のときに第2回全国高校生政策甲子園で受賞して、石破茂元総理大臣に政策提言をする機会がありました。
大会で仲間と提案したのは、候補者の知名度やイメージによる投票を防ぎ、公約への投票で当選者が決まる『公約選挙』という制度のアイデアでした。国会議員や地方議員、選挙管理委員会の人たちと議論を重ねて、最終的には石破さんに政策提言の機会もいただくこともできて。
それまでは、私自身が何か行動しても社会は変わらないというような感覚が少なからずありましたが、『一歩踏み出してみたら、総理にまで意見を伝えられるんだ…….!』と自信を持てた出来事でしたね。
投票のミカタは、制度アイデアの仕組みの一部の機能を発展させたもの。現役の総理に声が届いた成功経験があったからこそ、アイデアのままで終わるのは勿体ないなって。プログラミング未経験からノーコードでウェブサイトを制作し、有権者にサービスを届けるところまで行き着きました」

Q3. 活動で大切にしていることは?
「発信するときは、結論や答えを与えるのではなく、あくまで思考や判断の材料を提供することを大切にしています。
私が扱う政治や安全保障、戦争遺跡といったテーマは、どうしても人によって立場や価値観が大きく異なる領域です。だからこそ、特定の意見に誘導するような情報発信にはしたくなくて。異なる考えを持つ人同士が、同じ土俵に立って考えられる環境を目指して、政治的中立な伝え方を意識しています。
一見、投票のミカタと戦跡マップは分野的にはまったく関係がなさそうかもしれません。ですが、情報を伝えるというより、情報を置いておいて、考えるきっかけを与える場を目指している点で、2つとも根っこにある思いは同じです。
学生団体D-SECでも、今後外交・安全保障のテーマでもメディアを新たにつくって発信をしていく予定です。まったく違う考えの人にもリスペクトを持ち政治的中立の姿勢を守りながら、情報を伝えていきます。簡単なことではないけれど、それでも諦めたくはないんです」
Q4.活動を通して、実現したいビジョンは?
「『自分が何かしても社会は変わらない』と思ってしまう人が、希望を持って一歩を踏み出せる社会をつくりたいです。
私はもともと、課外活動に果敢にチャレンジしていくようなアクティブな学生ではなくって。人前で喋ることもあまり得意ではありませんでした。でも一歩踏み出してみたら、いろんなことが変わりました。少しずつ人前でも流暢で喋れるようになったし、総理にまで声が届いて。いまでは、活動を大人に認めてもらえたり仲間が増えたりと嬉しい変化が多いです。
だから、私がそうだったように、もっと一人ひとりの小さな意思決定や行動が社会を変えうるという希望を多くの人に持って欲しくて。ゆくゆくは、投票のミカタや戦跡マップの活動が、『何か行動を起こしてみようかな』と思ってくれた人にとっての挑戦の受け皿になれば嬉しいです」

Q5.将来の展望は?
「投票のミカタを法人化し、政治家や有権者からいっそう信頼してもらえるメディアへと発展させていきたいです。
ウェブサイトを全国版に拡大させていくことももちろんですが、候補者インタビューや政治家を集めた討論会などにも力を入れていこうと思っていて。メディアに触れる人々とのリアルで近い距離感を大切に、『会えるメディア』と称されるような、対話の場を育んでいきます。
また、『戦跡マップ』では、行政・遺跡の管理者・企業をつなぐ存在になりたいです。いま、地方の再開発やまちづくりの現場では、戦争遺跡のような文化財が軽視されてしまうこともあって……。だからこそ、文化財保護とまちづくりを両立させる仲介役が求められていると思うんです。戦争の記憶を正しく未来に残していくため、戦争遺跡の保全に貢献していくつもりです。
これからも、活動を通じて一人ひとりの意思決定を支える仕組みをつくっていきます」

尾花嘉月のプロフィール
年齢:18歳
出身地:千葉県船橋市
所属:東京学芸大学附属高校、戦跡マップ代表、投票のミカタ代表、学生団体D-SEC代表、船橋地名研究会、NSF PROJECTS
趣味:写真
特技:リサーチすること、カメラで写真を撮ること
大切にしている言葉:「為せば成る為さねば成らぬ何事も成らぬは人の為さぬなりけり」与えられたチャンスは掴む
尾花嘉月のSNS
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Photo:Nanako Araie
Text:Taishi Murakami






